9 初依頼・上
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連続投稿九日目
武器屋を後にした俺達は、冒険者ギルドに向かう。
「そういえばアリエステルは技能って知ってるか?」
「技能?」
「ああ、挑発とか武器熟練:短剣とか」
「ああ! スキルのことですね」
技能(スキル)ってことか?
「多分そうだ」
「それなら教会で知ることが出来ますよ」
「教会で?」
「ええ、教会にある鑑定の御石を使えば知ることが出来ます」
「他に方法は?」
「あとは稀に鑑定持ちがいるのでその人に見てもらうということが出来ます。
もっともやましいことがなければ教会で見てもらうほうが手っ取り早いですが」
「それなら多分大丈夫、俺、鑑定持ってるから」
「そうですか!
では私のステータスを見てください」
「いいのか?」
「ええ、問題ありません。
口で説明するより一回見てもらったほうが、話が早いですし」
「そうか、では」
『鑑定』
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名前:アリエステル・フリアライズ
種族:精霊人(人族)
称号:運命から外れし者
職業:冒険者
所属:冒険者ギルド
Lv :58
STR :89
VIT :162
DEX :91
AGI :151
INT :184
能力:
技能:武器熟練:弓Lv8、武器熟練:短剣Lv3、解体術Lv4、探索術Lv7、説得術Lv5、錬気Lv2、精霊術Lv2、隠密Lv5、感知Lv4、軽業Lv6、精密射撃Lv3
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「強い」
優しいマッチョより能力がSTRとDEX以外全体的に高い。
近距離は苦手なタイプ、魔法を軸に戦うそんなステータスだ。
「ありがとうございます」
「しかし、この称号の『運命から外れし者』は前からなのか?」
運命から外れし者とかある意味嫌な称号だな。
「いいえ、おそらくフショウ様に助けられてからです」
「前はどんな称号だったんだ?」
「秘密です」
「……そうか」
前の称号も気になるが、『運命から外れし者』か。
つまり俺が助けたから運命から外れたと。
そんなわけないよな。
そんな大層なことになることなんてやってない。
確かにあのオーク共をぶちのめしたのはおそらく一般人からしたらとんでもないことかもしれないが、仮にドラゴンを倒したところでこの称号が付くとは思えない。
何なのだろうか?
この『運命から外れし者』なんて大層な称号は?
「称号ってそんな簡単に変わるものなのか?」
「場合によります。 周りの評価が基本的に反映されるらしいのですが、特別な役割、例えば王などの職業を持つ者は称号は国の名前+王となります」
「なるほど」
「後、どれほど知られて無くともドラゴンを倒したものは、竜を屠りし者という称号を得ます」
「分かった」
なぜそうなるのかはおそらくわからないだろう。
むしろわかるのだったら『運命から外れし者』なんて称号がついた理由もわかりそうだしな。
「本題のスキルですが」
ああ、そうそう、それを聞こうとしたんだった。
「このステータス蘭に載っているものはあくまで本人が認識している力のことです。
なので、潜在的に持っている力は表示されません」
「ふむふむ」
「ただ、自覚したとしてもそのスキルが表示されるだけでレベルは勝手に決められます。
これはそのスキルを熟練すれば上がると言われていますがそれ以外にも何がしか上がる理由はあるようです」
「なるほど」
「ところで、このスキルがどうかなさったのですか?」
「へ?」
アリエステルの急な質問に俺は素っ頓狂な声を上げる。
「何かスキルのことについて聞きたいことがあったように見受けられたのですが」
そう言われてアリエステルに聞こうとしていたことを重い出す。
しかし、これを聞いて良いのか少し迷う。
というのも【技能取得】に【技能封印】は明らかに普通の技能と違う
あ、そういえば、アリエステルに聞かなくてもあいつに聞けばいいんじゃないか?
