閑話・始まりの章
「・・・・と言う訳だ。コレで引継ぎは終了だ」
「・・・・は~い」
退屈な話を延々としていた男神の話しを適当に流し、その女神が返事を返した。
その女神の名は『イーリス』
前任の男神からこの世界「リュノス」を引き継ぎ、管理をする事となった新任の神だ。
「・・・言いたくは無いが・・・お前、本当に大丈夫か?」
「え~・・私ってそんなに信用無いですかぁ?」
「当り前だ!!!」
「ひぃっ!?」
このイーリス・・実はかなりの問題児である。
有る世界ではうっかりで終末の日を引き起こし。
又有る世界ではうっかり神域の魔法を下界へと洩らし、次元の壁を崩しかけた。
そのたびに、他の神々が必死に後始末をするのである。
かといって仕事(世界の管理)を振らない訳にも行かない。
なので今回は比較的管理の楽な、有る程度整えられた世界を引き継いで管理させる事になった。
仕事と言えば、新たに誕生する生命の『加護』を見守り、時に『神託』を与える程度で済む。
曲りなりにも何か問題が起きる様な世界ではない。
そう、神々は油断をしていた。
それから数百年の月日は流れ・・・
今回も新に生命が誕生する。
「さ~て、今度はどんな『加護』が・・おぉ!?」
見れば『勇者』・『剣聖』・『聖女』と、大盤振る舞いな『加護』が付属される命が目に付いた。
『勇者』は双子の男の方に、『剣聖』は女の方へと付属されている。
イーリスは心が躍った。
『勇者』や『聖女』の出現は、詰まる所世界が動く前触れなのだ。
「えっへっへー面白くなりそう」
・・通常ならば、神々は多大な干渉をしない。
だが・・残念ながらこの駄女神は手を出さずには居られない。
しかも最初の説明をほぼ適当に聞いていたため、この世界の仕組みを理解し切れて居ないから尚更 性質が悪い。
「・・・ん~、そうだ!男が活躍したって面白みが無いわ!この『勇者』の加護、女の子に移せば最強で最高に可愛い『勇者』になるじゃない!」
そんな事を言いつつ、彼女は『権限』を使用し、男の『加護』を女へと移してしまう。
「うふふ、楽しみだな~」
イーリスは直に今後の状況へと思いを馳せ、男の事をすっかり忘れてしまう。
もしこの時、彼女が『加護』を抜いた男の方へ加護を与え直していれば・・・
それ以前に、男神の説明をしっかりと聞いていればこんな事にはならなかっただろう。
「この世界の『加護』と『レベル』はな、人に『限界を与える』為のものだ」