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7 寝てるときは気づかない恐怖

ごアクセスありがとうございます。

連続投稿七日目

 宿で晩御飯を摂り部屋へ向かうその時、俺はあることを失念していることを思い出した。

 それは、部屋の前に来た時点で思い出したのだが、ベッドの前に立つことによりより鮮明に叩きつけられることになった。


 そう二つベッドの部屋ツインではなく二人用のベッドの部屋ダブルである。


「あ、お、俺は床で寝た方がいいよな?」

「何故ですか?」

「いや、ほら、いくら何でも同じベッドで寝るのは」

「嫌、ですか?」


 うわあ、そんな悲しそうな顔しないで


「い、嫌なわけないだろ」

「じゃあいいでしょう?」

「お、俺はいいんだが、お前はいいのか?」


 聞いても詮無き事をあえて聞く愚行を犯す程度にはてんぱっている。


「問題ないです。

 むしろ一緒の方がいいです」

「わかった」


 俺がそう言うとアリエステルは着替え始めた。


「あ、アリエステルさん?」


 しかし、思ったことにはならず服の下でもぞもぞしたかと思うと服を脱ぐとしたから簡素な服が出てきた。


「ん? なんですか?」

「い、いや、何でもない」


 まさかの着替えスキルが発動したときであった。

 いや、まあそんなスキルはアリエステルのステータスにはないんだけどそんな感じがした。

 俺も買ってきていた簡素な服に着替えてベッドにもぐりこむ。

 アリエステルもベッドに入ってきた。

 女性の甘い香りを感じつつ、目を閉じる。


「あの」


 アリエステルが声をかけてくる。


「何ですか?」


 閉じていた目を開けてアリエステルの方に顔を向ける。

 整った顔だ。

 耳こそごく普通に見えるのだけれど。

 釣り目気味で二重が目の大きさを強調している。

 鼻はやや高めで、強調しない唇が魅力的だ。

 顔の輪郭は彼女の線の細さを表現するかのようにすっと通っている。

 髪の毛は冒険者をする上で邪魔なのだろう肩口で切りそろえられた琥珀色だ。

 眉毛は細く強調されて入るが強くは主張していない。

 そして、髪の毛と同じ琥珀色の双眸と目が合う。


「今日は助けていただいてありがとうございました」


 表情は最初に見たときより大分と落ち着いているようだった。


「ああ、偶然だが」

「でも、助けていただいたお礼が出来ていません」


 少し悲しそうに言うアリエステル。

 そんな彼女をみて首を振る。


「いや、大いに助かっているさ。

 右も左もわからなかったからな。

 もし、あのときに戻っても何度でもアリエステルを助けるさ」


 そういうと彼女は目を見開きそして布団で顔を隠してしまった。


「お、おやすみなさい」

「うん、おやすみ」


 なぜ顔を隠したのかわからないけど、おやすみの声が嬉しそうだった。

 そして再び目を閉じた。



----------



 翌日、起きるとソファで寝かされていた。

 なぜ、ここで寝かされているのかわからなかったが、ふと、部屋で一番大きいもの。

 二人用ダブルのベッドの布団が一切なくなっていることに気がついた。

 何があったのかわからず混乱しているとアリエステルが部屋に入ってきた。


「お、おはよう、フショウ様、起きたのね」

「おはようアリエステル、俺が寝てる間に何かあったのか?」


 と尋ねるとアリエステルは困ったような表情をして、


「生理現象です」


 とだけ答えた。

 その答えに少しだけ考えすぐにある結論に至る。


「それって、俺がやったのか?」


 と言うのも俺の服が着替えさせられていることに気がついたからだ。

 黒い服こそ着ていないが、白い服を着て黒いズボンを穿いているのだ。

 ただし、スースーするのだ。

 多分、パンツを穿いていない。


「え、ええっと、はい」

「そ、そうか」


 それなりに生きているはずの俺が寝しょん便か。

 あまりの衝撃にがっくりする。


「あの、気にしないでくださいね。

 事故みたいなものですし」


 女性とはじめて寝たベッドで寝しょん便、あまりにもダサすぎる。


「そ、そうだ。

 せっかく冒険者登録したのですし依頼を受けに行ましょう」


 気遣いが逆に痛いですアリエステルさん。


「それに宿の食事もありますしね?」


 そう言って手を引いてくる。

 言われるがまま立ち上がりそのまま食堂へと足を運ぶ。


 食事に行くときに宿の従業員であろうおばさんとすれ違う。

 そのとき


「昨晩はお楽しみでしたね」


 と声をかけられた。

 しかし、俺にはそんな覚えはない。

 と、思ったが、女性と男性が二人で一緒に同じベッドに寝ているのだ。

 そう考えられてもおかしくはないだろう。


 ただ、アリエステルが不快な思いをしていないか彼女を見てみると、彼女は顔を赤くしていた。

 俺と目が合うとすぐに視線をそらす。

 怒りのあまり顔も合わせられないのかな?


