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ルルーチィの漂流生活・勝負の決着

シリアスは筆が進みにくいですね。


 「ひゃ! ヒャアヤヤア!! ハハハ…… シャー! ハひシャヤーっっっ!」


 ルルーチィの咆哮。


 その咆哮につられる者はなし。

 狂喜の咆哮に呼応して、咆哮する者はなし。


「ッ――ぉ!?」


 唸り声の魔物リーダー。咆哮は疑問形。


「ひひひ、へははあ! ヒャヒャヒャ! へあーっ?」


 月光の光を浴び、異形の姿のルルーチィが深遠の存在に感じられる。

 黒く蒼い。

 罪ある闇、そのもの?

 それは、ヤマシク、そして、オゾマシイ。


「なあ? もっと、やらない、カ?」


 ルルーチィの右半面は異形の仮面に包まれていたが、その台詞を発したとき、その仮面の口元はパックリと裂け、きちんとした発声をした。ただし、パックリと避けた口元からは赤色に発光する血みたいな液体をヨダレがごとく滴らせてだった。

 

「……」


 魔物リーダー反応できない。だが、肩を揺すり上げ、下半身もリズムを刻み始める。


「オーケー」


 魔物は答えた。いや魔物が答えた!

 これは、歴史の記録に存在しないことだった。

 けれど、いまこの状況で当事者にとって、ソレはそれはどーでもいいことだった。


「シャシシャーーーー!!」

「ギオゴガアアア!!!」


 突進したのは魔物リーダーのほう!

 体当たり!

 タックルで圧倒するつもり。

 それは正解だ。だってウエイト差は歴然。


「シッ!」


 魔法壁を展開して受け止めるも、魔法力のキャパシティ、それ以上の物理慣性は捻じ曲げられない。

 宙に弾き飛ばされるルルーチィの身体。

 

「ガッ!」


 宙に浮かんだルルーチィ目掛けて、魔物リーダー、魔法力全開で追撃! 

 ジャンプで全力の体当たり攻撃だ。

 かつて、この攻撃で地表に落下してきた星の欠片を打ち砕いたこともある自慢の技だった。


「ぐガガアア!」魔物リーダーの咆哮!


 浮かんだ目標に避けるすべはなし。身動きはとれない。


 だが、それは常人、通常での話しだ。


 だって、ルルーチィには、しっぽがあった。


『ヒュン!』と、しなるしっぽ。


 宙に浮かんだ状態にも関わらず、ルルーチィ本体を移動させる、しっぽ。


「!?」魔物リーダーの驚愕が、コチラにも伝わってくるようだった。


 攻撃を避けたルルーチィ。


 しかも、また、しっぽが『ヒュン!』って!


 しっぽに導かれ、魔物リーダーの後方へ回り込む。

 これは空中での出来事だ。


「どこ、いくんなああああ!?」


 ルルーチィ、成層圏を突破しそうな勢いでジャンプした魔物リーダーを後方からツメでワシ掴み!

 しっぽの力でブレーキかけて停止させ、しかも相手を地面に向かって叩き落す。


『ドオオオオオン!』


 砂浜にクレーターが出来た。


「キサーン! 逃げれると思うなよ? こんクソが! ワーレェ?」


 宙に浮かぶルルーチィの台詞。


「……」


 浮かんでいる。身体がしっぽに支えられている。

 

「お? おぉ? まぁ、よっしゃ、ヨッシャ」


 空飛んどいて、その程度のリアクションなのは、まぁ、状況のせいだ。

 戦闘に酔っている。闘争本能に酔っていた。


「ヒャシャシャシャー!」


 ツメを振り上げ、急降下攻撃を開始。

 目標の魔物リーダー、クレーターの底で立ち上がる。

 やはりこの程度ではダメージは負わない様子。

 そして、ルルーチィの攻撃を迎え撃つ、が?


