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11 初依頼・下

ごアクセスありがとうございます。

ひとまず予定通り十一日目

この後も連続投稿できるかは未来の自分次第です。

頑張れ自分。

 貧民スラム街に到着した。

 さて、あんまりのんびりしていると日が暮れてしまうしさっさと犬を回収して終わらせよう。

 迷うことなくまっすぐに犬のいる方へ向かっていく。

 途中浮浪者や子供と擦れ違うが、貴重品の類は宿に置いて来たためスられるようなことも無いだろう。


「着いた」


 俺は、犬の反応がある建物が見える所で止まった。

 その建物の前には筋肉質な肉体を持つ男が二人立っていた。


「あの建物にいる人物ってこのあたりのボスだったりするのか?」

「その可能性は高いですね」


 アリエステルは、俺の質問に肯定の返事をしてきた。

 ここまで来といて何だけど、これFランクの依頼じゃ無いよね?

 明らかにもっと上のランクの仕事だよね?


「さて、どうしよう」

「私にも解りません」

「これは、依頼失敗にしておいた方が無難かなぁ」


 冒険者が聞いて呆れるとは言え、割に合わなさ過ぎる。


「初依頼で失敗というのは嫌だとは思いますが、引くのも勇気ですよ」

「そうだな。

 引くとする・・・・・・」


 俺が依頼を諦めようとしたその時、俺は、アリエステルに飛び込む。

 それと同時に俺達が見ていた建物が、爆発した。


「なっ、ななな」


 とっさのことだったのでアリエステルを突き倒す形になったけれど多分説明すれば納得してくれるはず。

 うん、アリエステルの柔らかい胸に俺の右手が添えられているのも事故だから仕方が無い。


 因みに左手はアリエステルの頭の下にある。

 俺がアリエステルを押し倒した時に頭を地面に打たないように手を差し込んだのだ。


 ・・・・・・これ端から見たら行為に及ぼうとする男女にしか見えないよな?

 うん、不可抗力だ不可抗力、深く考慮することは止めておこう。


「大丈夫ですか?」


 そっと右手を胸から退けてアリエステルに尋ねる。

 ゴスッと鈍い音が脳内に響いたかと思うと、俺の目の前に星が飛ぶ。


「あ」


 アリエステルの間の抜けた声が耳に入ってくるがうん、「理不尽だ」


 そう思った後意識が飛んだ。


『クリップ起動:呪文スペルウェイクアップ発動します』


 機械音が俺の頭の中に響き渡る。

 かと思うとアリエステルの声が耳に入ってきた。


「フショウ様、フショウ様、申し訳ありませんフショウ様」

「う、うう、いつつつ」

「あ、あの申し訳ありません助けて下さったのに」

「いや、いいよ。

 押し倒したから痛かっただろうしお互い様ってことでいいんじゃないか」

「しかし」

「まあ、今はともかくここから逃げないとやばそうだ」


 貧民スラム街の有力者がいそうな場所が爆発したんだここにいてもロクなことにならないであろうことは容易に想像がつく。

 依頼の犬を助けるチャンスでも流石に得体が知れなさすぎる。

 それに確認したいこともあるし、一旦は、この場を離れないといけない。


「わかりました」


 アリエステルが頷くのを確認して直ぐに来た道を戻っていく。



 ----------



「ここまでくれば大丈夫だろう」


 そう言って俺はローブを脱ぐ。

 ボロローブは貧民スラム街で行動するときは、良いのだが、普段使いするには少々目立つ。


「依頼のはどうします?」

「そうだな」


 今確認したいが、まだ、アリエステルにメニューの事を明かすのは早いと思う。

 だから

 そう言えば、メニューってわざわざ口に出さなければ使えないのか?


