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その殺し屋、元医者にて  作者: 虎一揮
一章 戦闘王国カルガンテ
9/19

闘技祭へのご案内

なんだかんだですごく早い更新になりました。

名:ヴァルド


種族:人間


筋力:10(+810)


耐久:10(+690)


敏捷:10(+790)


魔力:0(+15)


精神力:10(+750)(付加属性【闇】)


魔法


【ファイアボール】・・・初級炎魔法

詠唱『闇夜を照らす命の灯火よ、闇を切り裂く清光なる炎よ、我が身元に集まり、猛火をもたらせ』


※『魂【グレス】』を装備しないと行使不能


スキル


限界突破・・・種属ごとに定められた能力の上限値を無くす。


能力吸収・・・相手の能力(アビリティ)の10分の1を吸収。但し、相手を死に至らしめることが条件。代償として、相手を殺すこと以外能力(アビリティ)の成長はない。


ー派生①【魂の饗宴】・・・過去に屠った生物を顕現させる。但し、能力(アビリティ)は10分の1。


ー派生②【魂の契約】・・・呪い。具現化された魂を相手に付着させることによって位置情報を随時連絡、付着位置を腐敗させる。


「ふう…」


俺は馬鹿でかいお城から南東にある宿屋の個室でベッドに寝転びながらステータスプレートを眺めていた。


(能力の上昇が微妙だな…。やはり貧困街(スラム)の住人には限界があったか。だけど首領(ドン)能力(アビリティ)は侮れない物ったから収穫かな。モンスターで結構上がったし)


頭の中でここ二週間の出来事をゆっくりと整理していく。

俺は今に至るまでずっと貧困街(スラム)で殺しまくっていた。

たった二週間だったが、並の人とは比べ物にならないくらい能力(アビリティ)が向上していると思う。

 初めて人を殺した時は、少し躊躇いはしたけど思いの外あっさりと殺せてしまった。

前世の時の人体の構造を覚えていたから、血もあまり出すことなく殺すことができた。

 あの時の全能感は中毒性が尋常では無かったことを覚えている。

身体に行き渡る力の波動が俺の空いた心を埋めて行き、俺が俺に話しかけてくるのだ、「次をよこせ」と。

あの時は理性を最大限行使して衝動を押さえ込んだからあのままいってたらただの獣に成り下がってたな。

まああれを機に効率的に殺すプランを次々と考えた訳だが。

綿密に計画を構築していざ実行して殺そうとすると、欲望の塊が出張ってきて思うがままに振舞ってしまうな。

あれはあれでいいのだが、()られないよう気ははっとかないとな。


(はぁ、やっぱり失敗だったか?あいつに魂植えたのは)


あのバラトってやつにグレスの魂を植え付けたせいで、能力がいかんせん劣ってしまう。

グレス(あいつ)がいないと魔法使えないんだよな…。

人を()ってから気づいた、能力は確かに上がるけど、いちいち『魂』を身体に巻き付けないといけないんだよな。

そうしなければ俺は万年平均成人男性にすぎない力しか使えない。

 全ての魂は得てして皆ヘドロだから装備すると凄い目立つから本当に使いづらい。

表向き普通で通っている俺だから、悪い印象はつけたくない。

やりたいこともあるしな。


(まあ、あいつも俺と同じ意志の超克者(・・・・・・)だからそれ相応の『魂』が必要だし、仕方ないか)


ガクリと首を折る俺。

魔法を使ってみたいという感情は前世、アニメや漫画を嗜んでいる人なら誰でも思うものだ。

こう、手にとって使えるのに、だけど使ってはダメという、すごいもどかしい気分にさせてくれる。

ああ、魔法、使ってみたかったなぁ…。

まあ一様、詠唱の練習でもしてみようか。

一回、一回だけど。


「『闇夜を照らす命の灯火よ、闇を切り裂く清光なる炎よ、我が身元に集まり、猛火をもたらせ』!!!【ファイアボール】!!!」


シーーーーーーーーン。

む、虚しいな。

やらなきゃよかった…。

誰もいないのに物凄く恥ずかしいっっ!!!

