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第二十一話 2人の転職

 翌日も、朝早くに森へ入った。


 この日の収穫は、猫2匹、蛇3匹、ボス蛇1匹、猪2頭、ボス猪1頭、鹿1頭、熊2頭。

 獲得かくとくアイテムは、“赤のポーション”、“三本目の尻尾”、“もう一つの胴”×2、“三対目の牙”、“六本目の爪”であった。

 今回の転職キーアイテムはスキル『盗む』により獲得かくとくしたものばかりで、ボスからのドロップ品2個をのぞけば、ドロップして獲得かくとくしたものはなかった。

 それだけドロップ率よりも『盗む』確率の方が良いということだ。

 もちろん1回の戦闘で9回、10回とスキル『盗む』を使うので一概いちがいには言えない。

 しかし転職クエストに示されているキーアイテムのドロップ率が2~5%を示しているのに対して、スキル『盗む』では10回に1回は盗めているので約10%、『盗む』方が効率が良いのは確かだ。


 目的のアイテムは取得できた。

 まだまだ日は高かったが今後の作戦会議を街でするという名目で、早々《そうそう》に切り上げることにした。


 氷魔法とシステム外からの攻撃コンボは、マリにばかり任せるのではなく俺もグレイヴを持って交代した。

 途中、熊にやられかけている3人組のパーティーを助けて熊を倒したが、その時にはシステム外スキルコンボは使っていない。

 なぜなら、そのパーティーが調子にのって真似まねをして、熊を乱獲らんかくするようなことがあると、この街や星を守ろうとしているセイブのような人達が困るからだ。


 街に戻った時点でのレベルは、リュークとハタカが10、マリと俺が9になっていた。

 転職を済ませていなかったマリと俺は、それぞれプリーストとシールドアーマーへと転職した。


 例のごとく、マリに「どのスキルから取得するべきかな?」と、スマホを渡される。

 マリのスマホだ。

 ちょっとドキドキしながらもプリーストのスキルツリーを確認した。


 それは、確かにスキルツリーと呼べる代物だが、ウィザードの2股からの5股というようにキレイに分かれてはいない。

 枝が長いものもあれば、短いものもあって、バラバラに伸びている。

 ウィザードのスキルツリーを見たときにはちょっとした感動を覚えたものだが、このプリーストのスキルツリーは何というか……。


「美しくないなぁ……」つい声をもらしてしまう。


「え?!」

 マリが、何を言いだすのこの人?と、まるで自分のことを言われたかのような表情を向ける。


 しまった、それは誤解だ。

 マリが美しくないわけではない。

 むしろ奇麗だ。


「え?あ、いや!こ、このス、スキルツリーが美しくないなぁって……」


 スマホの画面を指さしながらあわてて取りつくろったが、伝わっただろうか?

