名称不詳の異世界紀行

4 商業都市って賑わってるな

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連続投稿四日目

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　その街についた時の第一印象は城壁に囲まれた物騒な街と言うものだった。

　そして、門の前では鎧を装着した兵士がお金を受け取っているのが見えた。

　今は城壁から続く行列の最後列に並んでいるところだ。

「あれは、もしかして通行税を払っているのか？」

「え？　もしかしなくても通行税を払っていますよ」

　アリエステルの方を見ると「何言ってるの？」という風に首を傾げていた。

「いや、俺が住んでいたところではそんなものはなかったような気がしてな」

「そうなの？　じゃあ、まず都市には住んでなかったのですね」

「どういうことだ？」

「こう言った城壁で囲まれた街は都市として扱われています。

　そして、こういった都市は人が集まりやすい土地なのです」

「へえ」

「こういう都市では領主がいて都市を治めていて、領主が居るような都市は大抵通行税を取られるのです」

「なるほど、通行税がない場所に住んでいたということは領主がいないような田舎ということなのか」

「そうなりますね」

　なるほど、俺は田舎出身なのか。

「ただ、田舎出身の人は多少訛りがあるものなのだけど、あなたは訛りがありませんね」

「そうなのか？」

「ええ、まあ細かいことですけどね」

　そうか、訛りがあればどこの出身者かわかっていたのか。

「因みに、この城壁に囲まれた都市の名前はアルトリアです」

「アルトリア？　やはり知らないな」

「そのようですね。　しかし、アルトリアは数少ない商業主体の都市なので通行税は安いですよ」

「安いのか？」

「はい、商業ギルドの加減もありますが、この都市では通行税がとても低く商人が集まりやすいんです」

「まあ、理屈はわかるが、領主が上げたがるだろう」

「そこは大丈夫ですよとても優秀な方ですから。　ね、衛兵さん？」

　気がつくと既に自分たちが一番前になっていた。

「はい、そうですね。　けれど領主様をいくら誉めても通行税は負かりませんよ？」

　そう野太い声で返した衛兵は俺より身長が高くガッシリとした体型をしていた。

　まあ鎧の上から見ているので実は大きさの合わない鎧を装着している場合はそうとも言えない。

　しかし、にやりと笑みを浮かべるその顔を見ると後者の可能性はないだろうと確信した。

　いや、正確には顔というより首だ。

　その首の太さが、鍛えてないなんて妄想を否定している。

「はい、二人分です」

「はい、どうも、アルトリアでいい取引を」

「ありがとう」

「どうも」

　アリエステルが通行税を払い街に入っていく。

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　街の中は活気づいた商人の声や人々の声であふれかえっていた。

「うわ、人がいっぱいいるな」

「そうでしょう」

「いつもこんな感じか？」

「そうね、前に来た時もこんな感じでした」

「そうか」

　見回す限りは、二階建てや三階建ての建物が多く一階建ての建物は見当たらない。

「あっ、あまりきょろきょろしない方がいいですよ？」

「なんでまた？」

「あまり浮いた行動をしていると田舎者だと思われますから」

「別に思わせとけばいいんじゃないか？」

「いえ、スリとかの格好の餌食になりますんで」

「服装はいいのか？　これでもかってくらい浮いてるんだが」

　俺は自分の服の裾を引っ張って言う。

「いいえ、まずいですね。

　どこの物かわかりませんが品質はかなりよさそうに見受けられます。

　……田舎出身とは思えないほどいい服ですねその黒服は」

「じゃあ、早く着替えた方がいいか」

「そうですね。　あなたの服装はかなり目立ちますし」

　俺の服装は金色のボタンに黒い服だ。

　周りの人と比べて見たところかなり特徴的なものとなっている。

「そうか、わかった」

「では服飾店に向かいますか」

「ああ」

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　服飾店に入ると5歳か6歳位の可愛い女の子が出迎えてくれた。

