ケンカ道中追いかけられる
前回までのあらすじ
陽の後を追っておんぼろビルにやってきた鉄平。しかし、鉄平はなぜか陽と協力して人々の願いを叶えに行くはめに。心境が大きく変わった陽に鉄平はついていけるのか・・・・?
織姫はフゥと溜息をついた。
「まさか、陽が人をあだ名以外で呼ぶことがまた見られるなんて。」
感動と驚きが心の中で混じる。掃除でもしようかと、十二単の5枚まで脱いだ時、ガチャリとドアが開いた。
「よーす!織姫さんあれ?着替え中?」
ドアを開けたのは190センチという高慎重なうえにすらっとした体型で、輪郭は整い眉毛は細く長く、目はそれほど大きくないがとても丸い目という少年である。井川壮一だ。一五歳。彼が全国模試2位という実力者だが、とても軽い性格をしている。今ここで織姫の着替え姿を見ても、全く動じない不動心というか、変態心もとい下心がみえみえである。薄着一枚を着ていて助かったが、もし、織姫の裸体を見たら鼻血をだして、倒れているはずだ。こんな軽い性格なんだから。まぁそれを言ったら、否定しないのも彼ではあるが。
「ねぇ、織姫さん、あがってもいい?」
「アホか!おかしいだろ。目の前の若くてきれいで美人の織姫さんが着替えているのにここから上がるなんて破廉恥な。」
「織姫さんは俺の三〇〇倍生きているでしょうが・・・・あと、特別俺きゅんとする要素ないし。」
壮一はそう言って入ろうとする。お前の都合で上がるなと言いかけた時、誰かが壮一の肩をつかんだ。
「壮一、ダメ。織姫さんは若くてきれいで、美人なんだから。否定しちゃダメ。」
そう言って二人の会話に入ってきたのは、シロクマが描かれた水色Tシャツを着て、ベージュの半ズボンを履いている少年が壮一を止めていた。名は明織姫をとても信頼し、慕っている叶児である。壮一と組むのはこれが2回目ほどで、まだまだ慣れていない。
「それは、お前たちの星での話だろ。俺たち地球人ににとっちゃただの年寄りのババァだよ。まぁ、見た目は若いけど。知っているんだぞ。織姫さん必死で若作りしているの。」
「うるさぁ――――い!」
織姫は顔を真っ赤にして言う。図星なのだ。毎夜、パックや、化粧水を丁寧につけている。地球の環境は慣れない環境のため肌に悪い。まさか、壮一に見られていたとは。壮一はよくこのビルに泊まるため、深夜起きていてもおかしくない。
「織姫さん、否定しないね。アハハ。そんじゃ着替え待っとくわ。」
「コラァ!おちょくりに来ただけだな。この!壮一!」
壮一の肩をつかもうとしたが、壮一は頭を下げて、かわしてしまった。そして、そのままガチャンとドアを勢いよく閉めてしまった。本当にマイペースなやつだ。着替え終わったときには拳骨を一発してやろう。
「あっ!」
その声と同時に壮一がドアをもう一度開けた。織姫はとっさに体を隠す。壮一はニヤッとし、一息つく。
「陽は?」
「あっ、さっき人間と願い事探しに行った。」
「ワォ!陽初めてじゃん。だから、服もなくてあんなコスプレ格好なっているわけだが。あれ?人間って・・・・今日はまだ京香も章も来ていないじゃん。誰?」
「あ・・・・ああ・・・・うん・・・・。」
「なに?すごく気になるんですけど。何かあったの?」
「色々ね。あの二人が帰ってきたら、紹介するよ。いつになるかわからないけど・・・。」
「了解。じゃあ・・・・・あっ!」
ドアを閉めようとした壮一が動きを止める。
「どうした?」
「織姫さん、豆乳飲んだら?」
そう言って壮一は今度こそドアを閉めた。しかし、織姫は体をわなわなと震わせて、怒りをあらわにしていた。
ーそんなにあたしの胸は小さいか・・・・・―
一方、外では、明と壮一が会話していた。
「壮一、もうおちょくるのやめなよ。」
「え~何で?まっ、いいや。それより楽しみだなぁ。」
壮一は先ほどの下心みえみえとは違う意味でニヤッと頬をゆるめたのであった。
「早く歩けよ!あと、パカパカうるさい。」
