第十六話 スキルツリー
実際の魔法使用は次回に持ち越しになっています。
でも、今回と次回と、続けて読んでいただけると、ちょっとしたお楽しみがあるかもしれません。
目標金額達成までの残金を追記(2020年7月12日追記)
凝結→凍結に訂正、以下全話において訂正(2020年8月5日訂正)
ボス鹿を『解体』スキルで素材へと解体する。
ずいぶんと大きく立派な角が解体されずに残った。
真ん中から左右に大きく2つに分かれて、それぞれがさらに5つに枝分かれしている。
皮袋には入らないので肩に担いでいくしかない。
「ボス鹿の角は良い値段になるぞ」
セイブが言う。
置いていくという選択肢はなさそうだ……。
仕方なしに俺は肩に担ぐ。
「俺が持とうか?」
リュークが聞いてくるが、大丈夫と断った。
「さっき、逃げた鹿が近くにいないだろうか?」
「そう遠くへは行っていないはずだ」
セイブが答える。
「あ、でも。すぐに見つけたとしてもリュークさんのMP回復が間に合わないかもしれないですね……」
マリが言う。
「俺は、ここぞというときに運が良い方なんだ。なんとかなるさ」
今度はリュークが答える。
リュークのリアルラックを信じ、少ないスキル使用回数で盗めることを期待して鹿を探す。
それは思ったよりも早く見つかった。
4頭いる、どれを狙おう。
雌雄の違いだろうか、角を持つ鹿は1頭しかいない。
なんせアイテム名が“五岐の角”だ、角があるやつの方がドロップ率や盗める確率は高そうな気がする。
自ずと対象は絞られる。
「リューク、MPはどうだ?」
「5回は使える」
「OK!」
「狙うのは角のやつだな。まず、俺がやろう」
セイブがグレイヴを構えながら前に出る。
要領はさっきと同じだ。
◇◇◇
リュークが5回目のスキル『盗む』を使用する。
「盗む!」
「盗めませんでした」
スマホから音声が流れた。
「すまん、後1分ほど待ってくれ。6回目が使用できる」
「了解。ダメージは受けてないので、大丈夫」
俺は、盾を構えながら答える。
そうは言ったが、鹿が他の皆を攻撃しないようにタゲを取り続けるのは簡単ではない。
鹿も馬鹿ではない、角で攻撃しようとしても盾で防がれる相手を狙い続けようとはしない。
結果こちらが角を振る向きに合わせて動くしかない。
後ろ足で蹴り上げる攻撃もあるが、こちらはセイブが片足を戦闘開始早々に切りつけているので、そっちの方向に各自が立たないようにすることで何とか回避できている。
攻撃が当たらないとなると鹿は逃げようとするが、5人で囲んで逃げないようにする。
鹿の何度目かの攻撃を盾で受け流すと、リュークが叫ぶ。
「よし、1回分のMPが回復した。いくぞ、病は気から! 運は気合から!」
いや、そんな諺ないだろ。
医者も適当だな。
でも、気持ちはわからんでもない。
「そうだ! 運は気合から!」
つい、同調してしまう。
「盗む!」
「“五岐の角”を盗みました」
「よっしゃー! どうだー!?」
リュークが片手を上げてガッツポーズと共にドヤ顔をする。
「おー、すげ~。」
戦闘中であることも忘れて全員で拍手する。
「リュークの運すげ~。いや、気合がすごいのか?」
「両方だ!」
再び、リュークのドヤ顔。
そこに、鹿の攻撃。
鹿に背を向けてこちらにドヤ顔を見せていたリュークのお尻にクリーンヒット!
「ディアの角攻撃、リュークへのクリティカルダメージ25」
「いてっ~」
見えないシールドを突き抜けて、角が実際に刺さったようだ。
ご愁傷様。
ちょっと、笑ってしまった。
その後、鹿を難なく倒し、いよいよハタカの転職となった。
“五岐の角”3個をトレードでハタカに渡す。
ハタカはスマホの画面を操作し、ウィザード転職クエストを達成させる。
ハタカの体が眩しく発行し、光が落ち着くと音声が流れる。
「ウィザードへの転職が完了しました。スキルポイントが3あります。スキルの取得をしてください」
ウィザードのスキル、それはすなわち魔法に他ならない。
もちろん、魔法以外のスキルもあるようだが……。
「コウさん、どれを選べばよいでしょう? スキルがまるで樹の枝のように連なって選びようがないです」
「見せてもらってもいいですか?」
なるほど、これぞ正しくスキルツリーというやつだ。
見た瞬間に、ちょっとした感動で俺は身震いを起こした。
どのスキルを選ぼうかと悩む、この瞬間が堪らない。
MMORPGの醍醐味というやつだな。
魔法職好きには垂涎ものだぞ……。
俺は、スキルツリーを見ながら、全員に説明するように話した。
「こういう物をスキルツリーと呼びます。ウィザードのスキルツリーは、まず2本の大枝に分かれています。そして、それぞれの枝の先が5本の中枝に分かれ、後は細分化されています」
「それって……」
マリが、俺のそばに置いている、皮袋に入らなかったボス鹿の素材“大角”を指して何か言おうとする。
「そうです、この角の形をモデル化したものに近いです。……
………………
2本の大枝の分類は例えるなら攻撃系と補助系です。
攻撃系の中枝は、それぞれ炎、雷、氷、風、聖の5系統に分けられます。
補助系の5本は、強化弱体化、毒、重力、移動、『パッシブ』の5系統です。
攻撃系のスキルには、どういう現象を起こすか説明がここに書かれています。
炎――大気を瞬間的に高温にし発火させることで、様々な火炎系スキルを実現する。
氷――生物の体内にある水分と大気中の水蒸気を瞬間的に超低温にし凍結させることで、生命活動を一時的に停止させる。
雷――大気中の水蒸気を振動させて摩擦を起こし、電気を起こすことで広大なエネルギーを作り出す。
風――急激な気圧の変化を起こすことにより竜巻を発生させたり、大気中の空気を振動させて真空の刃を生成したりする。
聖――引力により太陽光などをねじ曲げ凝集することで、超高速超高熱の光の矢を生成する。夜間も使用可能。
補助系のスキル詳細はこんな感じでしょうか?
強化弱体化――シールドの強化、弱体化。
毒――あらゆる毒による攻撃。睡眠毒、麻痺毒、幻惑毒。
重力――重力負荷及び軽減による速度の減退及び向上。その他。
移動――時空間の一時的な操作による移動用ゲートの生成。その他。
『パッシブ』――これは、他の魔法系スキルとは大きく異なり獲得するだけで常時効果のあるスキルです。常時効果が得られるのでスキル発動の必要はありません。というか、発動できません。主にステータスにプラス効果が得られます。
………………
俺のウィザードのスキル考察はまだまだ続いた。
「目標金額達成まで残り 999,999,035/1,000,000,000〔メル〕」
あえてスキル考察の途中で話を切ります。私の中で、この世界だからこそ最強だとおもわれるスキル(魔法)があります。RPGではよくある系統の魔法ですが、この世界だからこそ最強になるのです。それはどの系統でしょうか?読者様には是非考えてみていただければと思います。
お断りさせていただきますが、あくまでも私の描く小説の中で私が最強と思うものです。読者様の考えと違っても、怒らないでいただければ幸いです。この場合の最強とは、強いという意味合いよりも、最も使えるという意味合いの方が強いかもしれません。