52.
ステラの見ている位置から一度に四機の巨人機が火に包まれるのを見た。
イリヤムから、今だ、と通信が入ったが、そのころにはステラはターンしてリヴァイアサンの胸目がけてスロットル・レバーをフルにして飛んでいた。
本来なら自分はただリヴァイアサン・コアを破壊し、人知れず消える運命だった。
それが思わぬ変転によって、たくさんの人と出会い、友達になり、相棒になり、大切な人になった。
たとえ消えるとしても幸せだ。
守るべきものは世界や未来といった漠然としたものではない。
はっきりと顔を持っていた。
セント・エクスペリー荘のみんなを。
サヴォイさん、マリンさん。
それにハンザさん。
みんなを守りたい。
みんなの未来を守りたい。
そして、最後にお礼を言おう。
イリヤムに。
大好きだと言おう。
リヴァイアサンはこれまでにないほどの大きさで胸を開いた。四機の巨人機と八機の護衛機はもう再生用の肉から半分飛び出しかけている。
そして、その上に、心臓の位置にコアがある。
暗がりのなか、コイルの明かりが見える。リヴァイアサン・コアが静かに全てを命じている。
照準器の十字線が小さなガラスの水槽をそのなかに浮いている邪神の頭脳に重なった。
ステラは発射レバーを引いた。




