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七夕秘密結社  作者: 常盤野信乃
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少女は何を願ったの?

陽は一息ふぅと吐くと覚悟を決めたような表情で、口を開いた。

「まぁボケーとしていて僕は今の今まで忘れていたんだけど確かに聞こえたんだ。犯罪のような話をね。お母さんの『あんたなんか生まなければよかった』という罵声が終わった後、僕はあのうるさい人の大声が終わったと思って、その辺をふらついてた。でも、まだ話し声が聞こえていた。僕の耳に。あの罵声よりははるかに小さい声で、すごい内容を話していた。まぁとんでもない詐欺の内容さ。まず、母親がこの子をおいていったように見せかけるために母親は一度ゲームセンターから離れる。そして、誰でもいいもちろん僕らでもいい第3者の人間が迷子のふりをしているこの子と一緒にお母さんを探しに行くということをしてもらう。その時この子は『お母さんは私なんかいらない』や『帰ってこない』など母親としてあるまじき言葉を言われたと言えば、大人は母親を叱ってやりたいと思うだろう?まぁ僕は思わないけど。さておき、第三者とこの子がお母さんを探していると、母親が現れる。母親は自分の子が誘拐されたと嘘をつき、それを大声で言う。当然第3者は困惑する。その隙に母親は店の人間に嘘をつき、警察を呼んでもらいその第三者を逮捕させ、高額な賠償金をだまし取るというわけさ。大馬鹿の鉄平、理解できた?」

「はぁ、まぁそれくらいは・・・・・て!俺はいつまで馬鹿と言われるんだよ。」

 あまりの用意周到な計画に息をのんでしまっていた。詐欺をするスケールが大きすぎる。

「鉄平、これが初めてだったら、この子を警察に突き出さなくてもいいんだけど、もうこれが15回目なんだよね。」

 それを聞いて、鉄平はふと疑問に思う。そんなに顔を出す詐欺をどうして、簡単にみんなひっかかるのだ?むしろ、すぐに警察に詐欺とわかられてしまうのではないか?それを陽に聞いてみる。

「ああそれはね、毎回子供を入れ替えて、母親も入れ替えているからね。ばれることはないよ。」

「へっ?」

 正直意味が分からない。思わず少女の顔をふと見ると、図星なのかずっとうつむいたままである。

「一般の人でもこれはわからないね。ちなみに僕もわからない。」

 それをきいた瞬間鉄平は思わずずっこけた。あれだけ詐欺の内容をペラペラと語れたのに肝心の大事なところがわからないなんて。体をおこしながら溜息をつく。

「何か教えてくれないかな?」

 鉄平は少女に聞いてみる。もちろん彼女と同じ目線で。しかし、少女は鉄平の顔などいっさい見ず、ずっと下を向いている。話す気は無さそうだ。鉄平はゆっくりと体を起こすと、

「しょうがない。犯罪者のままでお前は生きとけ。」

 そう言って、その場を離れようとすると、陽がぐいっと腕を引っ張る。鉄平は少しよろめく。

「かわいそうじゃないか!彼女ここで独りぼっちなるんだよ。」

「かわいそう?どこが?」

 鉄平は思わず首をかしげた。陽は信じられないとでも言いたいのか目を大きく開けている。

「かわいそうなのはむしろこういう詐欺にひっかかった人たちだよ。犯罪を犯そうとしている子供にかわいそうなんて気持ち俺にはない。むしろ『母親から逃げたい』という割には何も話さないこの子に対しての怒りしかない。お前はさ、許せるの?」

「子供だよ!まだこんなに小さいのに・・・・。」

 鉄平はその言葉にカチンと来た。子供だから許されるのなら、今頃日本中を震撼させたあれやこれやは許されるのか?鉄平が一番嫌いな言葉の一つであった。「年相応の対応をしなければいけない。またはそれ以上に大人な対応をしなければならない」そう、よく父に言われていたが、いつもテレビで見る頭いいけど社会性のない人間はどうなる?これも同じだ。小さな子供だけど犯罪を犯そうとしているそれは許されていいのか?否許されていいはずがない。

「お前の親が子供に殺された。子供だからお前は許すのか?」

「それは・・・・・。」

 陽も今自分が言っている意味を察したらしい。鉄平はこれ以上少女と話しても意味がないと判断したのである。陽もそれをやっと察したらしかったのだ。二人は少女をおいて、行こうとしたときだった。

「待って!全部本当の話だよ。お母さんから逃げたいのも本当。黙っていたのはね、お兄ちゃんたちを信頼していなかったの。ごめんなさい。だから、一人にしないで。お願い!」

