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ルルーチィの漂流生活・絶望への前奏曲・第二!?

てへへ?


「魔物だっ!! コッチくるっ!! いっぱい、いる!! みんなっ! 逃げてーぇ!!」


 ギグくんの絶叫!


 海岸線を見渡していたギグくんが発見したのは魔物の集団。沖合いからコチラに向かってくる。

 浜辺に打ち揚げられたクジラたちは、その魔物たちから逃げ出し、行き場をなくして打ち揚げられたようだった。

 

「ギグ! 来い!!」

 

 お父さんのギイさん、その絶叫を聞いて大慌てでギグくんに向かって駆け出す。


「ふぇ、お、お兄ちゃん、お父さーん!」


 置いてけぼりになった弟のギコくんまで一緒に駆け出しそうになった。


「ダメ! ギコくんは隠れて!!」


 ルルーチィがギコくんを制止。


「だって、お兄ちゃんと、ふぇぇ、お父さんが――」

「分かってる! 二人はお姉ちゃんにまかせて!!」

「でも、でも――」

「大丈夫! 私を信じて? 二人は私が守る。だからギコくんは隠れてて?」

「だ、だってぇー、ふぇ、ふぇ、ふぇぇ……」

「終わったら、みんなでご飯、食べよ? おいしいのイッパイあるしね? そしていつもみたいにみんなで一緒に寝るんだよ?」

「ヒぃ、っく……」

「待ってて? すぐ終わらせるから。ご飯の用意するからね」

「約束……」

「うん。するよ?」

「一緒のお布団で寝てもいい?」

「いいよ?」

「わかった」

「森の中に隠れてて? ギコくん得意でしょ?」

「うん! まかせて!」

「よーし! じゃあ、かくれんぼ、スタート!!」


 その合図で駆け出すギコくん。

 でも、途中で立ち止まり、振り返る。


「……」


 そしてなにも言わず、また駆け出していった。


(大丈夫っぽい。意外とたくましいじゃん。あの子なら、一人でも生きていけるよ――って、あははwww)


 最悪の事態なら、そうなるかもしれない。けど、考えたくはなかった。でも、思ってはいる、その状況。そしてあの子なら大丈夫な予感もしている。


(さて、やるしかないけど?)


 魔物にセオリーは通じない。

 相手を潰すか潰されるかのデスマッチ。

 そして相手の力量も千差万別。

 とはいえ、低レベルな魔物なら楽勝ということもない。

 低レベルな手のひらサイズの弱い魔物の集団に襲われ、滅ぼされた国もあるほどだ。もっともその時の魔物の数は計測不能のレベル、空が見えなくなるほどの数だったそうだ。でも、それを詳しく知る者はいない。だって、みんな死んだから。どんなだったかは見当するしかない。


(魔物と戦えるの私だけだもん)


 魔力が使えるのは女だけ。

 その魔力がなくては魔物と戦うのは困難を極める。

 魔力のチカラは防御の盾と同時に、魔物に対しての唯一の攻撃手段。

 それを持たない男は肉体的に優れていたとしても攻撃手段を持たないデクノ棒。

 ただただヤラレ役で、HPを削られるのみの存在にすぎない。


「二人とも、はやく! こっちへ逃げて!」


 ギグくんに合流したギイさん、その二人がこちらに逃げ戻ってくる。


「ルルーチィさん!」

「うん! 後はまかせて!!」


 とルルーチィ。


「駄目だっ!!」

「ダメです!!」


 二人に拒絶される。


「大丈夫だよ。私、こう見えて、実は戦闘訓練を受けた戦士です。魔物程度に引けは取らないから」

「駄目だ!」

「無理です。逃げましょう!!」

「落ち着いて? 伝えてなかったけど、私、戦士だから。訓練受けてるから、戦えるんだから!」

「なら! 聞こう。どんなレベルだ? どんなレベルなら魔物、数十体と戦える?」

「ルルーチィさん、魔物はこの浜に打ち揚げられたクジラ以上の数がいました! もう、すぐ、ソコです!!!」

「……そ、それは――」


 無理だ。

 ルルーチィの想定では魔物五体、多くて十体の見当だった。

 それでも、弱いヤツなら二十体はイケルとふんでいた。

 それらを叩きのめし、自分の株を上げれるかな、なんて妄想していた。

 だが、それ以上の数となると、覚悟がいる。

 