「しょうがないだろ!家を慌てて飛び出したんだから。その辺考慮しろ。アホ!」
「アホ言うほうがアホなんだ!」
こんな街中で大声で小学校低学年の会話をしている少年が二人。四教科一八九点の少年もとい鉄平とよくわからない平安時代のコスプレ少年もとい叶児の陽である。
「鉄平はなんてのろまなんだ!あぁ!一度組みたいなんて僕が馬鹿だった!」
「俺もお前みたいな人のこと考えない奴となんか組みたくねぇよ。仕方ないことぐらいわかっているんだったら、さっさと見つけて帰りゃいいんだから。」
「それができていたらとっくに帰れているよ!君こそ文句ばかり言っているんじゃないか。もう少しちゃんと僕の説明聞けよ。」
「あんな説明わけがわからない!」
数刻前陽は鉄平に願い事をどうやって叶えるのかを教えていた。しかし、鉄平には全く理解できなかった。陽は大量に擬音を使うからである。
「僕は僕なりに最善の説明をしたんだ。君の理解力が問題なんだ!」
「そんなことねぇよ!」
―数刻前―
「よく聞け、大馬鹿鉄平。願玉は見えない。でも、ヒョイヒョイと指を動かせば、願玉はとれる。そして、その願玉を僕に見せてくれ。そのあと、規定にあっていたら、僕がパァーと解決しちゃうからさ。」
「『ヒョイヒョイ指を動かす』とはいったい何?」
「『ヒョイヒョイ』というのは、指をピンと伸ばして、クイッとするんだよ。」
「ピンと・・・・クイッと・・・・?」
「わからない?」
陽が顔をしかめながら聞いてくる。いかにもどうして今の説明理解できなかったの?と顔をに書いてある。
「わかりません。」
「じゃあ実践でやってみるしかないね。」
陽はそういうと、一気に駆けだした。鉄平は体力はあるほうだが、足はそれほど速くはないため、陽の背中を追うのに精一杯だった。
しかし、陽はこともあろうか隣で鉄平が息切れしているのにもかかわらず、足が遅いことについて鉄平に罵声を飛ばした。鉄平はカチンときて、同じく陽に思いっきり罵声をあびせた。そんな罵声を言いながら、現在に至るというわけだ。
鉄平の息はもう整っているが、陽の歩くスピードが速すぎてついていけない。そのうえ願玉か豚玉かなんだか知らないがその方法すら今の鉄平には理解できなかった。
「鉄平、願玉見えた?」
「見えるわけないだろ!」
「はぁ?」
陽が思わず上ずった声をあげる。鉄平はそんな陽を睨む。とり方をしっかり説明できないのになんでこんなに変な顔をされるのでろう。鉄平に睨まれた陽は負けじと、鉄平を鬼の形相で睨む。
それを道の真ん中でやったせいかクスクスと道行く人の笑い声が聞こえる。さすがにこれについては、二人は赤面して、速足で、路地裏へ行って、大声でケンカし始めた。
「まったく、君はなんて脳みそが空っぽなんだ!普通は目をこらしたら見えるんだ。見えるものも見えないとは何しているんだ君は!」
「そうしているのはお前だろ。ドアホ!」
路地裏でけんかしているとはいえ大声で言い合っているのである。大通りに筒抜けである。人々の困った顔が横目に確認できる。そんな時、一人の男が鉄平たちを指さしたのが見えた。すると、そのあとに来たのは・・・・警察であった。陽は、ずっと鉄平を睨んでいたため、気づいていないが、青い制服を着た男が近づいてくる。鉄平はとりあえず陽の腕をがっしりつかむ。
「ちょ、と、なっ、何するんだ!」
陽は鉄平の腕から解放されようとつかまれた腕を上下に揺らすが、鉄平の握力はこう見えて小学6年生にして、30以上ある。これは小学生の平均握力の10上である。そんな簡単に振り切られてたまるものか。ちらりと後ろを振り返る。警察は逃げる鉄平たちを追うように走り出す。鉄平も全速力で走り出す。陽はまだ状況が飲み込めないようで、まだ腕を上下させていた。
鉄平は、舌打ちをする。おそらくさっきの会話があまりにも現実離れしすぎていて、頭がおかしい人でも思われたのだろう。大声だったのも一つの原因だ。今までの自分の行為を後悔するのであった。
