不浄の穴からの呼び声
冒険家ギルドでモンスターの討伐を繰り返す日々が数ヶ月経った頃、俺は気が付くと生活の殆どを森で過ごしていた。
森での生活は植物と虫のモンスターが多いのでクソをしてもすぐに分解されるユートピアだったからだ。
森の中に小さな小屋を建て深い穴を掘り、最深部に植物型と虫型のモンスターを飼って生活した。
俺は完全循環型の便所を手に入れ、遂に日柄クソのことを思考し続ける日々から解放されたのだ。
最初はパーティで討伐に行ったが、辺境の村の冒険家ギルドでは失業者や繁忙期を過ぎた農家の利用者が殆どで閉鎖的だ。勇者の情報など集まる筈もなく、いつしかギルドの仕事など滅多にしなくなっていた。
そんなある日便臭漂う穴の中から耽美で艶のある声が聞こえた。
「もし、クソ塗れのお人。お話ししたい事がございます。どうかこちらまで来て下さいな。」
一瞬ゾッとしたが羞恥心の方が勝っていた。俺が年中クソを漏らしている事を知ってしまった人がいるのだ。
居ても立っても居られず、俺はかぎ爪ロープを伝って地下に降りて行くのだった。
彼女に出会わなければただのクソったれの転生者でいられたとも知らずに…




