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その殺し屋、元医者にて  作者: 虎一揮
一章 戦闘王国カルガンテ
4/19

悪魔の食事 ①

短いです。

前回の反動です。

今回は狂気ですので、ご注意を

戦闘王国カルガンテ王都レクリスにおいて。

この都市にも例外なく貧困街(スラム)というものが存在する。

この都市は広大な円形の城塞都市で、北と南には大門が設けられているが、西と東にはない。

その影響もあり、北と南を結ぶメインストリートは活気があり、治安が安定しているが、城壁に沿って治安が悪くなる。

北門と南門を円弧に沿って結ぶ中点が最も治安が悪いとされている。

その場所にてある事件が起こる。


太陽がすでに地の果てに沈み、月光が闇夜を仄かに城塞都市を照らす。

その光は貧困街(スラム)の入り組んだ街並みには入らない。


薄暗くて前が全く見えない狭い街道をある男が歩く。

その男の身体は筋肉質で、服の上からでも胸筋の存在がはっきりとわかる。

顔は強面で、目から耳にかけて爪で肉を抉られた痕が残っている。


「ん?妙だな…」


男が歩く先々で、街道に人が横たわっていた。

そいつらは全員漏れなく生気がなくなっていて、死んでいた。

貧困街(スラム)では人が死ぬなんて日常の一つだ。

人が死んでいても気にしないが、今回は訳が違う。

全員、死んだ痕跡が見当たらないのだ。

餓死者であれば身体が瘦せ細り、頬骨が出っ張っているものなんだが、そういう事でもない。

刺し傷や殴打痕、首を締めた痕も見当たらない。

だが、こいつらはみんな死んでいた。

明らかに不自然だ。

しかも、こいつらは大体が貧困街(スラム)での武闘派の者たちだ。

俺も狙われているのか…?

意味も無く俺は後ろを振り返る。

だが、そこには薄暗い闇が広がるだけだ。

冷や汗がポタリと頰から地面へと落ちる。


「なんか、やべえな…」


俺はすぐに顔を前に向け、足早に立ち去ろうとした。

すると目の前にはフードを被った人がいて、そいつとぶつかった。


「おい!気をつけろ!」


「…」


気配を感じなかったから気付かなかった。

突然現れたそのフードの男はバランスを崩し、あっけなく手を地面についた。

その後、何もなかったのように立ち上がり、俺とすれ違う。

なんなんだよ、あいつ、気味悪いな。

そんなことより、こっから早く離れねえと。

と、俺がもう一度前へと進もうとした瞬間、視界が歪む。


「な、なんだ!?」


俺はバランスを崩し、前方へ倒れこむ。

両膝を地面につき、両手で身体を支えようとするが、両手が動かない。

受け身に失敗した俺は、無様に顔で受け身をとった。


「か、身体が、うごひゃにゃい…!!?」


口が上手く回らない。

もう一度両手に力を込めて立ち上がろうとするが、身体が取り合ってくれない。


(やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいィィィ!!!!!?????)


辛うじて動く首を回して、片目で上を見上げる。

そこに見えたのは、まさに死神だった。

フードの中から覗けるのは悪魔のような笑みだった。

昏く笑い、俺を殺すことに悦を感じている。

目は緋く光り、闇の混じった色で俺を射抜く。

俺はどっと全身から汗が吹き出した。

死の気配を濃厚に感じる。

黄泉の世界から俺を歓迎しているように幻視した。

まるでこいつが案内人のように。


(死にたくない、死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない!!!!?????)


「ひゃ、ひゃすけて!!??」


俺は泣きじゃくり、鼻水をたらし、涎で顔がグチャグチャにして命を乞う。

フードの男は嗤いを止めない。

フードの男は腰からスラリと昏く光る短刀(ダガー)を抜く。

刀身は血脂がこびりつき、少ない光源で紅く反射する。

男はゆっくりと俺に近づき、俺の頭を掴みとり、俺の目と合わせる。


「お前の命は、どんな味がするんだろうなぁ?」


ゾクッッッッ!!!!!


俺の全身が凍らされたように冷え切った。

男は対照的に怖気が走る顔でこっちを見据える。

男の緋い瞳が薄暗く光って見えた。

瞳の奥は底知れない闇が広がり、その中を蠢く死人の姿が見えた。

こいつら、もしかして貧困街(スラム)の奴らなのか…?

ということは俺もあの闇の中に行くのか?


(嫌だ嫌だイヤダイヤダイヤダイヤダ!!!???)


男の短刀(ダガー)が俺の首の上の方向へと吸い寄せられる。

必死に首を動かして短刀(ダガー)から遠ざかろうとする。

だが、短刀(ダガー)を持っていない手で髪の毛を掴まれ、顔を地面に叩きつけられる。


「ちょろちょろ動くな。お前()は大人しくしろ」


死が近づく。

短刀(ダガー)が首の上の方に吸い込まれて行く。


(あぁ、ああああああああああああああああああ!!!!????)


絶対的な死の恐怖で喉が竦んで声が出せない。

短刀(ダガー)が首に近付くまで無限の時間を体感した。

そして。


ズブリ。


男は即死した。

鼻水、涎塗れだった男の顔は生気を失い、貧困街(スラム)の闇へと溶ける。

なけなしの抵抗をしていた男の筋肉は弛緩し、ダラリと地面へと横たわる。

そして、静寂があたりに広がる。

前触れもなく、死体に変化が起こる。

男の全身から紅く染まったヘドロが吹き出し、それが男の体を覆う。

男はヘドロ塗れになって生気の失った顔が隠れる。

ヘドロの中から男の怨念が響く。


(やめろやめろやめろやめろやめてやめてやめてやめてやめてやめて!!!!????)


次の瞬間。

バッとヘドロがフードの男の周りに飛び散り、浮遊する。

そして、一定浮遊した後、 一点、フードの男はに目掛けて散りばめられたヘドロが凝縮、そして吸収。

闇の住人が1人追加される瞬間だった。

男は苦しみに呑まれ、徐々に自我が蝕まれ、発狂して行く。フードの男の中で。


「あぁ。旨い!この感覚は堪らない!」


男が闇の中で嗤う。

闇の中での哄笑は、街路を反響し、辺りに響く。

だが、それを聴く人はいない。

ここはこの男の蜘蛛の巣の中なのだから。


「さて、と。こいつの後始末をするか」


男は嗤うことを止め、したいの後始末にとりかかる。

レッグホルスターにしまっていた回復薬(ポーション)を死体の首元に満遍なくかける。

回復薬(ポーション)をかけられた首元は、見るも悲惨な深い切り口をみるみる癒していく。

そう、死体に(・・・)回復薬(ポーション)をかけるのだ。

切り口が塞がると、どういう経緯を持って死んだかが闇に葬られる。

後は血を始末すれば、俺に足がつくことはまずない。


(フッフッフッフッフッフッフッフッ)


次は誰を喰らおうか。

もうこの程度の奴じゃ、俺の食欲は抑えられない。

ならば…

決まりだな。

次の標的(ターゲット)はあいつだな。

この業界の首領(ドン)

さぁ、俺に最高の料理を味わさせてくれ!!



まだ続きます

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