 誤解を生んだままのような気がしてならない。


 スキルツリーは、ウィザードと同じく『魔法印』スキルから始まる。

 そこから直線上にパッシブスキル『MP上昇』と『MP回復速度上昇』につながる。

 この3つのスキルは転職した時点でレベル1が解放されている。

 回復魔法、敵の弱点を見破る魔法……。

 聖属性攻撃魔法、シールドアップ、この辺はウィザードにもある同じ魔法系統だ。

 蘇生魔法は……、スマホの画面をスワイプしながら確認するが見つからない。

 やはり無いか。


「ここはゲームの中のような世界ですが死んではおしまいです。()あって(・・・)の(・)()()、あなた方の地球ではそう言うでしょう?」


 列車の中でGMゲームマスターが話していた言葉を思い出す。

 死んだ人間を生き返らせる技術は流石さすがに無いということか。


 それなら、と俺は別なものを探そうとする。

 画面をスワイプする俺の手が途中で止まる。

 あった――。


『パーフェクトシールド』:瀕死の状態になると自動でシールドを張る。1度だけ攻撃を完全に防ぐ。


 何らかの死亡救済措置はあるだろうと考えていた。

 それが、この魔法スキルだ。

 しかし、このスキルは使用制限が厳しい。

 まず、取得スキルレベルが10となっており、まだ取得できない。

 しかし、これはレベルさえ到達すれば使えるようになるということ、むしろ問題なのはクールタイムだ。

 再使用時間が1hとなっている。

 この“h”は“時間”のことだろう。

 因みに、ハタカの氷魔法『アイスブロック』のクールタイムは20s、リュークのスキル『盗む』は1mと表記されている。

 もちろん“s”が“秒”、“m”が“分”である。

 クールタイムが1時間ということは4人にかけようとしたら、間3時間かかるということになる。

 パーティー全員にかけられる上位魔法『パーフェクト・ゼ・シールド』に至ってはクールタイム3hとなっている。

 唯一の良い点は、効果の持続時間が8hとなっていることだ。

 朝かければ夕方ぐらいまで持つ。

 重ねがけはできないが、持続時間の延長はできると表記されている。


 そして、そのクールタイムを劇的に短くするスキルも存在する。


『ショートタイム』:対象が使用したスキルのクールタイムを50%短縮する。クールタイム10m。自らスキルを使用することで、このクールタイムも5mに短縮される。持続時間30m。



 『パーフェクトシールド』の取得が可能になるスキルレベル10まで、あと5つ。

 レベルが上がり次第、マリに取得を勧めよう。


「とりあえず、回復魔法『ヒール』と、聖属性攻撃魔法『セイントアロー』、クールタイム短縮の『ショートタイム』、それと……」


 実はもう1つ気になっている魔法スキルがあった。


『キュア』:止血、骨折などの怪我を治す。


 魔法名はゲームの中ではよく目にする治療系の魔法である。

 気になるのはその効果の方であった。

 止血?骨折を治す?妙にリアルだ。

 このRPGシステムでは戦闘時に見えないシールドが張られる。

 しかし、HPの減少度合、攻撃力の高さ、いろいろな条件のもと攻撃がシールドを抜けて直接当たることも、ままあることなのだ。

 昨日、リュークが鹿の角でお尻を刺されたことがあったが、後で宿に戻ってから確認すると少し血が出ていたそうだ。

 使ってみないと分からないが『キュア』はそういう傷を治す魔法という事なのだろう。

 この魔法も有用性は高いのではないだろうか。


「それと、『キュア』も取っておくと良いかもしれません」




 俺が転職したシールドアーマーにも有用なスキルが多い。

 まず、転職した時点で解放されているスキルがなかなか強力だ。


『HP時間回復』:HPが微量ながら時間経過で回復するようになる。パッシブスキル。


 次に、この2つ。

 ここからはスキルポイントを消費しての取得になる。


『ショルダー』:パーティーメンバーのダメージを肩代わりする。クールタイム5m。持続時間5m。


『シールドブロック』:モンスターの攻撃がシールドを貫通して直接当たるようなことがなくなる。代償としてHPダメージ+10%。パーティーメンバーにもかけられる。クールタイム20m。持続時間1h。


 そして、極めつきはこれだ。


『ウォール』:使用者から半径2メートルの円上に、モンスターが立ち入ることができない円筒状の壁を作る。使用者の方から近づくと、その限りではない。クールタイム10m。持続時間3m。


挿絵(By みてみん)


 壁の内側にパーティーメンバーを囲って、外側の敵に向かってチクチクするスキルだ。

 持続時間が3分と短いように思うが、マリ発案のシステム外スキルと相性が良い。

 スマホの電源を切ってシステムの影響を受けない状態、裏を返せば見えないシールドの恩恵を受けられない状態のメンバーでも安全圏に囲むことができる。

 ハタカの『アイスブロック』とのコンボが鉄板になるわけだ。


 シールドアーマーにはプリーストと同じ回復魔法スキル『ヒール』があり、俺はそれも合わせて取得した。



 無事、4人とも転職を果たした俺たちは、いよいよ次の街への移動を考える時期が近づいていた。

いつも、読んでくださりありがとうございます。

更新ペースが落ちています。頑張ります。

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