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Prologue
ひっくり返った燃える街。
逆さまになった空は赤く濁っている。
風は無気味に渦巻いている。
機を一八〇度ロールして水平に戻す。
目的のポイントまであと一キロ。
センサーがわめく。
敵機が八機、食らいついている。
ここで墜とされるわけにはいかない。
あと五〇〇メートル。
翼や胴体に弾がめり込み、機が震える。
時空転移モードに入った以上、機はもう動かせない。
あと二五〇メートル。
操縦席のすぐ後ろから爆発音とともに、どすぐろい血のような煙が噴き上がった。
破壊を免れた計器は時空転移装置があと一七パーセントのチャージで空をこじ開けられると知らせている。
あと一〇〇メートル。
機はコントロールを失う。
あと三パーセントのチャージ。
あと五〇メートル。
火をまき散らしながら機首が下がる。
一・三二パーセント。
一〇メートル。
チャージ完了。
〇メートル。
機は透明なガラスに衝突したような音を立てる。
赤い世界が震え、解体し、青い世界に組みなおされる。
機は青い世界へと墜ちていく。