『いいえ、声に出さずとも起動できます』

「え?」

「え?」


 俺の戸惑いの声にアリエステルが首を傾げる。


「い、いや、何でもない」

「そうですか?」


 まあ、急に戸惑われたら何に戸惑ったのか不思議に思うだろう。


 まあ、とにかくメニューを開いてくれ


『了解しました』


 って、心の中で話した言葉が分かるならあの時トイレに行く意味なかったんじゃ。


『メニュー』


 俺の代わりにヘルプさんがメニューを開いてくれる。

 えっとマップでムニエルを検索してくれ。


『了解しました』

『マップ』

『検索:ムニエル』


 すると、視界にマップが表示されてムニエルがいる場所が赤く表示される。

 さっきとは違う場所だ。

 しかも移動している。

 もしかして、さっきの爆発で逃げ出したのか?


「どうしたんですか? やっぱり何か」


 俺がメニューを見ているのが不自然に見えたんだろう。

 アリエステルが不安そうに尋ねてくる。


「いや、たださっきの爆発でムニエルがあの建物から出てきてるんじゃないかと思ってな」


 もはや勘と言うには細かすぎる情報である。

 さっきみたいに情報を確認するときにいちいちアリエステルを不安にするのもなんだか悪いしこの能力を教えてしまおうか。


「確かに、けどあれだけの爆発でしたし、むしろ建物の中に取り残されている場合もありそうですが」


 むしろその確率の方が高いと考えるのが普通だろうけれどここは勘で乗り切ることにしよう。

 メニューについてはいつ教えればいいだろうか。

 まあ、機会があればでいいか。


「何となくそんな気がしたんだ。

 要するに勘だ」

「勘、ですか」


 怪訝そうな顔つきになるアリエステルに苦笑する。

 まあ、おかしいよな。

 勘が鋭いとかいうレベルじゃないし。


「まあ、兎に角、依頼主の元へ帰るかもしれないし向かってみよう」

「確かに逃げたのであれば帰巣本能が働いて飼い主の家に戻ろうとするかもしれないですね」


 頷きつつも完全には納得していない様子。

 まあ、そもそもの話、あの建物の中にいると言ったのも俺の勘だ。

 前提条件から確定している俺と言われただけで情報がないアリエステルではどうしても認識に違いがあるだろう。

 むしろ、俺の言葉を信じてくれるアリエステルが尊い。



 ----------



 マップを頼りにムニエルのいる方へ走っていく。

 犬だけあって走るのは速いみたいだが、時々立ち止まる。

 そのおかげで何とか追いつけそうだ。


 連れて帰ってくるのと勝手に帰ってきましたでは、依頼料に差が出るだろう。

 正直なところこの依頼割に合わないどころの話ではない。

 マップがなければムニエルを探すことすら困難を極めただろう。

 まあ、マップがあったから受けたんだけど。


「見えてきました」


 アリエステルの言う通り小動物が道を走っているのが見えた。

 幸いなことに人通りは少ないためムニエルが踏みまれることもないし、通行人が俺たちの邪魔になることもない。

 一応ステータスで名前を確認して……は?


