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その殺し屋、元医者にて  作者: 虎一揮
一章 戦闘王国カルガンテ
5/19

悪魔の食事 ②

すいません!更新遅れました!

しかも少し違和感があると思います…

随時改稿しますのでよろしくお願いします!

闇が蔓延る貧困街(スラム)の最奥。

そこに首領(ドン)司令部(アジト)がある。

光の届かない闇の中のさらに闇、そこには松明で 光源を確保し、ゆらりゆらりと司令部(アジト)の門を照らす。

 光の届かない場所では、上へ上へと権力を示すために建造物の増築を行わず、闇の深さを示すため、地下迷宮が作られる。

 王国が強くなる程、その実闇も根深くなる。

この地下迷宮はこの世界では群を抜いて広く、そして深いものであった。

  その地下迷宮の最奥の一室。

番犬としてモンスターが地下迷宮内で遠吠をあげる中、首領ドンが泰然として豪華な椅子に座る。


「さて、と。俺の手下が消えているんだが、これの原因はわかるか?」


「さあ、貧困街(ここ)じゃザラにあるから特定は難しいだろ」


首領(ドン)の隣に立つ参謀(ブレーン)らしき人が腕を組みながらそう言う。


「だが、明らかに異常だ。他の手下が様子を見に行っても殺した痕が見つからん。しかも武闘派ばかりが標的(ターゲット)になっている」


「と言うことは、次の狙いは、俺、か」


「ああ、そうなる」


首領(ドン)は命の危険を晒されているのにニタァと口角を吊り上げて笑う。


「俺をなめるなよ…。返り討ちにしてやる」


 貧困街(スラム)の頭を張る男は肝っ玉が据わっていないと務まるわけがない。

 例外無くこの首領(ドン)も強者で、西側の陣営では頂点(トップ)に君臨する。

 貧困街(スラム)でここまで上り詰める道程での数知れない闘争の勝利が首領(ドン)の自信を漲らせる。


だが。


地下迷宮が揺れる。

大して大きな揺れではないが、長く、小さい揺れが辺りに伝播する。

明らかに地震の類ではない。

震源は上層、不気味な気配が少しずつ迫る。

モンスターの遠吠がピタリと止み、この地下迷宮に静寂が訪れる。

これまでにないここまで迸る殺気をこの身に感じ、少し恐怖の感情が芽生える。


「来たか…。こう派手なお出ましとはね」


「ああ、奴は俺らを皆殺しにするらしい。フッ笑えない冗談だ」


二人は動き出す。

近くにある武器倉庫に赴き、着々と準備を進める。

無防備だった身体に防具をつけ、戦闘の準備を始める。

これは非常時だ。

普通なら武器1本で標的をぶっ殺すことが定石(セオリー)だが、相手の得物が何か分からないなら、準備に越したことはない。

毒殺もあり得るから脇や膝の裏に鉄板を仕込んで身体を守る。

 そして武器の選定。

大物は除外だ。身元の分からない奴に隙は与えない。

 ならば連撃(ラッシュ)重視。

短剣(ショートソード)短刀(ダガー)、ナイフと、刃渡りの短い武器を順に身体の至る所へと差し込んでいく。


「よし、準備は整ったな」


「ああ、貧困街(俺ら)の力を思い知らせてやろう」


そして二人の男は侵入者を迎え撃つ。

2人の頰からポタリと汗が一雫。

 この時の二人はまだ、侵入者の真の恐ろしさを未だ知らない。



「う、うわああああああああああああああっ!」


 断末魔が地下迷宮内に鳴り響く。


ドシャッ。


 首の裏を深く刺し込まれた男は態勢を崩し、地面へと堕ちる。

首から流れる命の水は止まることなくなみなみと流れ落ち、そして生き絶える。

そして、身体中から紅く染まったヘドロが噴き出し、死神へと誘われる。

そいつを踏み倒し、前へ進む死神。

死神の影は不気味に蠢き、闇の中に染み渡る。


「君たちには用がない。その味にはもう飽きたんだよ。それとも、自ら喰われにくるのか?」