「放せよ。腕!」
「無理。それより、逃げるぞ。けんかは今はお預けだ!」
鉄平は言いたいことをぐっと唾とともに飲み込み、とりあえず走る。陽の体重が鉄平に乗る。あまり重くはないが、正直全速力で走るならしんどい。
路地裏を抜け、大通りにでる。まっすぐ行くと、踏切がある。運よく自分たちが行った瞬間電車が来るという都合のいい想像したが、そんなに現実は甘くなかった。鉄平が踏切をこえても電車は来なかった。
警察は何も言わず、無表情で追いかけてくる。
「あれ?僕たちって追いかけられている?」
やっと状況を理解した陽がケロッとした顔で言う。そんな表情に鉄平は腹が立ちながらも、パッと手を放した。陽は勢いよく地面と垂直から、だんだん横に倒れ、手から倒れたものの、軽い衝撃を受けた。そして、自ら立ち上がり、
「逃げよう!」
といった。
「あたりまえだ!」
二人は常に後ろの青ずくめの男たちを気にして、走る。とりあえず走る。歩道橋の階段を一段飛ばしで駆け上がり、一段飛ばしで駆け下りる。デパートに入り、ゲームセンターのゲームにまぎれたり、電化製品屋ではマッサージチェアに座ってやり過ごそうとしたりした。
しかし、まだ警察は鉄平たちを追ってくる。さすがにこんなにしてまで追ってくるなどおかしい。鉄平は息を切らせながら、陽を見る。が、そこには陽はいなかった。あまりにも必死に走りすぎて、他人を垣間見ていなかった。警察もおらず、鉄平はあたりをみまわず。今はデパートの婦人洋服のマネキンの後ろにいる。
頭が混乱して、心臓がバクバクする。一人でこんなことしていたら恥ずかしいし、小学生の少年が婦人洋服のところにいること自体がまずおかしい。
鉄平は抜き足差し足で、婦人洋服のマネキンから離れ、デパートの中を改めてみる。そういえば昔母と一緒にここへ来たことがあった。
鉄平はまだ本当に小さかったが、よく覚えている。こうやって一人で走り回って迷子放送を鳴らされて、母が泣きながら、鉄平に抱きついたっけ。鉄平は何で母が泣いているのか理解できなかった。今ならどうしてあんなに泣いていたのかわかるが。その時鉄平は自分が迷子だったことも知らなかった。
母が鉄平に抱き着いて力強く抱擁したときのあの温かみは今も胸の中に残っている。
思い出を振り返るため鉄平は、エスカレーターでゲームセンターに行く。迷子になって、母のもとに戻って、ゲームセンターでユーフォーキッチヤーした。母はとても上手で鉄平が欲しがっていた人形をサラッととってしまった。
そのユーフォーキャッチャーにふと足を止める。今鉄平の所持金は0円。プレイはできないが見ているだけでもワクワクする。思い出がよみがえる。
ゲームセンターの雑音が響く中プリクラの前を通ると、見たことあるような顔をいや、さっきまで一緒にいた平安時代のコスプレ君がいた。隣には大声をあげて、目をさんざんこすって泣いている少女がいる。それを陽が必死にあやしている。しかし、全くもって効果がないのかさらに少女の鳴き声は大きくなるばかりである。ただし、ゲームセンターの雑音がひどいので、近づかないかぎり大きく聞こえないどころか、その鳴き声さえ聞こえない。
陽はこちらに気付いたようで、助けを求める目を向ける。半分涙目である。無視できないほどつぶらな瞳である。先ほどの憎たらしいものをみるような目つきとうってかわってである。鉄平は目線を逸らしながら一つ溜息をつく。まったく、面倒なことに巻き込まれた。
「鉄平!助けて!」
少女の鳴き声と同じくらいの大声で鉄平の耳元で助けを求めてくる。
「うっ・・・・。」
陽は身を乗り出して、鉄平に来る。体を若干後ろに逸らしながら言葉に詰まる。陽の表情は、潤んだ瞳が光反射してまぶしい。神々しい。神からのお告げのようである。
「鉄平・・・・・お願い!僕この星の人のことわからないから・・・・。」
