表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その殺し屋、元医者にて  作者: 虎一揮
一章 戦闘王国カルガンテ
3/19

冒険者登録

今回はすごく長いです。

分割した方がよかったかな…

なんだかんだゴタゴタがあったけど、街に入ることができた。

警備兵に担がれながら入るという不恰好な姿で入ったからすごく恥ずかしい。

大門付近を歩く人々が俺をチラ見して、コソコソっと喋って笑っている。

おのれぇ…。

ま、まあ命だけは守れたからしゃあないよな。


「にいちゃん。1人での旅は無謀だぞ!あんな風に魔物が跋扈してるんだから、普通は命はないぞ!今回は偶々他の集団にあやかれたからなんとかなったものの、今回のような幸運はないと思え!」


「す、すいません」


「じゃあな。俺は仕事に戻るわ」


警備兵は1人で来た俺を説教して市壁まで歩いて行った。

まあ普通は隊商(キャラバン)の輸送車に乗り込んでの移動なんだろう。

だけど俺が転生した場所は大平原のど真ん中。

隊商(キャラバン)に乗れなんて無茶もいいとこだ。

神よ、もっとマシな転生場所はなかったのか…?

まあ神の作為をこの世界の人々に認知されることはまずいんだろうけど。

なにがともあれ、助けてくれたから素直に叱責の言葉は受け取った。

次の街の移動はしっかり隊商(キャラバン)に乗って安全を確保しよう。

そう誓う俺だった。


俺は街のメインストリートをてくてくと歩いている。

メインストリートの脇には石造りの建物の前に店がズラーっと隙間なくならべられていて、人の出入りが絶えない。

人々は活気に溢れていて、喧騒に満ちており、静寂で満たされることなど一度もない。

時には怒号が辺りを伝播するが、それは日常茶飯事らしく、気にすることなく商いが営まれている。

所々の露店には長蛇の列が出来て、メインストリートの中心まで伸びているところもある。

メインストリートを歩く人々はそれをうまく掻い潜り、各々の目的地へと歩いていく。

その中には冒険者が入り混じっており、両手剣を背中に提げ、重そうな鎧を着た虎の獣人だったり、腰帯に短剣を挿し、弓を担ぐ9歳児くらいの身長の小人が歩いていた。

ソロで歩く人は絶対的な量が少ない。

大概は4人5人で歩く人がほとんどで、なにかしら同じマークみたいなものを肩当てとか左胸につけていた。

そんな人を見ても、ここに住む住民は怯えた様子はこれっぽちも無く、商人なんて客の1人と見て接待までやっている。

そういえば俺はどんな武器を装備しようか。

前世は手術でメスとか針とか刃渡りが短いものを使っていたから、短刀とか針でいいかな。

でもさっきみた大型の狼とかだと致命傷を負わせられないよな。

なら両刃の剣とかかな。

まあ選ぶ機会があるだろうし、また物価がどんなもんかわからんからその時決めればいいか。