むしろ、聞かないとあいつの存在意義が薄まってしまう。
それにこのスキルのことをアリエステルに聞くのは時期尚早だ。
「ああ、スキルってどの程度の頻度で発現するかと思ってな」
「そうですね人にもよりますが冒険者のような危険な仕事をしている人たちでも一年に一つあればいいほうじゃないでしょうか?
もっともスキルを覚えていない最初の頃は月に一つや二つは覚えるのもおかしくは無いですね」
「そうか」
つまりは俺は異常な状態になっているということだな。
このステータスを見られるとまずいことになりそうだ。
教会はまず使わない方がいいだろう。
それに、鑑定持ちの人物にも気をつけるべきだな。
「とかなんとか言っている間についたな」
昨日ぶりの冒険者ギルドだ。
扉を開けると中にいる数人の冒険者らしき人物たちがこちらを見るが直ぐに視線をそらす。
「じゃあ、早速、依頼を受けるか」
「はい」
受付の横にある掲示板に近づくと受付の人が声をかけてくる。
「あ、フショウ様ちょっと来て下さい」
俺は首を傾げながら受付に近づく。
「昨日帰ってしまった加減でギルドカードの処理が中途半端になってしまいましたのでギルドカードをこちらに」
「え? ギルドカードの処理ってあれで終わりじゃなかったのか?」
確か二重登録を避けるとかなんとか言ってたな。
「はい、まだギルドランクを表示していませんから」
「え? ギルドランク?」
俺は、それを聞いてオウム返しに尋ねる。
その俺の反応を見たアリエステルが、口を挟んできた。
「あれ? 昨日、試験しましたよね?
その時にギルドランクを認定しなかったんですか?」
「ええ、逃げるようにギルドから出ていってしまったのでギルドカードを更新できませんでした」
「ギルドカードの更新?」
あれで手続きは終わったんじゃなかったのか?
「ええ、今、フショウ様がお持ちになっているギルドカードは仮のものになっております。
といってもそのまま使えないことは無いのですが、最終処理を行っていないので少々ややこしいことにはなります」
俺の額を一筋の汗が通ったのを感じた。
「ややこしいこととは?」
「どこで手に入れたか聞かれるだけですよ少し怖い人に」
受付嬢が微笑みを浮かべるが、その口から紡がれるセリフは微笑みには似つかわない脅しのような言葉だった。
「はい、最終処理お願いします」
「お受け取りいたします。
少々お待ち下さい」
笑顔で処理を行うが受付嬢の笑顔が怖くなった俺の感性はおかしいだろうか?
「ところで、フショウ様のランクはどれぐらいになるのでしょうか?」
「さあ? っていうか人によって最初のランクって変わるのか?」
「はい、抜き打ちテストで相手の対応を見て最初のランクを決めるらしいです」
「抜き打ちって、まさか!」
昨日のゴリマッチョが殴りかかってきたのを重い出す。
「ええ、あの冒険者が絡んでくるやり取りです」
「何でまたそんなややこしいことを」
「なんでも初代ギルドマスターが始めたことでその初代ギルドマスター曰く『お約束』だからだそうです」
「意味がわからん」
お約束って何だよ。
「まあ、それのお陰で本性を見分けやすいって事で基本的に抜き打ち試験として実際に今でも行われているのです。
ギルドによって絡み方が違うそうですが、規律はしっかりしてるので、もし本当に絡むような事をした場合はその人は結構重い罰を受けることになります」
「例えば?」
「そうですね。 一番重たい例では冒険者ギルドからの除名及び指名手配でした」
「うわ」
アリエステルの解説に絶句していると背後から
「それは一番ひどい例です。
大抵は、戒告で収まりますよ」
と受付嬢が情報を補完する。
「お待たせいたしました。
フショウ様はDランクとなります。
依頼はDランクまで解禁されますので掲示板の中であればどれでも受けることが出来ます。
もしよろしければこちらで依頼を選び出すこともしますがどうしますか?」