(何人か死ぬ……)


 ルルーチィはギイさんとギグくんと一緒に逃げ出してはいるが、今後のことも計算していた。


(魔物はすでにコチラを認識、数、百と設定、リーダーを狩れる可能性一パーセント。最悪の状況は全滅。次点、三名生き残り(ギイ・ギグ・ギコ)、可能性、一パーセント、変わらず。次点、二名生き残り(ギグ・ギコ)、可能性、四パーセント。次点、一名生き残り(ギコ)、可能性、十六パーセント)

 

 全然、足りない。

 分かってるけど、仕方ない。


「すみません」

「ん?」

「えっ?」

「逃げ切れません」

「おい!」

「希望をもって!!」

「わかってます。不謹慎なことは。でも、状況からしてこの島は魔物に支配されます。隠れるのは無理です」

「諦めるのか!?」

「ルルーチィさん!」

「諦めませんよ? だって、私、プロですし。なら、この状況の最善策も分かってますけど?」


「いけるのか!」ギイさん。

「いけません!」とルルーチィ。

「どういう?」とギグくん。


「だって、状況はすでに詰んでいます。でも、ギコくん一人なら、助けてあげることができるかもしれません。そのために、二人とも私と共に死んでくれますか?」


 沈黙する二人。当然だ。愛する家族のためとはいえ、いきなりそんな決断なんて、用意された脚本がなければ即断なんてできるわけがない。でも!


「そんなの、わからん。だが、希望があるならヤルぜ?」


 ギイさんの言葉。照れ隠し半分で死ぬ覚悟。ルルーチィにも伝わった。


「死にたくないよ。でも、ルルーチィさんが一緒ならボクも……」


 ギグくんの言葉。これはちょっとイタイ。でも、覚悟は感じた。


「戦います。勝利の可能性は……言いません。けど、希望を持ってください。さっきと矛盾してますけど、希望がなくちゃ可能性は確実にゼロなんですから。はは……」


「ん。でも、ギグも、なんとか?」

「検討しました。ですが、結局ギコくんもろとも、です」


「お父さん、僕はもう大人ですよ? 違いますか?」

「う、む……」


 ギグくん、背伸び。

 でも自分のためじゃなくてみんなのための、だ。


「死ぬ覚悟は出来ましたかね? でも、死んじゃだめですよ? あくまで覚悟の話しなんですから」

「ああ」

「はい」

「死中に活を見つけてください。でも戦う必要はありません。何体かの魔物を引き付けてくれるだけで勝利の可能性が跳ね上がります。攻撃の手段は私だけ。でも、囲まれたらソコでお終い。二人にはそれを避けるオトリになってもらいたいんです」

「なるほどな。理屈は分かる」

「でも、僕らが魔物を引き付けても攻撃されたら……」


「バッキャロー! そこが正念場だろうが。ルルーチィが魔物をやっつけて、助けに来てくれるまで、ジッと我慢だ!」

「――はい!」


 彼らは獣人だ。人間よりも丈夫だ。でも、魔物相手ではたいした違いはないのが実情。


「ゴメンね、ギグくん。こんな消耗戦しか、ないんだ。ホントにゴメン」

「いえ、頑張ります」

(ダメだ。この子、経験がなさずぎる)


 軽すぎる。もしかしたらケンカもしたことないかもしれない。


「出来るだけ逃げ回ってください。そして、できれば、あまり私から遠くない距離に」

「はい、絶対に離れません」

「ば、バカヤロー! ルルーチィの近くにいたらオトリの意味がねーだろ! お前は、できるだけ俺のソバにいろ」


 ギイさんと一緒だとオトリ効果半減だが、仕方なそう。だってギグくんだけだと即退場っぽい。


(与えられたコマで最大限の効率、それが通じなかったらそれまででしかない。この世の原理には立ち向かえない……)


「終わったら、ウマイ飯食いましょう。焼肉ですか? 素材、いーっぱいありますね」

「おう! 忘れるとこだった。久々の肉だぜぇーっ」

「肉用のタレのブレンド、考えたことなかったです。どうしよう?」


『はははw』


 戦いが終わった後で焼肉。

 みんなで約束。

 建ちました。


 死亡フラグ。


 そして戦いの幕が斬って落とされる。


 

ルルーチィの設定は次回に延期されました。お楽しみにー

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