その前にやることがあるし。

まずはギルドという所に行かないとな。

というかそもそもここはどこに位置するんだよ…。

たぶん今いる位置は城を中心にしたらやや外周にあたる部分だと思う。

だけど東西南北のどこにあたるかがわからない。

太陽?まあ光源は一番高い所から俺の後頭部を照らし、温かみをもたらしているが、その太陽?は本当に東から西に動くかもわからないし。

いまはとりあえず中心にあるどデカイ城に向かっている所になる。

その城は他の建物など寄せ付けず、ひと回りふた回り、てか規格外に大きくて、この街の象徴である!と叫んでいるようだった。

だけど、規格外に大きいわりには細かい細工がされているようだ。

ここからでははっきりと視認することは出来ないけど、かなり熟達した建築士が渾身の作品を作ったのだろうと窺える。

ちなみに、ここは王都らしい。

そこかしこにいる人々の話し声を拾い上げていたらそのような言葉を聞いた。

まああんなでかい城を建てる地方都市なんてこの世界ではそうそうないよな。どんだけクソでかい国家なんだよ。

とりあえずさっき見た武器を装備している人について行ったらわかるだろう。

多分彼らはどこかで依頼を受けているだろうし、その場所は多分ギルドだと思う。

人に聞けばいいかと思ったけど、この世界の基準がわからないから無用に人と関わるのはやめたほうがいいだろう。最初のうちは。

現金なやつだと聞いただけで金を請求するとかありそうだし。考えすぎだろうけどな。

俺は俺を抜かした5人組のパーティーに目星をつけ、その後にきづかれないようについていった。


5人組のパーティーについて行ってしばらく経つと、中心のお城程ではないが、結構豪華な建物が俺の目に飛び込んで来た。

白を基調とした石造りの建物で、正面に大きな門がある。

門の上には盾と剣が描かれ、その前に人が握手しているマークの旗が垂れ下がっている。

そのマークの上には石をくりぬいて『ギルド 王都カルガンテ支局』とアーチを描くように書かれていた。

そこを武装している人々が絶え間なく出入りしているようだ。

ドアの類はなく、こちらからでも中身の様子は軽く窺える。

正門とここまでに、主に長方形型の白色のレンガが敷き詰められ、一種の道路となっている。

道路の脇には綺麗な花々が咲き誇っており、色彩豊かなら花々がが白で染まっている建物を一層際立たせている。

建物の全容は門を中心に左右に一軒家が二つ並ぶくらい、まあ小さめの体育館のようなもんか。

高さもかなりあり、4階建だろう。

正門の辺りは5階建相当の高さはあるだろう。

ちなみにお城のような細工はあまりない。

正門の両隣には有名そうなおっさんの像が建てられており、彼らのポーズは一貫して大剣を両手にもち、地面に突き刺す姿だった。

バリエーションがねえな。

肩に担ぐ姿とかはないのか?

