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ルルーチィの漂流生活・おいしい夕食


 ルルーチィとギコくんが遊び終えて家に戻ると、そこで待ってたギグくんとギイさん二人が誇らしげに抱えてたソレ。自慢げに見せ付けてくる。


「なに、ソレ?」と答えるしかない。困惑のルルーチィ。


 二人で担ぎ上げている大きな石、というか岩。


(なんでそんなモン、誇らしそうに?)


 確かに、見た目はただの岩だけど、ソレは……


「あー!」と反応したのはギコくん。


「ソレ! 今日、食べるの!?」

「?」


「あぁ、祝い事のあったとき用にとっておいたが、今日、お前らがルルーチィで男になった記念にパーティだ!」とギイさん。

「やったー!」となにも知らず喜ぶ幼いギコくん。

「ブーッ!」と吹き出すルルーチィ。

「……」無言で顔真っ赤のギグくん。


「グぅぬ……」


 なんか、いろいろ、アレである。

 ルルーチィにしてみれば、言いたいことがイロイロ、というか、ブチ切れたいとこではあるが、彼らは命の恩人なのだ。ここは、ココは、黙って成り行きに身を任せるしかない状況。彼女は大人だし、エリートだった。だから我慢した。


 そして、しばらく……

 夕闇に染まった浜辺にて……


「火、強くない?」

「これだけ、デカけりゃ、弱いくらいだ」

「まだ、食べれない?」


 あの岩の調理様子。

 浜辺で穴を掘ってたくさんの薪を焚く、その上に乗せた岩。

 さらに追撃、別の場所で爆ぜさせた燃え盛る薪を岩の上に乗せる。


(岩の地獄焼き?)


 岩を焼いて、それからどうするというのか? 見当がつかない。

 

「これ、焼いても、食べれなさそう、ですけど?」


 ジャマはしたくなかったが、さすがにツッコミたくなったルルーチィ。


「直接は食わねーよ。ま、見てろって」


 とギイさんは言うし、ギコくんは必死に火をフゥフゥあおってるし、ギグくんは冷静マイペース、彼特製のハーブ塩汁の用意をしている。しかも、数種あるソレを、嗅ぎ分けながらブレンドしている。そんなわけだから、ソースにいたっては完璧の結果が分かっている。


(でも、岩は食えねーよ?)


 ルルーチィの正直な感想。


「ん! 頃合いだ! ギグ!?」

「はい! 準備OKです!」


 なにか異変。


「お姉ちゃん! コッチ!」

「え!?」


 ギコくんに手を引っ張られ、焚き火から距離をとらされる。


「しゃがんで!」

「え? はい!」


 言う通りにする。

 だって、状況がまったく掴めない。


 でも、それは正解だった。


『ドガァーン!!』と破裂音!


「な!?」


 慌てて、周囲を確認。


 爆心地にいたはずのギイさんとギグくんは無事の様子。

 

「な、なにコレ!?」困惑。


「できた!?」とギコくん、嬉しそう。爆心地に一直線に向かう。


「え? 待って! ん! これは……」驚愕のルルーチィ。


 そこに広がる光景。

 爆ぜた岩の肉汁でびちゃびちゃになってるギイさんとギグくん。

 そして、その中央にあるソレは!


「これって! 貝だったの!?」


 上下にパックリと裂けた岩。

 その真ん中に、乳白色のなめかましい色艶した貝柱と大きな身。

 貝ガラの内側で、沸々、ジュブジュブ溢れているその肉汁。

 躊躇なく、その中に投入されるギグくんのブレンド塩汁!

 シュワワーァっと音をたてたあと、周辺に漂うこの香気よ!


「これはデケー貝柱が主役だからな。本体はギグのソースに混ぜ込むぜ?」


 貝柱を避けながらギグくんのソースをナイフで混ぜ込むギイさん。

 それは乱暴な調理だけど、この状況では正解。

 調味料が基本塩しかない状況ならこれは正解である。

 これならおいしい出汁の味がソースになる。


「さて、完成だ。ルルーチィ、いや、お嬢様? 巨大貝の貝柱ステーキでございます、ってな?」


 見事なものだ。

 パックリ開かれた貝の上には綺麗な乳白色の巨大な貝柱ステーキが乗っかっている。

 そしてグロテスクと紙一重、オジヤみたいな茶色いソースの色あい。でも、コレは、いまいち。


「かしら?」と、ノリに合わせてかしこまるルルーチィ。

「おおーっと! しばし……」


 ギイさん、乳白色の貝柱の上に手のひらかざす、緑と黄色のハーブ粉末を振りかけた。

 しかも、魔法入り? キラキラ輝いてる。


「わあぁ……」


「お取り分け致します。姫……」


 わざとらしいけど、憎らしい演出。

 これは、もはや上等のステーキだ。

 

 そして切り分けられた貝柱の肉片、葉っぱの上でキラキラしてる。


「どうぞ?」


「ええ、いただくわ」


 気取ってみてもしょせんは無人島なのです。

 それに、一流レストランなんてみんな知らない世界のことだし。

 でも、ここで起こったことは事実だった。


「がぎゃ! うめー!!」と、下品にルルーチィ。


 絶品。

 感動の言葉はもはや悲鳴。

 プリプリでニチニチでファファだった。

 口内に溢れる旨味なんて今更だし、そんなのヨダレで出しとけって感じ。

 

「あはは、どや! うめー、だろ」

「カンベンしてくださいヨー」


 どうにもこうにも無人島の一こまです。

 みんな、旨味を頬ばる。

 

 でも、それからしばらくして……? 

 

「ん? な? ぺっ!!」


 ギグくん、砂浜に吐き出した固いソレは……


「おい? それ、まさか」とギイさんも気付いた。


「なんか、固いのあったよ。何だよコレ?」


 ギグくん、吐き出したソレを拾う。


「ん? なんか綺麗な石……」


 乳白色だけど虹色に輝く不思議な石。ソラまめみたいな形。でも、中央の球体は立派。全体的にはややカーブした綺麗な流線型である。


「真珠? いや、魔真珠ぞ! それ」とギイさん。

「シンジュ?」

「お前、スゲーぞ! それ、大きさからして数百万……」


 はしゃいでる親父のことどうでもい。


「……」とうのギグくん。


(コレ、ルルーチィさんにプレゼントしたら……いや、プレゼントしたいな。そしたら喜んでくれるかな?)


 ギグくんの覚悟です。



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