 羞恥心で顔を真っ赤にした俺は、他の事を考える事で雑念をふるいおとす。


(す、貧困街(スラム)は壊滅してしまったし…、次は冒険者を屠らないと能力(アビリティ)の向上はないな)


さて、そこが問題だ。

貧困街(スラム)の奴らはこの王国の闇の中に生きる者だから殺されても表沙汰になりにくい。

 だが冒険者となると話は別だ。

冒険者は俺も含めてギルドの庇護にある存在であるから迂闊に手を出せない。

暗殺を繰り返して仕舞えば必ずギルド主導で原因究明に取り掛かるだろう。

 さらに冒険者は貧困街(スラム)のような薄暗い所に行く奴はそんなに多くない。

暗殺ポイントが激減するから効率的に殺すことができない。

情報の共有もかなり速いから殺せば殺すほど難易度が跳ね上がって行くだろう。


(駄目だ…。冒険者を殺すいいプランが思いつかねえ…)


例の方法を試すにはかなりの数の『魂』が必要だから実行出来ない。

少なくとも4分の1は必要だからな。


(考えるだけでは仕方がない。散歩でもして情報収集するか)


俺はゆっくりと身体を起こして身支度を始める。

護身用のナイフを腰に下げ、レッグホルスターに回復薬(ポーション)と金をねじ込む。

防具の類はいらないからそのままにして、最近愛用しているローブを身体に纏う。


「よしっ、行くか」


そう自分に声をかけて部屋から出ようとする。


(次、いつ『食事』をするのかしら?待たせるのは嫌よ)


頭の中に凛とした声が波を打つように響いて行く。

美しく、可憐で、非の打ち所がない声をしているのに、欲望が前面に出されていて美が全てを帳消しにしている。

淑女、聖女然とした声をしているのになんてもったいない。

 

(出てきたか、俺の本能)


 意志を超克した者に降臨する妖精。

バラトは追い詰めた時に降臨したようだが、俺はもっと前から降りてきている。

まだ俺を含めて二人しか見ていないから一般性に欠けるのは否めないが。

 俺はこいつを俺の中で無意識下に存在する『本能』と呼んでいる。

初めて降臨してきた時の言葉が『もっと欲しい』だからな、欲望ダラダラだろ。

俺の内なる欲望とはまた別の欲望。

こいつは俺の意志に忠実だから誰彼構わず『喰いたい』という。節操ないな。


「ああ、今はまだだ。もうちょっと待ってろ。冒険者はしがらみが多いんだよ」


(片っ端から食べていけばいいじゃない、まどろっこしいのは嫌いってわかってるでしょ!!)


俺の後頭部付近から宙返りするようにして飛び出し、目の前にくるくるっと回転して目の前の空間に着地する。

そして暗赤色の瞳が俺の青い(・・)瞳をにらみつけて憤慨する。


(やっぱり見た目はピカイチだよな。見た目だけは)


 彼女見た目だけは非の打ち所がない抜群なスタイルをしている。

 緋色を基調としたワンピースから伸びるしなやかな肢体は透き通るにように白く、シミ一つ落ち

ていない。

 ワンピースに包まれながらも目立つ豊かな双丘からは妖艶な色気を匂わせる。

 背中からは妖精を想起させられる蝶のような羽根が一対生えており、それはどの蝶の羽根よりも美しく、透き通った透明で、光の反射で虹色に輝いている。

 燃え盛るような真っ赤な色で染められている髪の毛は、光を反射して高級の赤石(ルビー)のような輝きを放っている。いや、それよりも遥かに美しい。

 爛々と輝く赤色の瞳はいつも飢えに満ちていて、獰猛な肉食動物を彷彿とさせる。

 黙っていれば、申し分なく可愛く、妖艶で、女性の理想像に足る存在であっただろうな。

だけど、中身があまりにも死んでいる。

淑女然とした気品に溢れた言動は見る影もなく、かつ男を虜にするような妖艶さもない。

ただ一つ、喰欲だけが彼女を突き動かしている。

 この本能さんの宝の持ち腐れ具合にため息をつくばかりだ。


「はぁ…。なんでこんなポンコツが出てきたんだよ。飛んだ貧乏くじだ」


あ、声に出てた。


「なんですって!!これでも私は妖精の中で最上級の実力を持っているんだから!そうじゃなきゃあんたのスキル、あそこまで強くなってなかったんだからね!」


「ああ、その点は感謝してる。してるが…。お前のその欲望、どうにかならんのか?いちいち鬱陶しいんだよ」


「黙ってちょうだい!!これが私の生きがいなの!ひっさしぶりにこの世界に出てこれたんだから、奔放に生きたいのよ!ずーーっと、暇だったんだから!あとポンコツって呼ばないで!私にはちゃんと名前があるの!!シャ、ル、ナ!!」