二階から上は穴を開けただけの窓が一定間隔でつけられておとり、その中から人の気配が感じられる。

二階から上は宿屋になっているようだ。

まあここがギルドだから取り敢えず中に入ってみる。


ギルドの施設内に入ると、そこは前世の体育館並みの天井の高さを誇り、奥行きもバスケットコートが4つ横で並ぶくらいの大きさだった。

入り口から受付までは直線の大きな通路で結ばれている。

受付の右隣にはモンスターの引き取りをする場所、その反対には試験管らしいものや何かしらの袋を売っていた。

片方は換金場所、もう片方は雑貨屋になるんだろう。

換金場所は結構広く陣取られており、その隣は上に向かう階段と下に向かう階段があるだけだ。

もう片方は居酒屋のカウンターが並び、その奥には厨房があるようだ。

また受付へ向かう通路の両脇には、数多の円卓や背もたれのない椅子がひしめいており、各々の脱装した人々が食べ物にがっついている。

こんな真っ昼間から酒を飲む奴らも散見され、酔っているのか辺りを気にせず歌を唄い出す始末であった。

壁やら天井やら結構クオリティの高い絵が描かれていて荘厳な雰囲気を出しているはずなのに丸潰れだ。

ちなみに、壁に描いている絵は、普通の人をはじめとした虎っぽい人、犬っぽい人、などなどが結託し、漆黒の鱗を纏わせた龍と相対している構図になっている。

そこには種族間の垣根を越えた、同じ人として共闘しているように見える。

けれど例外っぽい種族が1つ。

少し離れたところに耳の長い髪が緑色の種族が1人だけポツンと描かれている。

共闘はするが、直接的に協力はしない、ってことなのだろうか。

天井を見上げてみると、数多の種族が右手を前にかざして円を作っている構図だな。

俯瞰図のようで、頭だけしか見えないからどれがどの種族かははっきりしないけど。

やはりそこには耳の長い種族の拳を掲げる姿は全く見られない。

あの図から察するに、漆黒の龍と戦うために同盟を組んでいるのだろう。

そしてこのギルドは同盟の象徴、ということになるのか。

だが耳の長い種族はその中に入っていないと。

それらを見て、大体種族間の関係図がわかった。

まだ目に見えない差別などはあるだろうけど。

ただ、こんな精巧な絵画が飾られているのに、そこを居酒屋にするとは…。

価値観の違いなのだろうか。


俺は受付に赴く。

受付には大勢の人々がひしめいており、長蛇の列をなしているようだ。

受付の台の右側には掲示板が張り出されており、なにやら依頼書らしいものが溢れるようにして貼っている。

そこに多くの人が群がり、依頼書の争奪戦を繰り広げているようだ。

早い者勝ちのやつで、先に依頼書を引きちぎると遅れて手を伸ばした奴が舌打ちをして他に狙いを定めていた。

まあ俺が用があるのは受付だからいまのところそれは関係ないな。

でもまあこっちも大分多くの人が並んでいるけどね。

こっちに用がある人は俺のように冒険者登録をする人、まあ少数だろうけど、か依頼達成報告だろう。

俺は長蛇の列の端に並ぶ。

後はボケーッとして待つだけだな。

心に悟りを開いて時間に身を任せよう。


そして待つこと体感約30分。

やっと俺の番が回って来たようだ。

あの列にしては回転が物凄く早いな。

パーティーを組んでいるなら代表者が並べばいいから一人一人相対するはずなんだけどな。

よほど有能な受付人なんだろうな。

まあ他にも仲間だけど仲間じゃないみたいな内戦状態になっているパーティーもなきにしもあらずだけど。


「次の方!御用件はなんでしょうか?」


俺に声をかけたのは妙齢の人間の受付嬢だった。


目元はパッチリしていて、髪型は黒色ポニーテール。

化粧はシンプルに仕立てており、元の顔を引き立てている感じだ。

快活に話した一語一句、全ては定型文なんだろうけど、そうとは感じられない魅力がある。


「あ、はい。冒険者登録をしたいんですけど」


たしか神?のオススメでそんなこと言ってたよな。つまりここにいるのは冒険者ってことか。

さっきから武装した〜、て長いから次からこっちで敬称しよう。


「はい!分かりました!では左手にある戸口から中に入って行ってください!詳細は担当の人にお聞きください!」


「わかりました」


受付嬢も手馴れた感じで、冒険者登録する俺に定型通り戸口へと誘導した。

俺も例外なく捌かれたようだな。

少し圧倒されつつも、さっき言われた左手の戸口の方向へ向かう。

人混みがひどくて全く見えなかったけど、確かにそこには中の部屋は入る両扉があった。

俺は人を掻き分けてようやく扉の前へ辿り着いた。

そして、両扉を両手で開けて内部へと身体をすり込ませる。

お、重いな…。

一般男性並の力は持っているはずなのに、ちょっと自信をなくす。

両扉の内部は、直ぐに部屋ってわけではなくて、約20メートルくらいの廊下が奥まで伸びていて、その道中の両隣に個室が並んでいる、という作りになっている。

全ての扉にはネームプレートが付けられていて、手前から順に面談室が左右に4つずつ、資料室がその右手の奥に、左手には職員の事務室、突き当たりにギルド長室となっていた。