「子供のあやし方くらいできるだろ。俺、一人っ子だし、いとこもいないし、まず親戚に一人もあったことないから子供おろか人の世話めちゃくちゃ苦手なんだ。お前確か弟と妹いるって言ったよな。」
「言ったさ。でも僕の妹や弟は頭の出来が違う!すごく賢くてたぶんお世話とかいらないくらいしっかりしているんだ。だから、僕は小さい子のあやし方は知らないんだ!鉄平こそ学校の勉強とかで習ったりしないの?」
「まだだよ。実習は9月ごろなんだ!」
「でも、どうにかしてよ!」
「そんな簡単にいかねぇよ。」
またしょうもない口喧嘩をしていると、青ずくめの人が鉄平たちを凝視して指をさしている。おそらく鉄平たちだと勘づいたのであろう。また鉄平は陽の腕をつかんで、引っ張って、行こうとするが、陽はその場で力いっぱい踏み込んで動かなかった。
「あの子!」
陽はつかまれていないもう一方の手で泣いている少女を指をさす。
「置いていけないよ。一緒に連れて行ってあげよう。」
「はぁ?」
鉄平は思わず裏返った声を出す。何考えているんだ?鉄平は呆れて溜息をつく。確かに泣いている子を放っていくことはよくない。しかし、状況が状況だ。今は警察に追われている。そんな状況でどうみても足手まといにしかならなさそうな少女を一緒に連れ出しても利点はない。それにもしかしたら親が来て、そのまま少女と帰るかもしれない。いずれにせよ陽の提案は却下である。
「鉄平!」
陽は鉄平に必死で訴えてくる。首を振って自分はここから動かないということを示す。鉄平は唇をかんで、叫んだ。
「10秒であの子を連れてこい!」
「鉄平・・・・ありがとう!」
陽は少女を担いで、やってくる。警察は鉄平たち方向へ近づいてきていた。鉄平と陽は顔を見合わせ、頷いた。この時二人とも同じことを思っていた。どんなことも意見が合わない二人だったが、なぜかこの時は以心伝心。二人は二手に走り出した。あとで、デパートの出口に合流すると心に決めて。
デパートの出入り口についたとき、人々がひしめきあうなかで平安時代のコスプレはとても目だった。陽の小脇には泣きつかれて眠っている少女が抱えられていた。
「鉄平!」
陽はこちらに気づいて近づいてくる。鉄平も頷いて、陽に近づく。
人々の服装は主にベージュや紺色を基調としているため、青の服は目立つがそんな色はなかった。二人は安堵の息を吐きながら、困惑の困惑の息を吐いた。
「これからどうする?」
「この子。」
陽が眠っている少女の頭をやさしくさする。前髪がわずかに揺れる。
「その子がどうしたんだよ?何か顔についているのか?」
「鉄平は本当に察しが悪い。この子を願いを叶えてあげるのさ。鉄平願玉見えない?」
鉄平は目を凝らして少女を見る。しかし、何も見えない。
「やっぱり無理か・・・・鉄平じゃ・・・・。」
陽の一言が鉄平の胸を貫く。まるでガラスの破片に刺されたように痛い。
陽はあきらめの溜息をつく。鉄平は悔しさのあまり唇をかみ、そこから血の味がする。こぶしを強くにぎる。自分は人ひとりも救えず、目の前の人間に諦めを言わす根性なしなのか。目をぎゅっと瞑り、体をわなわなとふるわす。
ゆっくりと目を開けると、うすっすらだが白い楕円形のものが見える。形が歪で、今まで見たことないため、鉄平は驚いて叫ぼうとしたところを慌てて口元をおさえる。
ふと陽を見ると、陽はとても驚いた表情をしていた。おそらくまさかこんな短時間で見えるようになるなんて思ってもいなかった。そう言いたいような顔をしている。しかし、すぐ陽は口パクでとれと言った。
鉄平はフゥと一息つく。いまだにぼんやりだが、やってみるしかない。陽の説明はとてもじゃないけど説明の部類ではなかったが、動きの擬音は教えてくれた。それをたよりにやるしかない。すっからかんの脳みそから引き絞れるだけ引き絞り、想像する。「ヒョイヒョイ」を。
右手を手のひらに向け、中指、人差し指を伸ばし、二本くっつけ、クモがクモの巣から獲物をとるようなイメージで交互に中指、人差し指を引き寄せるに動かす。