「ムニエル!」


 とりあえず俺は、ムニエルの名前を呼んでみる。

 すると、ムニエルは立ち止まり振り返る。


「探したぞムニエル! 依頼主がお前のことを探している」

「あの、そんなことより捕まえなくていいのでしょうか?」


 まあ、普通の犬ならそうだろう。

 しかし、ふわふわの毛を纏ったムニエルは少し事情が違うようだ。


「わん!」


 と鳴いてこちらに向かってくる。

 そして なかなかの跳躍力を見せたムニエルは、アリエステルに飛び込む。


「わっ!」


 アリエステルが驚いて受け止める。

 ムニエルは、アリエステルを首筋を嗅いで一声鳴いてアリエステルを舐めまわす。


「む、むぅう」


 歩きながらムニエルが落ち着くのを待つか。


 しばらくしてムニエルが落ち着いてアリエステルに抱かれながらも尻尾をブンブン振っている。


「しかし、なぜこの子は名前を呼ばれただけでこちらに向かって来たのでしょうか?」

「詳しいことは分からないがとても頭が良いって聞いていたからな。

 おそらくそういうことだろう」

「そうですか。

 確かに頭は良いみたいですね」


 あの爆発でうまく逃げ出し飼い主の元へ帰ろうとする。

 このことを考えると頭は良いだろう。

 ただし、この犬はただの犬ではない。


 ----------

 名前:ムニエル

 種族:天使族

 称号:飼われている天使

 職業:飼い犬

 所属:シルフィード家

 Lv :32

 STR :58

 VIT :47

 DEX :51

 AGI :99

 INT :121

 技能:神言語、共通言語、変身Lv5、魔術Lv6

 ----------


 うん、意味分からない。

 見た目は犬中身は天使、なかなかに混沌としている。

 とは言え、この犬の行動から察するに飼い主のもとに戻ろうとしていたんだろう。



 ----------



 謎の犬を見つけ保護したので依頼主の元へと届ける。

 何故天使が犬になっているのかわからないが、係わり合いにならないほうが良いような気がするので報酬を受け取った後は、さっさと次の依頼を受けるなり、宿に戻るなりした方が良いだろう。


 というわけで、ギルドに戻り依頼の犬であることを飼い主に確認してもらっている。

 場所はなんとギルドの奥にある一室である。


「間違いない、ムニエルよ」

「そうか、ならこれで依頼達成だな」


 俺は、仲立ちをしているギルド職員を見る。


「はい、それでは、依頼報酬を支払います」


 そう言ってギルド職員は袋を取り出した。


「こちらが報酬となります」


 テーブルの上に置かれたそれをアリエステルに渡す。


「持っていてくれ」

「わかりました」


 アリエステルが袋の中身を確かめて頷く。

 こちらのやり取りが終わったのを察して少女が感謝の言葉を口にする。


「ありがとう、もう帰ってこないかと思っていたから本当に嬉しいわ」

「そうか、喜んでもらって何よりだ」


 飼い主の少女は明らかに何処かのお嬢様といった風貌をしている。

 お嬢様であることを証明するかのように彼女の後ろには燕尾服を身にまとった壮年の男性が佇んでいる。


「ねえ、もしよかったら私に雇われてみない?」


 その言葉に真っ先に反応したのはお嬢様の後ろに佇む男性だ。


「お嬢様!? 一体何を」

「爺やこの人達が私の犬をさらっていないことは明白よ。

 その上で此の広い街から的確に探し出してくるなんて、普通じゃないわ。

 それはわかるでしょう?」

「ですが」

「素性の分からない者を近くに置きたくない?」

「そうです」

「はあ、爺やもお父様も頭が硬いんだから」

「お嬢様は奔放すぎるのです。

 本当ならこの場も」

「爺や」


 お嬢様がため息をつく。

 燕尾服の爺やは、はっとした表情を作り。


「これは、不躾なところを見せてしまい申し訳ない」

「全くよ。

 仕方がないわね。

 このまま終わるのも面白くないから貴方にはこれを上げるわ」


 そう言ってお嬢様は一切れの紙を渡してきた。


「使い道は無いかも知れないけど、持っているといいわ」


 渡された紙には紋章が刻まれていた。

 俺の耳元でアリエステルが囁いた。


「これはシルフィード家の紋章です」

「特に意味は無いわ。

 私に手紙を送る権利ってだけよ」


 アリエステルの声を聞こえたのかどうかはわからない。

 しかし、俺には手紙を送る権利と言われてもぴんとこないのだ。


「それじゃあ、私はこれで、行くわよ爺や」

「了解いたしました」

「また機会があれば、冒険の話を聞かせてね」


 少女はそう言ってから小さく手を振り部屋を出て行く。


「それでは失礼いたします」


 爺やも礼儀正しく一礼して彼女の後に続いて部屋から退出する。

 二人が退出して部屋を離れる音を確認した後、アリエステルが興奮したように言う。


「凄いですよフショウさん!

 シルフィード家と言えば、貴族の中でも名門の家ですよ!」

「具体的にどの程度凄いんだ?」

「侯爵位の家ですよ!

 王家とその一族の公爵を除けば一番位が高い家です!」


 なるほどどの程度凄いのかわからないが、まあ、普通では手に入らないものが手に入ったと思っていいだろうな。

 

誤字脱字、感想、評価お待ちしております。

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