この部屋の造りを確認していると事務室の扉が開いた。

事務室から出てきた人は猫の獣人だった。

本当の猫のように瞳は縦に細長くなっており、髪の上からちょこんと猫耳が二つ付いている。

前世の猫耳カチューシャのような違和感は全くなく、時々耳がヒクヒクと動いている。

人間のような耳は無く、耳にあたる部分は髪の毛で被さって見えない。

すれ違う人をちらりと見たときにはよく見ていなかったけど、こうもはっきり見ると凄い。

人間とは少し構造が異なるから知的探究心をくすぐられるな。

ちなみに、この人も女の人でさっきの受付嬢に匹敵する容姿を持っている。

あの人は美麗でお淑やかな感じだったけど、この猫人は人懐っこくて可愛い感じだ。

ショートカットで切り揃えられていて、眼は釣り目だけど、何処と無く愛嬌が感じられる。


「何をジロジロ見てるにゃ!早く面談室へいくにゃ!」


語尾に「にゃ」が付いてる…。

昔読んだ小説通りになっていて、少し感動する俺。

こういう反応が愛嬌を感じられる所以になっているんだろうな。

受け答えが少し子供っぽくて可愛らしい。頭を撫でたくなる感じだな。

少し顔を赤くした猫人は俺に手招きして面談室へと入っていった。

可愛いな、この猫人。

てか俺精神的に50歳近くなってんのに結構若々しいこと言ってんな。

外見がそうだから性格も変わっちゃったかな?


猫人と一緒に一つの面談室に入る。

部屋の中は結構簡素な造りになっていて、部屋の中央に長方形型のテーブルが置かれ、そこに向かい合うように長いソファが並べられている。

テーブルの上にはロウソクが灯してあり、仄かにこの部屋を照らしてくれている。

部屋の隅には振り子時計が置かれ、チクタクチクタクと時を刻んでいる。

前世のように24時間では無いようで、どう読み取ればいいのかがわからない。

部屋の奥には大きめの窓が備え付けられていて、それはガラスで出来ていた。

2階から上には付いてなかったけど、ここは経費削減なのかな?