「いらっしゃいましぇ」

　少しばかり舌足らずのようだ。

「冒険者向けの服がほしい」

「わかりました少々お待ちくだしゃい」

　テテテと店の奥へ走って行き女性を連れてきた。

　この店の店員だろうか？

「いらっしゃいませ、ようこそ、服飾店アルパカへ。

　私は店主をさせてもらってるクラシカです」

　アルパカ！？

　アルパカ、何か引っかかるな何かは分からないが、なんだろうか？

「冒険者向けの服をお探しでしたね？　なるほど、そんな上等な服をお召でしたら目立つでしょう」

「はい、着替えを買いに来ました」

「ではこちらへ」

　案内されるままに付いて行く

「こちらが冒険者向けの服になります。

　吸水性が高い素材で出来ています」

「触ってみても？」

「はい、どうぞ」

　適当に服に触ると表面は堅いが押すとふわっとした弾力のある感触が伝わってくる。

「これで値段はどれくらいになるんですか？」

「これだと金貨一枚と銀貨二枚になります」

「きんかいちまいとぎんかにまい？」

　俺は思わずアリエステルの方へ向く。

　アリエステルは首を振る

「少し高いですね」

「そうですか？」

「予備の服もここで買わせていたたきますので二着で金貨二枚でどうでしょうか」

「う～ん、わかりました。

　ところでお兄さんはその服売るつもりないですか？」

　クラシカさんはふいっとこちらを向いてニコニコ顔で尋ねてくる。

「いや、やめとく」

「金貨二枚」

「いや、いいよ」

「五枚でも駄目ですか」

　かなり釣り上げてきたな！？

「いや、だめだ」

「そうですか……金貨十枚でも？」

　俺は首を横に振る。

　クラシカさんは残念そうな顔をしたがすぐに笑顔に戻り

「ちょっと待っててくださいね」

　そう言って店の奥に入って行った。

　ごめんね。

　この服は無くしちゃいけない気がするんだよ。

「何か思い出したんですか？」

　心配そうに僕を見るアリエステル。

「いや、何も思い出していないんだが、何故かこの服は売ってはいけないと思ったんだ」

「そうですか」

　アリエステルは、表情を曇らせる。

　しまった。

　そもそも服を調達するお金はアリエステルのお金だ。

　この服を売ればアリエステルに迷惑を掛けるのを少しは軽減できただろう。

「ごめんな」

「え？」

「いや、ほらこの服売ればアリエステルの懐を痛ませずにすんだのに」

「いえ、いいですよ気にしなくて私が必要なものを買っているだけですし」

　アリエステルが笑顔に戻る。

　そうか、しかし、アリエステルが表情を曇らせたのは確かだ。

　何故だろう？

「そういえば冒険者用の服ってことは激しい動きに強いんだろう？」

「はい、私も冒険者なのでついでに、その、おそろいでも問題ないですか？」

「まあ、買ってもらっといて文句は言えないしそもそも文句の一つも無いから問題ない」

「そうですか」

「あ、冒険者と言えばアリエステルはどんな武器を使うんだ？」

「武器ですか？」

「はい」

「私は基本的に弓をですね。

　ただ、近づかれた時のために短剣も使います」

「ふうん、なるほどね。

　俺はどんな武器を使おうか。

　武器も用意しないといけないし考えておかないと」

　村には武器らしき物が無かったし、あったとしてもオークやゴブリンたちが使っていた粗悪なものぐらいだった。

「そうですね」

「服を買ってもらっといて聞くことではないと思うけど、お金大丈夫？」

「大丈夫です」

「そうか」

「じゃあ、測ります」

「「あ、はい」」

　いつの間にかひも状のものを持ったクラシカさんが戻ってきたようだ。

　返事が被ったことは気にしないようにしよう、そうしよう。

「じゃあ、お兄さんからでいいかい？」

「はい」

　アリエステルが返事をした。

　あれ？　そこ俺が返事するところじゃ、……まあいいか。

「いいのか？」

「ええ」

「それじゃあ、ちょっと、手を上げてもらっていいですか？」

「はい、何をするんですか？」

「服の大きさを決めるために予めこうして測って調べるんです。

　だから片手じゃなくて両腕を上げてくださいね」

「分かりました」

　俺が両腕を挙げるとクラシカさんはひも状のものを俺に巻き付けてきた。

　なるほど、このひも状のものは人の体の大きさを測るものだったのか。

「普段は貴族相手に商売させてもらってるのですが、冒険者もたまに利用してくれるので」

　測りながら話すクラシカさん。

「二着と言うことはお二人さんの分でいいわね？」

「はい」

「デザインはどうする？」

「同じで」

「え？　本当に同じにするのか！？」

　おそろいでもいいとは言ったけどデザインを違う物にすることが出来たのか。

「いや、でしたか？」

「いやではない、だが、俺なんかとお揃いでいいのか？」

「もちろんです」

「そうか」

「お兄ちゃん、同じ方が安く仕上がるっていう事もありますので」

「そうなのか？」

「そうなのです」

「それは、なんか、すまん」

　アリエステルに失礼なことを言ってしまった。

　ただでさえお金を工面できる方法を蹴ってアリエステルに負担を掛けているというのに全く、知らないっていうのは怖いな。

「はい、それじゃあ、お次はお嬢さん」

　クラシカさんは、俺を測り終わった後、測った結果を紙に書いてアリエステルの方を見る。

「はい」

　アリエステルは、頷いて返事をした。

　あれ、これって見てて良いのか？

　あのヒモがあんな感じであんな所に巻き付いているのを見るとちょっと挙動不審になりそうなんだが。

　そんな俺の心情は関係なくアリエステルを測り終えるとクラシカさんは再びメモを取る。

「けど、本当にお金は大丈夫なのか？」

　金貨一枚の価値がいまいちわからないな。

　服の値段が高いのか低いのか。

　さっきの話からすると安くはないように思えるが、

「まあ、食事を二十回ほど抜けば大丈夫」

「大丈夫なのか！？」

　食事を二十回も抜けば餓死するんじゃないか？

「ははは、冗談ですよ。　大丈夫です。　こう見えても優秀な冒険者なので蓄えはありますよ」

「でも、武器は買えないんだよな？」

「えっと、何とかなるでしょう」

「……そうか、まあ、それじゃあ、この分と街に入る分とは貸りだな」

「いえ、まだ、私を助けて頂いた貸しが残っています」

「そ、そうか」

　まあ、勝手に貸りにしとけばいいか。

「わかった。　ひとまずよろしく」

「はい」

「それでは、明日にでも取りに来て下さい」

「わかりました」

　そうして、服の注文をした後、宿屋に向かうのであった。