 少女の拙劣な願いが口から飛び出した。二人は足を止め少女のほうへと振り返る。鉄平は無言のまま彼女を見つめる。怒りはまだ収まっていない。彼女の話自体が「ウソ」であったならば、話は別だ。

 しかし、杞憂に近い鉄平に対して、陽の態度は楽観的すぎた。

「やっと話してくれたねぇ~。うれしいよ、僕。」

 陽がうれしさのあまり少女に抱き着こうとした瞬間、少女のすさまじいけりが陽のみぞおちに入った。陽は不意打ちに唾を吐きだしながらみぞおちを抑えながら倒れた。

「案外弱いのね。見た目は私より年上なのに。」

「おごっ!」

 みぞおちを抑えながら両膝をついて立ち上がろうとしている陽にさらに少女は踵落としを背中に入れる。

「やめろ!」

 こうなることは若干予想していた鉄平ではあるが、ここまでひどいとは思わなかったのである。止めに入ると、少女は邪魔をするなと言ってけりをいれようとする。鉄平は瞬間かわして少女を羽交い絞めにする。

「放せよ!」

 少女は手足をばたつかせる。意外と強くて、ばたつかせた足のかかとが、鉄平の膝に当たる。

「落ち着け!・・・痛っ。」

「何でこうなるんだ?鉄平説明を!」

 完全復活した平安時代のコスプレ少年は、手をあげる。生徒が先生に質問するように。全く不謹慎という言葉をプレゼントしてあげたい。

「説明している場合じゃない!前からこの子を抑えろ!」

「あっ、うん。」

 陽は、急いで立ち上がり、少女の足をつかむ。

「馬鹿!抑える場所違う。」

 鉄平が言うが時すでに遅し、少女はブランコをこぐように後ろに足をそらして勢いをつけ、陽のみぞおちにまたけりをいれた。鉄平は勢いをつけられたときに2本の足で思いっきり膝をけられた。その痛みから両腕を話してしまった。

 少女は見事に着地すると、しりもちをついてしまった鉄平に近づく。鉄平はすぐさま体制を立て直し、少女のこぶしを手のひらで受け止める。まだ幼いため軽い。手のひらを少女の腕に移行しつかむと、足をのばしていれる。少女がバランスを崩したところを狙い、軽いこぶしをみぞおちに入れた。

 少女はそのまま顔面から倒れた。鉄平は倒れた少女の両腕をつかみ後ろでくむ。

「警察に突き出すぞ!先に手を出したのはお前なんだからな!」

 そう叫んだとき人々の目が3人にいっていることに鉄平は気づいた。明らかに鉄平に敵意ある視線が向けられている。少女に敵意ある視線を送っているものはほんのわずかしかいない。おそらく鉄平が少女を羽交い締めにしたあたりからみているのであろう。

 あまりの不利な状況に鉄平は思案する。しかし、そこは四〇〇点満点中一八九点の実力である。全く思いつかない。

「鉄平、意外とケンカ強いんだね!」

 不謹慎の平安時代のコスプレ少年はまったく関係ないことを目を輝かせながら言う。

 その隙に少女はとうとうグスッグスッとすすり泣きを始めた。もちろんウソ泣きに決まっている。

「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんんん!」

 小さい子にのみ許される大きな泣き声。大人から見ればかわいそうに思えてしまう。この状況に鉄平は周りをきょろきょろ見渡す。思いめぐらせても思いめぐらせても思いつかない。

「鉄平、ねぇ僕ら変な目で見られていない?」

 陽が耳元で囁く。鉄平は慌てて5、6回首を縦に振る。もう陽にかまけている暇などない。最後の手段である。

「逃げるぞ!」

「えっ?」

 言葉で伝えるよりも行動で示したほうが早し。鉄平は少女を小脇に抱え、陽の腕をしっかり握る。そのままダッシュ。二人分の重さが鉄平の体にのるが、そこは根性。捕まるよりましだという気持ちが勝った。野次馬が追ってこないことを確認しながら、鉄平は走りに走った。


 今日は逃げてばかりだなと思ったとき、鉄平は周りの状況を確認した。ビルが所狭しと並んでいる大通りとは違いきれいな水が流れる川の前であった。どうやら今日陽と出会った河川敷に来たらしい。

 陽は目が回っているのか足元がおぼつかない状態で、頭の上でヒヨコがぴよぴよと鳴いている。一方の少女は・・・・・鉄平は目の前にいる人物とその隣にいる人物をみて絶句した。