窓の奥には花畑が広がり、風で揺れる綺麗な花々を眺望することができた。


俺と猫人は互いに向かい合うように座った。

猫人は手に持っていた書類をパサっと机に置き、話を切り出した。


「私の名前はレニアですにゃ。今回はよろしくおねがいしますにゃ」


「よろしくおねがいします」


こんな感じに軽くレニアとの自己紹介が終わる。

そしてレニアはこちらに紙を一枚差し出す。


「その紙にギルドの概要と契約の一覧になりますにゃ。契約するまでに目を通してくださいにゃ」


顔の赤みはまだ引いてないけど、職務をこなそうとして頑張っている姿を見ると微笑ましくなる。


「にゃ、にゃんですか!?レノはなんかおかしなこといっちゃったのにゃ!?」


「いえ、なんだか微笑ましくて」


「からかわないでくださいにゃ!まだレノは新任だけど、これでも頑張ってるのにゃ!」


「わぁ!頑張って下さいね!」


「そう言われると照れるにゃー!」


顔をまた赤らめるレ二ア。

反応する度に手を振ったり、耳をヒクヒクさせたりと忙しないけど、この子面白いなあ。

一人称はレノだし、感情が高ぶったのか言葉が乱れていた。

新任なのは本当なのだろうし、そっとしといておこう。

何より見てて微笑ましい。

心の中で頑張れ!と手を振る俺だった。


「仕切り直すにゃ!取り敢えず目を通して下さいにゃ!」


さて、渡された紙に目を通すとするか。


まずギルドとは。

・国の枠組みの垣根を越えた組織。

・種族間の同盟を象徴する組織でもある。

・主に魔物を討伐、護衛、物資の輸送を行い、ギルドが主導して冒険者に仕事を割り振る。

・国同士の争いには不干渉で、国からは独立している。

・ギルドは同盟を組んだどの種族の国にも必ず設置されている。

・ギルドに本局は存在しない。国ごとの差別化をしないためである。全ては支局で表される。


とまあこんなもんかな。

あの壁画と天井画の通りだろう。

主にと書いてあるから他にも特殊な仕事もあるんだろうけど、今の俺には関係無いな。

多分どこでもあるから、このギルドに所属するとパスポート免除みたいなことになるんだろう。

国の争いにも不干渉は当たり前だわな。

種族同盟の象徴を踏みにじる行為だし。

概ね理解した俺は次の事項の読み取りに移る。

次は契約について、か。

・ギルドと契約を交わした人は冒険者という称号を与えられる。

・冒険者は率先して魔物の退治、撃退、民間人の保護に取り組み、治安の安全を担う。

・冒険者を名乗る者はギルドに所属する事を意味し、ギルドが命令(ミッション)を与えれば、必ず遂行しなくてはならない。

・魔物の素材の買い取りは個人の裁量による。ただし、採集任務の場合は例外。

・ギルドに背く行動をした場合は称号剥奪とそれ相応の罰を与えるとする。

・ギルド内、ギルド外での騒ぎは厳禁、破れば制裁がある。

・ギルド長は全員強いので、契約には従う事をお勧めする。制裁は主にこの人に準拠する。


うん、最初は堅かったのに後半からはなんか実体験を書いているような。

チラリとレニアを見ると、ビクゥ!!!に毛並みを逆立てて、その後ダラダラと汗をかいていた。

あぁ、実体験なのね…御愁傷様です。

この子の場合、仕事でミスったり、うっかり上司に馴れ馴れしくしたからなのだろう。

容易に想像できちゃうな。


視線を泳がせていたレニアに話しかける。


「あの」


「な、何ですにゃ!?レノは何も悪く無いにゃあ!?」


慌てるレノ、口をアワアワしていて狼狽えている。


「別に何も言ってないですって。目を通しました。契約に同意したいんですけど契約の同意はどうするんで?」


「はぁよかったにゃぁ〜。あ、はいにゃ!これに手をかざして下さいにゃ!」


レノは書類の下から取り出した石板をこちらに差し出した。


「こう、ですか?」


「そうにゃ!それでいいにゃ!」


俺は石板に右手をかざす。

すると、石板は淡く光だし、俺の手を包み込む。

その光は俺の右手からゆっくりと這い上がってきて、俺の胸の辺りまで到達する。

そこで光の浸食は止まり、光の収縮、発散が繰り返される。

なんだか俺の精神的、自我の部分に干渉を受けてる感じ。

心のうちを覗かれているようで落ち着かないな。

その繰り返しが30秒くらい続いて波が引くように光が石板の中に舞い戻って行った。

そして石板には文字が彫られていく。


「あの、これはどうなっているんですか?」


「えっとですにゃ。これはステータスプレートって言って、手をかざした人の能力が目で見ることが出来るにゃ!」


「はぁ。それはどういった原理で?」


「レノに聞かれてもあんまりわからないにゃ!古代の魔法の遺産とは言われていますにゃ!」


「あぁ、なるほど。それでこれは自分の能力を示すだけの代物でしょうか?」


「違うにゃ!それは身分証明書も兼ねているにゃ!それを見せるだけで身分が保証されるにゃ!」


なるほど。まあ予想通りだな。

後疑問なのは精神的部分に干渉していたようだけど、能力が上がるのは身体的部分じゃないのか?