「はいはいわかってシャルナ(ポンコツ)さっさと巣に戻ってくれ」


「ムキーーー!!ポンコツじゃないの!!…、あ、乱暴に掴まないで!頭に押し付けないでーー!!!」


俺はさくっとシャルナを鷲掴みにしてこいつの巣にねじ込む。

頭に押し付けられたシャルナはグゥゥと獣うなり声のような声を上げた。

そしてうっすらと存在が薄れていき、身体を構成していた粒子が舞う。

それらは頭の中に吸収されていった。

 俺が思い焦がれていた静寂がやっと到来する。

こいつがいると外に出れないんだよな。

こいつは俺にしか見えないようだから、俺だけが宙に向かって喋ってるように見えて変人扱いまっしぐらだ。

それを考慮してくれたら楽なんだけど、このシャルナ(ポンコツ)は場所を選んでくれないし。

無視したら滅茶苦茶うるさくなるし踏んだり蹴ったりだ。

スキルはありがたいんだけど…、やっぱりこいつデメリットの方が大きいよな。


「はぁ…。絶対あっちの蒼い妖精の方が良かっただろ…。清廉で純真そうだったし」


(はあ?そんなわけないでしょっっ!!あいつは意外と腹の中真っ黒よ!!私もあっちの世界で何度かしてやられたんだから!!)


「いや、それ僻み入ってるだろ。いい加減自分を見直せ。そして性格を変えろ」


(何よっ!!私だって良いところあるもん!!もういいわ!もう口きて上げない!!)