願玉は少しずつ近づいてくる。鉄平の胸あたりまできて、そおっと包むようにすくうように両手のうえに願玉をのせた。それを陽は慣れた手つきで人差し指一本を願玉をさしたあと自分を指し示す。すると、願玉はすうっと陽に近づき、光り輝き始めた。陽は静かに目を瞑った。
しばらくたった後、陽は徐に目を開け、鉄平に顔を向ける。
「規定に反していないよ。ただ・・・・とても難しいかな。とても・・・。」
陽の表情はとても悲しそうであった。鉄平はよくわからないがごくりと唾を飲み込む。
「どんな願いなんだ?」
「・・・・・・・・・・・母親から逃げたい。」
「えっ・・・・。」
鉄平は陽ぽつりと放った一言に耳を疑った。あの時ゲームセンターの雑音が邪魔していたのは迷子の少女の鳴き声だと思った。迷子の。では、どうして少女は泣いていたんだ。鉄平は少女が泣いている部分しか知らなが、もしかしたら陽は知っているかもしれない。
「おい、この子が泣く前の状況知っているか?それとも見ていないか?」
「えっと・・・僕がこの子を見つけたときこの子はすでに泣いていたよ。」
「そうか・・・・・。」
ある程度予想はしていたが、やはり溜息をついてしまう。
「でも・・・・女の人が怒鳴る声が聞こえたんだよね。」
「えっ?あのうるさい雑音の中で!どんな内容だった?」
「関係ないと思うんだけど・・・・えっと・・・確か『勉強もできないくせに甘えるのだけは超一流ね。』とか『あなたなんか生まなければよかった』とかね。とりあえずもう暴言のあらしで思わずこのお母さん頭おかしいのかななんて思っちゃった。」
「その母親は子供ことどう思っているんだろう?それで、その母親はこの子をおいてどこかに行ってしまったと。」
「うん。立ち去るときは何も言わなかったと思うよ。そこから僕が見つけたんだし。既に泣いていたから。」
「お前泣き声がいつから始まったかわかるか?正確じゃなくてもいい。ただお前がその母親の罵声を聞いてからすぐ泣き始めたとかそういう感じでもいい、何かないか?」
「えっと・・・・思わずその声に聞き入ってしまっただけで後はふらふらとその辺を歩いていて、神経手中させていないというか、なんというか・・・・まぁそれで見つけたんだこの子。」
陽はまたそっと少女の頭をなでる。その時の表情といったらとても愛らしくて、まるで天使のようだ。
「ん~。困ったなぁ・・・・。」
鉄平は頭をかきむしる。陽は理解できないようで目をぱちくりさせる。
「何が困ったんだい?さっさとこの子を母親がから逃がしてあげて帰ろうよ。」
「いや、子供っていうのは衝動的な願いが多いんだ。俺もそういうの多いから。すぐ何かに影響されて願っちゃうものだから。」
「それは鉄平が大馬鹿だから・・・・。」
「違う!」
陽の胡散臭そうな目を真に受けながら大声で否定する。人ごみの中なので二人の間でしか聞こえていないが。
「いいか、例えばお前は野球選手が特大ホームランを打ったテレビを見ていたとしよう。自分もあんな風に打ってみたい。野球をやりたい。そして、野球選手になって、特大ホームランを打ちたいとか思わないか?」
「やきゅう?ほうむらん?何それ?」
「地球のスポーツ。知らないのか?」
陽は首を縦に振り、よくわからないという風に首をかしげる。
「説明するの難しいなぁ・・・・テレビ知ってる?」
「うん。あの箱みたいなやつに人が映っているやつでしょ。どういう仕組みかは知らないけど。」
「それ。見たことあるよな?例えばさそのテレビでおいしそうなご飯がありました食べたくないか?」
「僕らの星の人間はご飯食べないから、おいしそうなんて感情ないよ。」
「うう・・・・・。」
鉄平は思わず肩を落とす。まさかここまで陽に対して説明するのが難しいとは思わなかった。顔を空へ向けると、まぶしい太陽が少し西側にいっている。それを見て鉄平はハッとした。