残党にチラリと目を向け、緋く光った瞳でそいつらを射抜く。


「「「ひいいいいいいいいいいいっ!?」」」


死神に背を向け、地下迷宮内を逃げ惑う貧困街(スラム)の住人たち。

そいつらには全く目をくれず、住人と共にいたモンスターへと歩み寄る。

モンスターは地下迷宮内だからか、狼を主とした、大型の猿、豚、緑色の小人、まあオークとゴブリンなのだろう、と多種多様だ。

モンスター達は怯えの様子は全くなく、溢れかえる殺意を持って死神を睨みつける。


「モンスターは初めてだな。だが、関係ない」


死神は余裕な表情を一度も崩さない。

嗤いを止めずに次の行動に移る。


「【魂の饗宴】」


 突如、死神の影が死神を中心として半径10メートルまで伸びる。

その広がった影から、闇から引きずり出されるように、地獄から追い立てられるようにして人の形のした何かが陰から這い上がるようにして浮かぶ。

 【魂の饗宴】。

過去、自分の手で殺めた魂を手駒にするスキル。

死神は、過去に屠ってきた貧困街(スラム)の住人をここに顕現させた。


「「「ぐ、ぐおおおおおおおおおっ!」」」


「さあ、踊れ!宴の始まりだぁ!!」


顕現させられた魂の奴隷達は例にもれなく全員人間の顔をしていない。

絶望の底なし沼にハマったかのように感情が抜け落ち、ただひとつ、死にたいと願っているだけだ。

奴隷は全員人間やはりヘドロで包まれ、片手、または両手には生前得物としていた武器を握っている。もちろんヘドロ製だ。


「殲滅だ、ここの階層の生きとし生けるもの、皆殺しにしろ」


この死神が一度相対した相手を見逃すはずがない。

今しがた逃げた奴等はたいした味じゃないが、駄菓子の気分で食えばいい。

完食(皆殺し)は、食事(殺し)の作法だ。

 ババっと奴隷達は四方に分かれ、殲滅に向かう。

計34人、これまで死神が屠った人間の数。

奴隷の内の一人の筋肉質の男が狼型のモンスターに駆け込み、獲物である大剣を上段に持ち上げ、振り抜く。


「ギャオウ!?」


狼が真っ二つに切断され、生き絶える。

それが口火になり、奴隷とモンスターの戦争が巻き起こる。


「「「ゔおおおおおおおおおおっ!!!!」」」


奴隷7人と多種多様なモンスターとの戦闘。

一見モンスターが数と本来備わるステータスを持って蹂躙する筈が逆に蹂躙されていく。

ある者はモンスターの中を駆け抜け、通り抜けざまにモンスターを細切れにし、ある者は戦鎚で頭蓋を陥没させて脳漿を撒き散らせる。

奴隷の動きは人間のそれではない。

本来備わる無意識上でのリミッターが取り外されて、人外のパワーを持ってモンスターをなぎ倒す。


そして。


倒れたモンスター達は身体中からヘドロが噴き出し、死神へと吸い寄せられる。

そして、また陰からヘドロに様変わりしたモンスターが産み出され、戦闘に参加する。

また、こことは別の所で逃げおおせる奴等を皆殺したようで、死神へとヘドロが飛んでくる。

最初は殲滅に時間がかかったが、指数関数的にモンスターの殲滅が早まり、後は残党狩りだ。


オークとが苦し紛れに死神へと棍棒を投擲する。

死神へと飛来する棍棒は、その射線で筋肉質の紅い奴隷が身を擲ち、死神を防衛。

胸を貫かれた奴隷は苦渋に満ちた顔で崩れ落ち、ヘドロの水溜りが地面に広がる。

 このスキルの欠点は魂は消耗品である、ということだ。

生前の時と同じ致命傷を与えられると魂は消滅し、その魂は永遠の無を徘徊することになる。

この奴隷達に、永遠に安息は訪れない。


「あぁ、あいつの味は美味かったのに、残念だ」


人の命に頓着しない死神はやはり異常だ。

終わりのない無に誘われた魂の痕をチラリと見て、すぐに視線を切る。

 そして、死神は進み出した。


「さあ、宴は終わらないぜ…。お前ら(餌ども)はどれだけ足掻くか、楽しみだ」


