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12 準備

 初依頼も終わり次の依頼の目星をつけるため掲示板へと歩を進める。


「さて次はどの依頼にしようか」


 めぼしいものは、ゴブリン討伐、薬草摘み、護衛ぐらいか。

 ゴブリン討伐に関しては常時依頼とか書かれているので無視するとして、薬草摘みが一つと護衛依頼が三つ残っている。

 残っている理由は、依頼費が安いからだろうか?


「どうしました?」


 アリエステルが後ろから声をかけてきた。


「次の依頼は何にしようかと思って」

「なるほど、しかし、今日はもう休みませんか?

 今から依頼をすると途中で日が暮れてしまいます」

「薬草摘みぐらいならすぐに終わると思うけど」

「そうですか?

 あなたがそう言うなら()()()()()そうかもしれないですね」


 なんだろう、言葉にトゲが感じられる。


「普通は、素人が薬草摘みをしようとすると薬草を探すだけで一日潰れてしまいます。

 薬草の生えている場所がわかっているなら話は別なんですが、フショウ様なら薬草摘みも問題ないでしょうけれど、一つだけ言っておきます。

 私達は、次の依頼を受けていますよ。

 お忘れですか?」


 アリエステルに言われて思い出した。

 そういえば、荷物持ち依頼を受けていたな。

 薬草摘みと荷物持ちどちらが時間がかかるだろうか?

 薬草摘みより時間がかからないなら、いや、向こう側にも何かやることがあるかもしれないし会う時間を決めといた方がいいか。


「なあ、アリエステル」

「はい、何でしょうか?」

「依頼者に待ち合わせの時間と場所を聞きたいんだが」

「それなら受付で聞いておきましょうか」

「それもそうか」


 そもそも、依頼を最初に受けたのは他でも無いギルドだ。

 そのギルドが連絡をつけられるのは当然の話だ。

 俺は、依頼主に伝言すべく受付に向かう。


「依頼主との待ち合わせ時間ですか?

 少し待ってくださいえーっと」


 受付の人はカウンターの下でなにやらあさって一枚の紙をとりだした。


「ありました。

 そうですね依頼主からの言伝によりますと明後日の早朝の鐘が鳴るころに西門でとお聞きしております」

「分かりましたその時間に指定の場所に向かいます」

「よろしくお願いします」


 俺は、受付の人に軽く頭を下げて受付を後にした。



 ----------



 その日は、結局何も依頼を受けずに終わった。

 薬草摘みも行くだけで時間がかかってしまうので仕方がない。

 とりあえず拠点にしている宿に戻ることになった。

 宿につきひとまず食事を摂ることにした俺達は、明後日についての算段と明日何をするかを相談する。


「明日一日空いてるなら薬草摘みでもするか?」

「いえ、護衛の依頼を受ける以上、明後日に向けてしっかり休養をとっておきましょう」

「大丈夫なのか?」

「休むときはしっかり休むのが冒険者業の鉄則です」


 アリエステルがそこまで言うのなら間違いないのだろう。


「わかった。

 明日は休みだ」

「はい」

「因みに休みの日は何をするんだ?」

「それは、明日になってからのお楽しみです」

「そうか」


 それなら明日が楽しみだ。



 ----------



 翌朝、宿屋の二人部屋で目を覚ました俺は、柔らかい感触に包まれていることに気がつく。


「んぐっ!?」


 俺が状況理解すると同時に思わず声が漏れる。

 ある意味幸せな状況だが、しかし、この状況はまずいと本能が告げている。

 二つの柔らかな感触から何とか意識を外して、向けて、いや、外して、離れようと試みるが、突然後頭部を何かが抑える感触がして結果的に思った方と逆に頭が抑えられて離れられない。

 幸せの空間に押し込まれて興奮しつつも徐々に息ができなくなっていく。

 天国と地獄が同時に迫ってきて頭がぼおっとしてきた。

 ああ、天使と悪魔がワルツを踊っている。


「……ショウ……フショウ様!」


 はっ!

 意識が覚醒するのを感じた。

 つまり、あれは夢、だったのか?


「あの、大丈夫ですか?」

「何がですか?」

「い、いえ大丈夫ならいいんです大丈夫なら」


 そう言って、微笑むアリエステルを見て不思議に思いつつも頷く。


「そうか」

「あ、それとおはようございます」

「おはようって、第一声が普通それだよな?

 なんでまた慌て得たように呼びかけてたんだ?」

「ま、まあ、細かいことは気にしないでください。

 それより朝食を取りに行ってから休みがてら護衛の準備をしましょう」

「それもそうだな」


 不審な言動をするアリエステルだが、まあ気にしないでおこう。

 誰にだってそういうときぐらいあるだろう。



 ----------



 宿の朝食は、円形をしたパンが幾つかとスープが出てきた。

 スープの中には溶き卵らしきものが入っている。

 そして、ドンと置かれたパイ、中身は肉だろうか?