「・・・・・・・・これ現実?」

「ママァ、あの人たちがあたちを誘拐したの!」

 さっきの言葉遣いとは打って変わってかわいらしい少女の言葉遣いになっている。正直こざかしい。そして、物凄くませている。

 少女は少女の母親らしき女性に抱き着いて泣く。女性の憤怒の顔が鉄平たち二人の前に現れる。鉄平は肩を思わずすくめる。

「すみません。でも、あなたが今やろうとしていることは間違っています。」

 陽の言葉に鉄平はさらに肩をすくめた。犯人に犯行知っていますなんか言ったら、間違いなく殺される。つまり、墓穴を掘ったようなものだ。しかし、陽はそんなことなど気にしてなくむしろ正義感の顔を満ち溢れている。

「すみません!僕らそういうつもりじゃないんです!すみません!僕らこれで立ち去るんで・・・・。」

「鉄平!悪い人たちから逃げるなんて駄目だよ!」

「逃げるほうがいい!へたに俺たちが警察に捕まるよりは・・・・。」

「いいや。犯人を取り逃がしたら僕らも共犯者だ!」

 頑固者だ。それから、頭の思考どうなっているんだ?鉄平はそう心の中でつぶやきながら、呆れた。鉄平は少女の母親を見た。そして、また思った。逃げるが勝ちと。

 少女の母親は身長180センチは当然超えているくらいの大きさで、体系もふくよか二の腕辺りは厚さ30センチはあるのではないだろうか?あんな腕で首でも絞められたら確実に10秒で死ぬ。顔もこわもてで、眉毛は太い、目も超がつくほど釣り目で、顔は真っ赤。

「お母さん、罪を正直に告白してください!」

「ああ?」

 女性の声とは思えない野太い声に鉄平は思わずひぃと声をあげてしまった。陽はそれに臆することなく、さらに一歩前に出る。

「あたしのかわいい娘を誘拐しようとしたんだろ?何言ってやがる。」

 少女の母親は鼻であしらい、身を乗り出して、陽の顔面に自分の顔を近づける。その距離わずか1センチほど。

「誘拐ではありません。それはでっち上げです。」

 陽も負けず劣らず威勢を張る。鉄平はそれを見つつ、少女のほうへ見る。さぞかし面白おかしく心中で笑っていることだろうと思ったがそんなことはなかった。下を向いて黙っている。顔の下で笑っていると思ったらそんなこともなかった。暗い顔をしている。とても苦しそうである。

 少女の意外な表情に気付かない陽と母親は罪の擦り付け合いみたいになっている。

「あのぉ・・・・。」

 鉄平はおそるおそる手をあげ、罪の擦り付け合いに参加する。

「なんだよ?」

「割り込むな!」

 陽と母親に思いっきりにらまれる。鉄平は少し肩をすくめながら、作り笑いをする。こうでもしないと恐怖で押しつぶされそうになる。

「僕らの話くらい聞いてもいいかと思います。それに、お子さんの気持ちを考えて会話を進めるべきです。」

「はぁ?」

 自分でもよくわからないことは承知済みだ。しかし、これ以上陽たちに大声で会話されたらもっと困るのは鉄平のほうだ。

「この子の名前は何というのですか?」

「誘拐犯に教えるつもりはない!」

 母親が鉄平に覆いかぶさるようにみつめてくる。若干背を逸らしながら、会話を続ける。

「お名前は何ですか?」

「だから・・・・。」

「お名前は何ですか?」

「昭島由香良だ。」

 母親は根負けしたように言う。鉄平はニヤリと笑う。

「あなたのお名前は?」

「昭島裕子だ。」

「どこにお住まいですか?」

「ここらへんだ。」

「ありがとうございます。」

 鉄平は丁寧に頭を下げ、その裏で快哉を叫んだ。すぐさま陽のほうへと戻り、耳打ちする。

「いいか、この辺の事務所に行って戸籍を調べてくるからお前は適当に時間稼ぎしろ!」

「えっ?何?こせき?じむしょ?」

 さすが宇宙人全く地球の仕組みをわかっていない。しかし、鉄平が陽に説明しているそんな余地などもうない。

「とにかく時間稼ぎしとけ!」

 鉄平はあわてて、陽のそばから離れて全力疾走である。自信などなかったが、馬鹿が頭の知恵をしぼりにしぼった結果がこれである。とりあえず今は自分が決めた結果が成功することだけを願い前へ走るだけである。