「あの、能力が上がると、筋肉が大きくなったりとか外見の変化はありますか?」


「それは無いにゃ。全ての『経験』は一度『心』に集約されて、『経験』の種類によって『精神の身体』に割り振られるだけにゃ」


ふむふむ。

ちょっと解釈し直してみようか。

『経験』とは、モンスターの攻撃を避けたり、受け切ったりすることで間違いないだろう。

その『経験』は、直接筋肉にダメージがいって超回復で成長されるのではない。

『心』に『経験』が行き、『心』の中にある身体に『経験』が蓄積される、ということなのだろう。

それは元々の身体にリンクしていて、そこに蓄えられた『経験』が潜在値となって、人間離れした能力が発揮出来る感じか。

精神と元々の身体は同じものだから、元々の身体が耐えられない、てことはないようだ。

と、こんな感じだろうか。

前世じゃ絶対考えられないものだな。


「それでにゃ。ここに名前を書いて頂くと契約が完了するにゃ。そしてステータスプレートに能力(アビリティ)が反映される仕組みになってるにゃ。」


石板には名前を書く欄が一番上にあり、その下に種族名、筋力、耐久、敏捷、魔力、精神力のステータス欄がある。

その下にスキルと魔法を記す欄が設けられている。


「あの。ステータスは全て開示義務があるのですか?」


「いえいえ!そんなはずがないにゃ!ステータスは個人の生命線といっても過言ではないのにゃ!誰にも見せたらいけない決まりなのにゃ!」


よかった。

俺のスキルがバレる心配はなさそうだ。


「ということは、このステータスは俺が任意で公開、非公開を選択できると」


「そうにゃ!ちなみに名前と種属欄以外他人には見えないにゃ!」


「丁寧に教えて頂いて、ありがとうございます!」


「いやぁ、照れるにゃあ」


手を頭の後ろに持っていって二ヘラと笑うレノ。

可愛かったけど、軽く笑い返して自分の名前を石板に記入しにかかる。

名前はやっぱり変えたほうがいいよな。

前世と同じだと、あの頃の嫌な思い出が彷彿とするし。

ならば全くの新しい名前としても、想像力に乏しい俺が考えても思いつくわけがない。

なら前世の名前から取る形にするか。

前世の時の名前は帝倉真鷹だし、安直に鷹から取るか。

鷹だから英語でホーク、でもなんかしっくりこないからフランス語でファルコン、それを少しもじって…。

よし、ヴァルドでいいや。全然鷹っぽくねえ。

俺はヴァルドと石板に手でなぞって書く。

ペンを持たされなかったからそれでいいんだろう。

最後の一文字を書き終えると、俺の書いた文字の軌跡が光りだし、石板に刻まれていく。

そして、その下のステータス欄も上から順に彫られ、文字が浮かび上がっていく。

俺の初期ステータスはこんな感じになった。


名:ヴァルド


種属:人間


筋力:10


耐久:10


敏捷:10


魔力:0


精神力:10


魔法 (空欄)


スキル


限界突破・・・種属ごとに定められた能力の上限値を無くす。


能力吸収・・・相手の能力(アビリティ)の10分の1を吸収。但し、相手を死に至らしめることが条件。代償として、相手を殺すこと以外能力(アビリティ)の成長はない。


なんか、結構きつい条件出されちゃってるんだけど…。あの神?、ちょろっとスキルいじりやがったな。

まあしゃーないか、それでも十分強いし。

そういえば精神力について聞いてなかったな。

他は大体見当がつくけどこれだけは全然わからん。


「そういえば、精神力って何ですか?」


「えっとですにゃ、自分の纏うオーラの大きさと思えばいいにゃ!モンスターにも似たようなものがあるにゃ!声に乗せたり、視線に乗せたりすると、オーラが小さい奴を追っぱらうことができるにゃ!」


「なるほど」


強ければ相手を戦わずに負かすこともできるのか。

これは意外と使えそうだな。

俺は石板を金が入っている袋に突っ込んだ。

意外と軽いのな、この石板。

しかも全然のス◯ホみたいにコンパクトサイズだし、かさばらなくていい。


最後に聞く事はあったっけかな。

そういえば、この街の案内図が欲しいな。


「すいません。ここの地図とかもらえませんか?初めて訪れたので」


「はいにゃ!ちょっと待つにゃ〜、はいにゃ」


レノがあたふたして俺に地図を渡してくれた。

俺は地図を受け取り、それを丸めて袋の中に突っ込んだ。


「ありがとうございました!頑張ってくださいね!」


と、俺はレノの頭を撫で撫でする。


「子供扱いするにゃー!レノはもう18歳なの!」


俺からしたら子供なんだよなあ。

中身は50歳のおっさんなもんで。

どちらかというと保護欲が湧いてくるな。


「忘れるとこだったにゃ!地図代とステータスプレート、合わせて1万ベリトになりますにゃ!」


「ほい、じゃあまたね」


「ありがとうございましたにゃ!ご武運を祈っておりますにゃ!」


袋から金貨一枚を取り出し、ピンと弾いてレノに渡す。

流石は猫の獣人、素早くキャッチした。

俺は踵を返し、面談室を後にした。





だらだらしちゃってすいません…


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