「あのおばさんなにか勘違いしているみたいだな」

「そ、そうですね」

「まあ、アリエステルみたいな美人と出来るなら誰だってつきあいたいだろうな」

「フショウ様もですか?」

「もちろん」


 まあ、今の俺では誰も幸せには出来ないだろうがな。

 ステータスを確認する限りでは、スーパーマンみたいなことになっているっぽいが、それだけで人を幸せにすることなどできはしないだろう。

 出来るのは人を不幸から救うことができるかもしれないってだけだ。


 しかし、寝しょん便の最たる被害者であるアリエステルに引かれなくてよかった。

 彼女に距離を置かれると俺の周りには誰もいなくなってしまう。


 天使のような心の持ち主であるアリエステルに感謝したところで食堂に着いた。

 宿の一階部分についている食堂は宿の大きさにもかかわらず食事を摂っている客が多い。

 どうやら宿泊客以外にもここで食事を摂る人が多いようだ。


「とりあえずあそこに座ろうか」


 あいているテーブルを指差す。


「はい」


 俺が先にテーブルへ向かいアリエステルが後を付いて来る。


 テーブルに座るとウェイトレスであろうエプロンをかけた女性が声をかけてくる。


「うちの朝はシチューですがいいですか?」

「もちろん」

「そちらの方も?」

「はい」


 おじさんから聞いていたので、わかっていた。

 シチューと一緒にいくつかパンも付いてきた。


「どうぞうち特製のシチューです。

 お代わり自由なのでいくらでも頼んでください」


 そう言ってウェイトレスの女性はほかのテーブルを回っていく。


「ここの宿はサービスがいいのでも評判なんですよ」


 アリエステルはそう耳打ちしてくる。


「へえ、じゃあ、食べようか」

「ええ」


 すると、アリエステルは首から何かアクセサリーを引っ張り出した。

 正四角形を斜めにしたフレームの中を四つの正四角形がありその中の真ん中から左右の二つは空洞になっている。


「それは?」


 そう尋ねるとアリエステルは驚く。


「四星神教を知らないのですか!?」


 今日一番の驚きである。

 まあ、今日は始まったばかりだが……。


「ああ、記憶喪失だからな」

「あ! す、すみません、失念しておりました」


 しゅんと落ち込むアリエステルをみると若干嗜虐心がくすぐられる。


「別に忘れたくて忘れてるわけじゃないんだけどなあ」

「ご、ごめんなさい」

「まあ、記憶喪失でもアリエステルがいなかったらもっと困っていたからそんなに謝らなくていいよ」


 落として持ち上げる。

 上げて落とすよりはいいと思う。


「あまりにも順応しているから、普通の知識があると思い込んでいました」

「まあ、褒め言葉として受け取っておくよ」

「ありがとうございます」


 そんなことを言っているとウェイトレスの女性がシチューとバスケットに入ったパンを持ってきた。



----------



 食後、飲み物が出される。

 果物を搾ったであろうか? 甘酸っぱい風味が口の中に広がる。

 やや酸味が強いがさっぱりとした口当たりがとてもいい。


「これは?」

「ここらあたりの名物ポレ水です」

「ポレ水?」

「はい、ここらあたりではポレという木の実が取れます。

 それを絞って水で薄くしたのがこのポレ水です」

「へえ」


 コップの中を覗き込み少し揺らした後、一気に飲み干す。


「ぷはぁ、うん、これうまいな。

 もう一杯くれないかな?」

「二杯目からは有料ですよ?」


 なるほど、ここでポレ水を体験しておけばまた飲みたくなるだろうな。

 もしお金があったら買っていただろう。

 しかし、今俺は無一文。

 さすがに宿代を出してくれた人に嗜好品のためにお金を出してもらうわけにも行かない。


「あの、もう一杯いりますか?」


 そう聞いてくるアリエステル、しかし、ここで奢って貰うと男が廃る。


「いや、大丈夫、自分で稼いだ金で買うことにするよ」

「大丈夫ですよ? 一応、あなたが稼いでくれた分も入っていますし、と言うかほとんど稼いでもらった分ですし」


 そこまでいわれては仕方がないな。

 男が廃る?

 大義名分があってポレ水飲めるのならばどうということはない。

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