頭の中に響く鈴のような声をした罵声が鳴り止み、静寂が訪れる。

やっと落ち着いた…。

こいつ、そんなこと言いながらちょっとしたら構ってくるんだよな。

かまってちゃんかよ。

 とりあえず、街に出よう。

シャルナ(ポンコツ)のせいで時間がとられちまったよ、本当にめんどくさいな。

 俺は個室の扉を開いて、活気に満ちた街の人混みに混じっていった。





俺はギルドの酒場のカウンター席の末席に座ってチビチビと安酒(エール)を飲んでいた。

いつものごとくギルドは喧騒に包まれており、静寂など何処吹く風で話し声や笑い声、怒号が飛び交っている。

俺の隣に座る虎人(ウォータイガー)犬人(ドグドラン)も例に漏れず、周囲を気にせず大声で喋っている。

ちなみに、獣人の種族名はここ二週間でギルドに

聞いておいた。

 虎人(ウォータイガー)安酒(エール)を一口呷って犬人(ドグドラン)に新しい話題を振った。


「なあ、知ってるか?貧困街(スラム)の不審死事件。貧困街(スラム)を牛耳ってた組織がここ二週間ぽっちで壊滅したってよ」


「ああ、知ってる。ありゃあやべえ匂いがするな。なんせ死体に傷がないんだぜ?しかも血痕も一滴たりとも見つからねえらしい」


犬人(ドグドラン)は摘みをボリボリと頬張りながら愚痴のように呟く。


「まあ、貧困街(スラム)の組織が潰れるなんてザラだしな。また新しい奴らが台頭するだろうよ」


「ちげえねえ。こんな程度じゃギルドは重い腰

上げねえだろ。何せ冒険者が関与してないからな」


よし、計画通りだ。

原因を断つことによって俺に足がつかないようにする目論見は上手くいったようだ。


「だが、いったい誰がやったんだろうな?あんまり信憑性がないらしいが、『死神』が魂を食い荒らしたって噂だぜ」


ビクッ。


「いやいや、それはないだろう。やるにしても人だよ人。よほど恨み嫉みが堆積したんじゃねえか?死因をごまかしといて次世代の組織に釘をさすような入念ぶりだが」


「まあ、そうだよな。神話の存在がここに出てきたら世話ねえって話だな」


「ちげえねえ!ガハハハハハハハハッッ!!!」


ふぅっ。

少し焦って冷や汗が背中を伝ったわ。

信憑性の低いものでも侮れないものがあるよな。

意外と真相に近いから元凶にとって心臓に悪い。


またまた虎人(ウォータイガー)が興奮しながら話を振る。


「そんなことよりよお!!とうとうきちまったぜ

闘技祭!ここを拠点にして約4カ月!俺はこれを見るために冒険者稼業をやってきたってもんよ!」


「おい、そこは出る方に回れよ!」


冷静なツッコミが犬人(ドグドラン)に入る。


「細けえことは気にすんなよ!俺はぁ命は惜しいからな!あんな死者が続出するゲーム、相当な戦闘狂(バトルジャンキー)か、強者しか集まんねえよ!」


「なんだよ出ねえのかよ!面白くねえなぁ!」


後ろから炭鉱人(ドワーフ)が野太く低い声で話に割り込んでくる。


「当たり前だろ!命あっての物種よぉ!まだまだ俺はペーペーの新米なんだよ!ス、スイマセン、ボク、チビッチャイマスー!」


「「「「ヴフォ!!」」」」


獰猛で名を通す虎人(ウォータイガー)が裏声を効かせて新人の真似をするギャップに盛大に噴き出す他の客たち。


「アッハッハッハッハ!!!お前にそれは似合わねえよ!!てかお前、バリバリの中堅じゃねえか!お前の称号見せてみろよ!点はやっぱりDランクじゃねえか!」


「おいやめろって!嘘がばれんだろ!」


「「「最初(はな)からバレてるよ!!」」」


ものすごい至近距離で爆音の笑い声が耳に響く。

 …楽しそうだな。

ここにいる奴ら全員酒が入っているからか大声でしゃべってうるさい。

だけど、いい情報がもらえた。

殺しが合法だって?これは俺の要望にそったいい祭りじゃねえか。

これは参加すべき案件だな。

ちょっと探りを入れて見るか。

今も笑い続けている虎人(ウォータイガー)に向かって話しかけて見る。


「すいません、その闘技祭ってどこで催されるんですか?」


「うおっ!!急に喋り出すなよ、びっくりするだろう!心臓が破裂するかと思ったぜ!!」


「「「お前ほど肝っ玉据わったやつはいねえよ!!!」」」


ツッコミがよく入るなぁ、なんかの学芸団かなんかか?


「うるせえよ!…ああ、お前も見る口か。それならこっから南東にあるコロッセオでやるんだよ!

前売り券はギルドで売ってるから買いに行きな!もし出場するならギルドの窓口へと行ってこい!まあGランクのお前じゃ即天に召されるだろうがよ!」


「「「ちげえねえ!!!!」」」


ドッと笑いが起こるカウンター席。

最初は二人で馬鹿話をしていたはずなのに、カウンター席の後ろにわらわらと人が集まってきて立ち飲みする奴らも出てきたよ。


「闘技祭開催を祝してかんぱーーーい!!!」


「「「「かんぱーーーい!!!!」」」」


ジョッキを目一杯上にあげてゴツンとぶつけ合っていく。

木製のジョッキだから低い音が鈍く響く。

その音を近くの人が聞いていたのか、またそこでジョッキをぶつけて、ゴツゴツゴツゴツっと連鎖的に奥まで続いていく。

おい、お前ら、なんのために乾杯してるかわかってないだろ。

心の中で精一杯ツッコミを入れる俺。

とりあえず離脱してギルドの窓口へと向かおう。

また、レニアさんのど緊張ぶりを拝めるな。

と、そのとき頭の中でシャルナ(ポンコツ)の声が鳴り響く。


(こいつら、美味そうね。喰べたいーー!!!)


本当にお前、黙ってろよ。

ステータスバーを書くとこう、ワクワクするものがあります。主人公が成長するのって良いもんですね。

こいつは成長ってより吸収なんですけど


※ドグドランは造語です。ドッグだとダサいかなあと思ってちょっといじりました

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