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第十一話 セイブ

第十話もそうでしたが、登場するモンスターを原住民が普通に“猫”と言うところが出てきます。本当は、“キャッ2”と言っているのを、わかりやすくするために書いています。今後も、そういう表現の仕方をすることが多くあると思いますが、ご了承ください。


目標金額達成までの残金を追記(2020年7月12日追記)

 街に戻ると、まず鍛冶屋へ向かった。

 皮袋に入れた猫の素材を買い取ってもらうためだ。

 1匹分だったが6,000〔メル〕にもなった。

 その後、今晩の就寝場所として取った宿で小一時間ほど仮眠をとり、不要な着替えや洗面道具などの荷物を部屋に置いて、男との待ち合わせ場所である酒場へと向かった。


 男の名前は、セイブといった。

 この星の原住民で種族はヒューマン。

 もっとも、この“ヒューマン”という言葉は、RPGシステムによって地球人向けに翻訳された言葉ではあるが……。

 試しに、セイブに“キャッ2”の名前の由来を聞くと、“木の上の守り人”という意味から来ていると答えた。

 “キャッ2”という名前からくるイメージと、その由来がつながらない。

 これは、RPGシステムの作成者が、名前の由来を無視して地球人向けに勝手に名前を付けた証拠であろう。


「猫15匹分の素材を売ったお金だ。1匹5,000で75,000〔メル〕だ」

 言いながら、セイブはお金を酒場のテーブルの上に差し出した。


 俺たちが売ったときとは値段が違う。

 鍛冶屋のオヤジがおまけしてくれたのか、あるいはこの男セイブがマージンを差し引いたお金を提示してきたか?


「15匹ですか?」

 マリが聞く。


 森で囲まれたときに俺たちが倒したのは5・6匹。

 セイブが倒した分を入れても15匹にはならないはず。


「あんたらが森に入る前に倒した分も入っている。後を付けたと言っただろう」

 なるほど。


 そんな事は黙っていれば分からないはず。

 それをわざわざ言うということは、5,000という数字も買い取りの値段そのままなのだろう。


「セイブさんの分は?」


「もらえるのか? もらえるのならば、ありがたい」


「21,000でどうですか?」と、俺は言う。


 1,000を付けたのは、残りを4人で配分しやすくするためだった。


「そんなには要らない、と言いたいところだが、俺も生活がかっている。ありがたくもらおう」


「残りは、さっきの6,000と合わせて4人で割るから……」


「15,000ですね」

 ハタカに取られた。


 俺も計算は得意な方だから、ちょっと悔しい。


「15匹で15,000ということは1匹1,000だな。RPGシステムは1匹倒して25〔メル〕しかくれなかったが、1匹分の素材で1,000もらえると考えると決して悪い稼ぎではないな」


 それを聞いてセイブが言う。

「1日15匹も倒されては困るんだ。言っただろう、数が激減していると」


「すまない、わかった」


「街の規則になっている。何人かこの街に寄る星人(よるほしびと)が住んでいるが、彼らにも規則は守ってもらっている」


 リップオフを思い出す。

 奴が10年いて250万しか稼げないと言ったのは、そういう理由もあるのだろう。


「15匹も売りに行って、何か言われませんでしたか?」

 マリがたずねる。


「半年に1回、あんたらのような集団が運ばれてくる。そうしたら、俺たち冒険者が1組に1人見張り役(けん)、指導役として着くんだ。大抵は、うまく戦えなかったり、おびえて街から出なかったりする。中にはすぐ死んでしまう者もいる。こちらも、助けようとするが間に合わないことも多い」


 なんとも言えない表情を作って、セイブは続ける。


「それでも、時々あんたらのように短時間に10匹以上も倒せてしまう者もいる。それにしても、あんたら無茶苦茶だよ、よくもそんな装備で……。死ななかったのは運も良かったんだろう」


 セイブが、少しホッとしたように見えたのは気のせいではないだろう。


「そうやって、10匹以上倒せる組は丁寧に説明して理解してもらうしかない。理解してくれそうなら、倒した分のお金を渡して、なるべく早くこの街、この星から出て行ってもらうように手伝うことにしている」


 なるほど。


「わかりました」

 マリもうなずく。



「あんたら、この後どうする? 遅くなったが今からここで昼ご飯じゃないのか? しばらくしたら、暗くなるぞ。どうせ今日は猫をこれ以上狩られても困るし、狩りの続きは明日にするか? 何か、聞きたいことがあれば答えるぞ」


 確かに、酒場に入る光が角度を変え、斜めに遠くなってきている。

 ふとスマホの時計を見ると16時と表示されている。

 時間の進み方は、地球と大差ないようだ。


「そういえば、猫のボス“キャッ3(キャッスリー)”たちに囲まれて何体か猫を倒したときに、“三本目の尻尾しっぽ”という物を取得したみたいなんです。これが、いったい何かわかりますか?」

 ハタカが聞く。


「いや、わからんな。どんな物だ? 見せてくれ」


「それがアイテム欄から選んでも、具現化できない、と画面には表示されるんです」


「ハタカさん、それ、この星には存在しない、RPGシステムの範囲内だけで有効なアイテムではないでしょうか?」

 俺が答える。


「あんたらは不思議な機械を持っているな。そういえば、ずっと以前に話を聞いた寄る星人(よるほしびと)も、尻尾がどうとか言っていたな」


「その人たちは、何と?」


「たしか……、尻尾があと1本とか、盗賊がどうとか? 素材の尻尾を渡そうとしたら、それではないんだと」


「盗賊……文脈から考えるとRPGシステムに職業としてある盗賊だろうなぁ、きっと――」



 その後、セイブも含めた5人で食事をとった。

 そして、明日は朝早めに森に入ることになった。

 セイブが言うには、森には猫以外の動物もいるらしい。

 夜行性の動物がまだ活動している時間に森に入る方が見つけやすいという事だった。


 食事がすむと、いい具合に眠気がやってきた。

 先に仮眠をとっていたが、疲れの方がまさっていたようだ。

 俺たちは宿に戻るとそれぞれの部屋に分かれ、そのまま眠りについた。



「目標金額達成まで残り 999,982,775/1,000,000,000〔メル〕」

読んでくださり、ありがとうございます。次回は、いよいよ転職です!たぶん……。

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