受付嬢の解説を聞いて。
「じゃあ、初めての依頼に相応しいのを選んで貰っていいですか?」
と依頼を選ぶのを丸投げにする。
「フショウ様、受付嬢に依頼を選ばせるのはやめておいたほうがいいですよ」
しかし、アリエステルからストップが掛かる。
「受付嬢と言っても所詮ギルドの職員です。
身に合った依頼を回してくれるとも限りませんし余り易い依頼を回してくるのが基本です」
「そうなのか?」
「えっと、ギルドで張り出されるものはランクに分けることよって安全を確保しているので、油断しない限りは死ぬことはありません」
「目が泳いでるぞ」
全く、余り易いものを選ぶって所に反論しなかったな。
余り物ってことは人気が無いってことだろう。
といことは、割に合わない可能性が高い。
幸いなことに俺にはスポンサー、と言うと語弊があるか。
養ってくれる人がいるからな。
まあ、養ってもらうとか情けない話ではあるんだが、使えるものは使っていこう。
「まあ、初めてだし決めてもらうよ」
「いいんですか?」
おそらく割に合わないと気づいた段階で殆どの人あるいは全員が、受付嬢のオススメの依頼を受けることはなくなるのだろう。
当然っちゃ当然の対応だろうな。
好き好んで稼げない仕事をするなんて稀だろう。
だから受付嬢も驚いてる。
「ああ、ポイント稼ぎとでも思ってくれたら良いさ」
「何のポイントですか?」
「受付嬢の友好ポイント」
「私の友好ポイントは?」
「それはまたおいおいと」
振り向くととてもにこやかなアリエステルさんがとってもいい笑顔をしていた。
それはもう思わず目を逸らしてしまうくらいには
「いや、困った時とかに恩に着せようかってことだから」
と言う言葉がつい口を衝いてしまう。
「はい、そういうことでしたらしっかりと選ばせてもらいますね」
受付嬢さんもいい業務スマイルになりましたとさ。
うわあ、やっちまった。
「それは、あんまりなものの言い方だと思います」
後ろから追撃の一撃が放たれる。
やめて、これ以上追い詰めないで言い方が悪かったのは謝るから。
せめて困った時に助けてもらうとでも言えば良かった。
「では、これなんてどうでしょうか。
余っていて困っているのです」
そう言って受付嬢が出してきた依頼は、捜し物だった。
ペットの動物を探してほしいとのこと。
依頼書には愛らしい犬のような動物が描かれている。
「この依頼はFランクとなります。Fランクの依頼は、他の依頼と併用して受けることが出来ますし達成後に受けることも出来ます」
「へえ、まあ、その情報知れただけでも依頼を選んでもらったかいはあるか。
他の依頼を見繕ってくれないか?」
「はい、他の依頼では、荷物持ちなどがありますね。
ただ、こちらは高ランクの護衛依頼の方が埋まるのを待たないといけないのですぐに受けるのは難しいのですが」
そこまで言って受付嬢は、アリエステルの方を見て
「丁度、お付き添いするのにちょうどいいのではないでしょうか?」
と尋ねる。
それほど間を置かずにアリエステルは返答する。
「それでお願いします」
「はい、では、荷物持ちのEランクの依頼をフショウ様が、護衛のCランクの依頼をアリエステル様が受けるということで間違いないでしょうか?」
「「はい」」
「では、先にどちらを受けますか?
荷物持ちの方は、三日以内でしたら何時でもいいです。
ペットの捜索は期間は決められていませんが、早い方がいろいろとありがたいです」
ちょっとだけ本音を漏らす受付嬢の意をくんでというほどでも無いが、直ぐに終わらせれそうなペットの捜索から始めることは決めている。
受付嬢にペットの捜索の依頼を受ける事を伝えると受付嬢は笑顔になり
「ありがとうございます」
と言ってくれた。
営業スマイルより自然な笑顔はやっぱり良いな。
さて、背中に感じる視線はさておきこれから初依頼だ。