 ここは鉄平の家の近所である。事務所の場所くらいわかっている。河川敷をまっすぐに走り、橋が見えてくる。その橋を右へ曲がると、事務所がある。

 鉄平は事務所へ飛び込むと、受付へ直行。

「昭島由香良、裕子という親子は戸籍に存在していますか?」

 バクバク音をならす心臓精一杯抑えつつ、さけぶ。

 係員は一瞬何かおぞましいものでもみたのかという顔をしていたが、数分後結果をもたらしてくれたのであった。

 

 一方で陽はもう限界に近かった。あの傲慢かつバカ女は陽の襟首をつかみ、威嚇という名の暴力を出す寸前に陥っていた。陽はそんな中少女の顔を見る。鉄平はとっくに気づいていた少女の表情に陽も気が付いた。変な正義感がはたらいた陽はバカ女の腕を掴んでかんだ。

「うっ!」

 女は腕を抑えつつ呻いた。そして、痛みのあまりつかんでいた手を放した。素早い身のこなしで陽は女から離れる。少女のほうへ近寄り、ハッとした。少女は泣いていた。それは先ほどのウソ泣きに近いものではない。本物の涙である。

「おい!」

 陽はその声に反応して顔をあげる。そこにはパカパカ鳴らしていた靴を片方履いていない、息を切らしていた鉄平であった。

「昭島由香良と昭島裕子は存在していた!でもその二人は親子じゃない!」

「どういうこと?」

「あん?」

 二人が驚いて目を丸くする。一人は完全なる演技だと思われるが。

「さっき事務所に行って確認していきたんだ。確かにその親子はいたんだけど、ここにいる昭島裕子は写真と一致しないんだ。」

 鉄平の言葉に裕子が一瞬ひるんだ。その隙に陽が裕子のみそ落ちにキックをくらわし、由香良の手を引っ張った。

「君はおそらく母親を人質にとられ、詐欺に加担してたんだろう?あの母親役は指名手配犯で詐欺師の片井久美。だから母親から逃げたかっただろ?」

 走りながら話す。鉄平はニヤリと笑って、近くにあった公衆電話に電話をかける。もちろん押す番号は110。後ろを振り返るともちろん裕子の姿が見える。これほど好都合なことはない。

 まぁどっかの宇宙人はまだ顔をポカンとしている。ほっとけばいい。鉄平はずっとうつうむいている少女をみながら、警察に片井がいることを伝えた。

「おい、あの女捕まえとけ。」

 陽に耳元で伝える。この意味は理解したらしく、うなづいた。陽は片井を羽交い絞めにして、あしをかけ、倒れさせた。町の周りの人々は驚いたが、警察が駆けつけたことにより人々は納得したようだった。

 もちろん片井は捕まり、少女は十歳以下なが重要参考人として連れていかれてしまった。陽と鉄平も警察の同行を陰ながら見ていた。理由は署までご同行が嫌だったからだ。


「結局、願いはかなえられなかったな。」

 帰り道の途中の河川敷で鉄平はぽつんと呟いた。その発言に陽は目を丸くした。

「何驚いてんの?」

「いや、だって、鉄平さ僕と組むのあんなに嫌そうだったからさ。」

「人の願い叶えねぇと戻れないんだろ。俺たち。」

「あっ、そうだった・・・。」

 ようやく気付いた陽に鉄平は少し呆れる。しかし、なぜか安堵していた。鉄平にとって空前絶後の出来事。結果がいい方向に向いてうれしかったのかもしれない。

「ありがとう。」

 鉄平は慌てふためいて、人の話も聞く余裕が無さそうな陽に聞こえない程度で言った。むしろ陽は鉄平のことも視界には入っていなかった。それを見て、鉄平は静かに陽の前から去った。

 陽が鉄平がいなくなったことに気が付いたのは、門限の四時を大幅に超えた午後六時であった。カラスが沈みゆく太陽の前を通過していく。家に戻り、父に謝罪した鉄平は窓からその景色を見ていたのだった。この街でこの景色を見るのは今日が最後だから。


 織姫たちが鉄平の家をすぐに突き止めたがもうその家には別の家族が住んでいた。しかし、陽へと書かれた手紙が一つポストの中に入っており、陽に手渡された。

   

     陽へ

この前はありがとう

お礼ちゃんと言えなかったからさ今言うよ

実は母さんの病気今いる街より大きな病院で治療することになったんだ

連絡もいれずごめんな

本当にありがとう

                          追山鉄平


 






みなさん、ご拝読ありがとうございました!

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