「シャー!」

「オオオオーオ!」


 ルルーチィの攻撃はかわされ、地面に自爆。

 文字通り、砂つぶての砂煙が舞い上がり、クレーターをさらに巨大にした。


『ドオオオン!』と地鳴りというより地震に近い衝撃。地面が揺れた。


 かわした魔物リーダーは砂つぶてを浴びながら『?』の驚愕。

 自分の行動に自分で驚いているのだ。

 迎え撃つはずの身体が、攻撃を受ける瞬間、咄嗟に避けたのだった。

 そんな行動パターンなんて一度も経験したことがないことだった。

 理由が分からず、困惑している。


「逃げてんじゃネー!!」


 砂煙の中、立ち上がるルルーチィの姿。


 だが、魔物リーダーその台詞に、さらに混迷。

 そんな行動原理は魔物に存在しないはずだった。


「ゴオオオオオッ!」と咆哮した。


 それが人で言うところの、弱気になった自分の気合の入れ直しであるが、魔物の本人には理由も分からないことだったろう。


「シャシャシャ! わかる。わかるぞ。勝負に負けたことがない。勝負とは勝の意味としか知らない。そんな戦いの経歴を経てきたのに、負の部分を初めて感じたんだよな?」

「ゴオオっ?」

「人ならソコからさらに強くなれるやも知れんが。哀れよな。所詮、貴様は魔物。もう弱い。貴様はもう弱いのさ。シャシャシャ、哀れよなぁ! シャシャシャー」

「ゴガガガガアガ!!!」


 咆哮したにも関わらず、突進したのはルルーチィのほう。


 天にかざしたそのツメ。青紫色に透き通って見える。魔力が上がっている。


 振り下ろされる大鎌のような三本のツメ。


 受け止めた魔物リーダーの左腕を切り裂いた。やはり攻撃力が上がっている。


 切断されて地面にボトリと落下する左腕。


 なくなった自身の腕を見つめて『!?』事態に戸惑っている。


 そしてソレを拾おうとして屈んだところをルルーチィの右ひざ蹴りが炸裂。

 弾き跳ばされる。


「拾わせないよ? それに、多分、もうくっ付かないよ? シャシャシャー」


 煙が立ち上るソレにトドメの一撃。三本のツメを突き立てる。ソレは弾けて消えてしまった。


「はい、残念でしたーぁ。シャシャシャ」


 勝負は決した。


「ひ、ひゃああああー」


 魔物リーダー、背を向け、ルルーチィから逃げ出す。

 それは普通ならあり得ないこと。

 だが、今のルルーチィは普通ではない。


「舐めプで出張って、結局その様かよ!? シャシャシャシャーぁ!」


 クレーターをジャンプで這い上がる魔物リーダー。恥もクソもない。というより、自分が今なにをしているのか分かっていない。

 規格外の存在に対し、規格外の対応をしている感覚にすぎない。


「……」


 周辺に陣取る一般の魔物達に動きはない。リーダーが戦いを開始した時点で傍観者である。

 無様な醜態を晒すリーダーに対しても特別の感情は存在しなかった。

 だから、絶体絶命のリーダーを目の当たりにしても助けようという反応は存在しなかった。

 ただ、あるがままを見ているだけである。

 それこそが魔物であるがゆえに。


「シャシャシャーシャシャー!」


 最後だ。


 逃げる魔物リーダーの背中に、ルルーチィの特大魔法のツメが炸裂。


『ガゴオーン!!』大爆発。


 島全体を覆い尽くすばかりの黒い煙を爆散させて、魔物リーダーは破裂した。


 それが合図で、島を乗っ取っていた魔物の軍勢が退散を始める。

 上陸したときの赤紫色にランランと輝いていた瞳はピンク色になっている。

 それは平静状態。

 次のリーダーを決定するまでは、お互いがけん制し合う立場。

 今は様子見である。

 とりあえず、いつ始まるかもわからないリーダー決定戦の乱戦虐殺戦争に巻き込まれないよう、撤収するのみだ。


『ギャシャガシャシャシャー!!!』


 勝どきの咆哮はルルーチィ。

 彼女がこの島の支配者であることが決定。

 すべてが彼女の自由である。


 そう、彼女がこの地の支配者であり、憲法も法律もすら、執政の権利とそれに伴う判断と決断、も含め、彼女は『実行』できることを許容された存在、しかもそれは彼女自身の決定によってである。

 『責任』? それは彼女自身がちょっと心を痛めれば許されることなのである。

 そのことは彼女自身よりも、他のモブである雑魚がより認識して、彼女を励まさなければならない立場なのだ。


 そして、この世界(無人島)は支配された。

 圧倒的な能力を持つ、ルルーチィによって。


 その後、のことは、……次回、決着。

次回で決着させるつもりです。

でも、あてにはなりません。

まぁ、いつものことです。

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