闇の中を歩いていく死神。

死が刻一刻と迫る。


「ぎゃああああああああああああっ!!!!」


地下迷宮内に断末魔の声が鳴り響く。


「また、悲鳴か」

「ああ、そのようだな」

「時折怨嗟の声が混ざっているが、なんなんだ、あれは」

「知らん、気を引き締めろ。お前が向かわせたやつらがここに戻ってこない以上、全員()られていると見るべきだ」

「そうだな」


貧困街(スラム)首領(ドン)参謀(ブレーン)が5メートル毎に埋められた魔石灯に照らされた道を辿って、上層に向かって歩いていく。

地の利はこちらにあるため、手下を向かわせて居場所を確認、そして進行方向を予測して裏をかくつもりだったが、そもそも手下が帰ってこない状況だ。

 正直、少しまずい。

曲がりくねった地下迷宮内では、音が反響してどこに人がいるのか特定ができない。

敵の居場所がわからない今、いつ曲がり角の先で接敵(エンカウント)するかわからない。


「どうする?このままドンパチはマズイだろ」

「ああ、そうだな。敵は未知数だ。しかも恐らく俺らより強い。正攻法で勝てるわけがない」


この二人は自分より敵が上手と判断し、奇襲、強襲等で先頭に臨む方向性に決めた。

こいつらにとってはこれが十八番(おはこ)だ。

これを選択するのは必然だ。

 それに、ひとえにさきほど伝播した殺気の強さがもう一つの原因といえる。

精神力の強さはその者の強さに比例するから、そう判断した訳だ。


「ならば、待ち伏せにするか?」

「いや、その広さの地下迷宮では不可能だ。相手の行動を絞りきれない。しかも入り組んでるから逆に蹂躙されかねない」

「じゃあどうするよ」

「火を起こす。それで視界と臭いを奪い、敵を通気の良い上層の広間に誘導する。相手も人間だからな。火の煙で動きが鈍るのを嫌がるだろう」

「じゃあ、地下一階の大広間になるか。で、バレないようにはどうする?」

「地の利はこちらにある。敵のだいたいの位置は感覚でわかるだろ?そこを避けるようにして駆け上がるだけでいいだろう」

「なんか心許ないが、仕方ねえか。やるぞ!」

「ああ」


そして、首領(ドン)は詠唱を開始する。

 魔法、それはこの世界での超常現象。

体内にある魔力を糧にして、詠唱で形を作り、呼名でトリガーを引く。

その手順を踏んで、この世界に物理常識を無視した現象を起こす。

ちなみに、詠唱の長さで威力の強さに影響が出る。

同じ魔法でも威力に振り幅がでる、ということだ。

まあ、例外に詠唱短縮、もしくは省略する魔術達者(化物)もいるが。


「『闇夜を照らす命の灯火よ、闇を切り裂く清光なる炎よ、我が身元に集まり、猛火をもたらせ

』」


「【ファイアーボール】」


首領(ドン)の目の前に半径5メートル程の炎の玉が出来上がる。

中級炎魔法、【ファイアーボール】。

メラメラと燃えるそれは、周囲の空気を焦がし、熱が2人へと届く。

 参謀(ブレーン)はその炎に一つも汗をかかずに、詠唱へと移る。


「『世界を包む広大な大気よ、生命(いのち)を運ぶ聖なる風よ、この凪の地に恵みを与え給え、今一度この地に生命(いのち)の洪水呼び起せ』」


「【ウインドストーム】」


参謀(ブレーン)を基点にして、突風が【ファイアーボール】に向かって突き抜ける。

 中級風魔法、【ウインドストーム】。

吹き荒れる突風はそのまま【ファイアーボール】に触れ、【ファイアーボール】と【ウインドストーム】が融合し、炎の風が巻き起こる。

全てを焼き起こす豪炎は魔石灯に引火して爆発を引き起こし、奥へ奥へと火の手が伸びる。


「よし、行くぞ」

「ああ」


2人は、火の手が上がる道とは反対側に向けて走り出す。

まだ、続きます

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