「おい、今何時だ?」
「えっと・・・2時45分だけど・・・?」
陽はデパートの中の時計を見て言う。
「あと1時間15分で何とかなるのかこの問題は・・・・。」
「そういえば門限4時だったねぇ~。」
陽はのんきに言う。鉄平は少しカチンとくる。
「何が『門限は4時だったねぇ~』だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
鉄平は陽の両肩をつかんで思いっきり左右に揺らす。ぐわんぐわん陽が揺れる。しかし鉄平にとってそんなもの知ったものか。おかまいなしに陽をさらに強く揺らす。
「てっ、てっぺ、てっぺ、てっぺいぃぃぃぃぃぃ、やめてぇぇぇ。」
陽の必死の訴えに鉄平もハッとして、パッと手を放す。それと同時に陽が心臓を抑えながら荒い息をはいている。すると、
「うっ・・・・・。」
それは、二人の声ではなかった。少女のかわいらしい声であった。二人は思わずそちらへ視線をうつす。少女は目をこすりながら、あくびをする。
「えっ・・・・?」
少女は自分が浮いていることに驚いたらしい。手足をばたつかせる。陽はそれに気づいて慌てて少女を地面へおろす。少女は自分のまわりにいる二人の男を怖がっているのか体中を震わせ、その場から一歩動こうとはしない。
「大丈夫。僕らは敵じゃないよ。君の願いを叶えるために来たんだ。落ち着いて。」
「頭おかしい人がいる!」
少女は陽の言葉に呆れたのか眉間にしわを寄せて、睨むように陽を見つめる。
鉄平からしてみれば少女の反応は当然である。当の本人はまさかの反応だったらしく目をきょろきょろ動かして、手をグバタバタと動かしている。
「ごめんねぇ―、この人頭おかしいんだ。君、お母さんどうしたの?」
鉄平はしゃがんで少女の目線と同じくらいにする。そして、陽を一瞬にらむと笑顔で少女を見る。
「てっぺ・・・・。」
「どうした?」
反論しようとした陽の言葉が詰まる。当然のごとく反論すると思っていた鉄平は意外だっため思わず聞いてしまう。すると、陽は、
「ああっ!」
何かを思い出したように叫んだ。鉄平はそれを完全に無視して、少女に気にしなくていいよと言う。
「お母さん、いないね。」
「ママは・・・・来ないよ。絶対に。捨てられた。私・・・・・。」
「えっ・・・・・?」
鉄平は耳を疑った。見た目は5歳時あたりなのにとても大人びた発言に驚いたのと、母親は来ないという。もはや母親から愛されることをあきらめた表情に一番鳥肌が立った。
「嘘・・・・だよね?」
「本当だよ。ママは、私を捨てるためにここに連れてきたんだから!」
鉄平は何も言えなかった。本当にそうなのか?母親が子供を捨てる?鉄平にはありえない話だった。
「鉄平、思い出した!」
「何がだよ!」
この時期に全く不謹慎な声をあげたのは平安時代のコスプレ少年であった。
「この子、嘘ついているよ。お母さんには捨てられていないよ。むしろ今から悪いことしようとしているよ。でも、その子はそんなこと望んでいないよ。」
「どういうことだ?」
ふと、少女の顔を見ると、苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「あの音のうるさい場所で、僕はお母さんの罵声に耳を傾けたけどその辺をふらついていた時の母親の罵声は印象に残るのだけれど、普通の会話は耳に入ってこなかったんだよねぇ~。でも、思い出したよ!会話の一部始終を!」
陽は興奮したように言うけれども、鉄平にしてみれば、そんなこと思い出せるほうに感心していた。しかし、鉄平はいち早く陽言う謎を聞きたかったため、なぞ解明に対してニンマリと笑った。
「教えてくれよ。その悪いことの内容を!」
次回予告
果たして少女の目的とは?そして、本当の少女の願いとは?さらに陽のボケがさく裂!事態は大大大ピンチに陥る。次回をお楽しみに!
―あなたの願いは羽を伸ばして天に届く―