 おいしそうな匂いが漂ってくる。


「ポレ水も貰っていいですか?」

「はいよ」

「二人分お願いします」


 アリエステルがポレ水を頼んだ。

 普通に水を飲むより飲みごたえあるからな。


「それじゃあ、しっかりと食べましょう」


 そう言ってアリエステルは服の中から四角形のアクセサリーを取り出す。

 アリエステルがお祈りを済ませると食事に手を付ける。

 朝はしっかり食べないと。



 ----------



 さて、朝食も終わりいよいよ二つ目の依頼の準備と初めての休日だ。

 初めての休日がここにきて三日目と言うのも何かおかしい気もするが、まあいいだろう。

 折角の休日だが、特にこれと言ってやることが思いつかない。

 食事の後のポレ水をゆっくり飲みつつこの後の行動に付いて相談する。


「じゃあ、せっかくなので冒険者御用達の店に行きましょうか」

相互組合専属店ギルドストアだな」

「ええあそこでしたらいろいろ用意するのが楽ですから」


 昨日お世話になったばかりなのでしっかりと覚えている。


「では、早速行きましょうか」

「そうだな」


 ポレ水を飲みほして席を立つ。


「ありがとうございました」


 元気なあいさつをする看板娘に手を振って、アリエステルに付いて行く。



 ----------



 昨日ぶりの相互組合専属店ギルドストアに着く。


「いらっしゃいませ!」


 店に入ると元気なあいさつが飛んできた。

 声の主は、探すまでもなく入口に立っている若い女性の店員だ。


「今回はどのような品をお探しですか?」

「護衛依頼が入ってそのための準備をしに来ました」

「なるほど、それなら冒険者キットがいいですね。

 最低限必要な物が入ってるのでおすすめですよ。

 後は、冒険者キットに入っていないランタンや煙玉なんかもいいですね。

 冒険者キットはあちらに置いてあります。

 ランタンはあちら、煙玉はカウンターの近くにおいてあります。

 何かわからないことがあればぜひお聞きください」


 わざわざ出迎えてくれてそして商品の案内までしてくれたようだ。


「そうですね。

 フショウさんは、何も持っていませんしとりあえず冒険者キットは買っておきましょう」


 アリエステルに言われた通り、何も冒険者に必要なものは持っていないのでひとまず冒険者キットが置いてある区画に向かう。

 冒険者キットが有る区画では、初心者向けに使われる道具が多く置いてあるようで、武器や防具なども置いてあった。


「冒険者キットはこちらですね。

 えっと、この袋に入ったものがそうです」


 飾り棚にいくつか袋が吊るされているのが見て取れた。

 それぞれの袋からは一本だけ棒が突き出ている。


「この棒が飛び出ている袋がそうなのか?」


 そう言って袋を一つ手に取る。

 大きさ的には一抱え程度で、中に色々道具が入っているみたいだ。

 袋の口を広げて中を見る。


「冒険者キットの中身は、ベルトポーチ、松明、ロープ、火打石、打金、保存食、水袋、簡易寝袋が入っています

 保存食は、乾パンと干し肉で十日分は入っています」


 俺は中身を確認して中に入っていた石を取り出す。


「それは火打石です。

 付属の打金と一緒に使います」

「へえ、こんなので火が付くんだ」

「使ったことがないのですか?」

「あ、ああ」


 その時、店員さんの目つきが変わったように感じた。


「なるほど」

「店員さん勘違いしないでくださいねこの人は記憶喪失なので色々なことを覚えていないだけですから」

「そ、そうでしたか」


 しかし、何かを弁明するようにアリエステルが話すと店員さんは、やや残念そうに納得した。


「使い方は、お連れの方に見せてもらえばいいでしょう」


 アリエステルを見ると頷いた。

 どうやらやり方はわかっているようだ。

 いや、むしろ店員さんの反応から察するに出来ないほうがおかしいのだろう。


「わかった」

「他にご質問は?」

「金額は」

「ああ、そうでしたね。

 金貨で十四枚になります」

「それで、お願いします」


 俺がアリエステルに確認をとるまでもなくアリエステルが支払ってくれた。


「分かりました」

「あとポーションと小物も幾つか買っておきましょう」

「ポーションはこちらになります」


 それからしばらく冒険者道具を見て回りアリエステルの


「少しお腹が空きませんか」


 の一言で昼飯を食うことになった。

拙作をご覧いただきありがとうございます。

あんまりと先延ばしにしているといつまで経っても始まらないのでとりあえず投稿しました。

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