ルルーチィの漂流生活・遊ぶ
ルルーチィとギグくん。
二人の島巡り(デート)は終わった。
あの後、島で一番高い場所にある木の上の登り、周辺を見渡したが、確かにここは水平線のど真ん中だった。視界を遠くこらしても陸地は蜃気楼ですら見つけられなかった。
そして移動道中の森林に動物の気配はなかった。それどころか虫すらいなかった。土中にミミズや小川にコケムシみたいに魚のエサはいたようだけど。鳥や蚊はいなかった。
この島は完全に孤立し、独自の生態系でなりたつ場所のようだ。
「ただいま」
「よぅ、どうだったい?」
ベースキャンプ地に帰還。
手製の石斧の刃を別の石でギシギシ研いでいる、ギグくんの父親ギイに出迎えられた二人。
「脱出の手立て、今はなさそうですね」とルルーチィ。
「いや。お前らチューとかしたのかと思って」
「ぬあ!」
「……」ギグくん顔真っ赤。
「ん? やっぱ、なんかあったのか?」
「ない! なにもない。一緒に水浴びしただけ」
「ふーん?」
「ちゃんと、服、着てたし(下着だったけど)」
「ま、お手柔らかにな? ギグのヤツ、ウブだから。はーはははっ」
「ぬぅ(このオッサンは……)」
ギイさん、オッサンゆえにセクハラ大好き。
ギグくんも、なんかモジモジしてるし。
これじゃ、ルルーチィ一人がエッチっぽい。
「ギコくんは?」話しを逸らすルルーチィ。
「ギコはお前らに置いてけぼりくらって、昼寝してるぜ?」
ちょうどそのタイミングで、騒ぎに気付いたギコくん、お目めコスりながら小屋から出てきた。
「デート、済んだの?」ぽわわーん、とした感じ。うつろだ。
「済んだよ? 退屈してた?」一緒に連れていかなかったこと、ちょっと罪悪感のルルーチィ。
「うん……んん? じゃあ、エッチなこと、した!?」
「ブーっ!!」と吹き出す。
どーいう教育してるんだ、と、ルルーチィの感想。
しかも親のギイさん、笑ってるし。ギグくんも、さらに顔真っ赤、しかも、なんで内股になってモジモジしてるのか?
「違う! デートはエッチではない!」
「? じゃあ、ナニするの?」
「エッチじゃないことをするの! それがデートなの」
「……」
「わかった。じゃ、今度はギコくんとデートしよっか? そしたら分かるよ? ネっ!」
「ボク、エッチなこと知らないけど、いいの?」
「だから、デート=エッチ、じゃ、ねーヨ!」
「ふぇええ?」怯えるギコくん。
「あ、違うから。だからね? 一緒に遊ぼ?」
「遊ぶ?」
「うん、それが、デートだよ」
「でも、いっつも遊んでるよ?」
「だから、二人で遊ぶのが――『デート』なんだよ?」
「二人で?」
「女の子と男の子で二人で一緒に遊ぶのが『デート』だよ?」
「なんだ、そんなの簡単じゃん! ボクにだって出来るよ?」
「だよね? じゃ、行こうよ!」
「うん! デートだね?」
「そうだよ」
ギコくんと、デートするルルーチィ。
そしてその後、森で二人『かくれんぼ』した。
「ここかな!?」大岩の上に跳びのり、反対側を覗き込むルルーチィ。
「クスクス」と小さな笑い声を残し、割れた大岩の隙間から反対側へコッソリ抜け出すギコくん。
「んん!? そっちかー! 待てー!」
「キャキャッ」
でも二人きりの『かくれんぼ』なんて結局『オニゴッコ』に変貌してしまう。
森を駆け巡る追いかけっこになってしまうが、獣人の血筋ゆえか、狩の本能か、それだけでも充分楽しくはしゃげてしまう。
「お姉ちゃん、捕まえた!」
「うわ! やられちゃった」
見当はずれのほうを警戒しているルルーチィに向かって、茂みの中から跳び出したギコくん。見事、ルルーチィに抱きつき確保した。
いつもはギグお兄ちゃん相手で必ず負けてしまうギコくんだったが、今日の相手はルルーチィだった。そのせいか、なかなか負けることはなかった。
「じゃあ、またお姉ちゃんがオニね」
「だね。ギコくん、すばしっこいからなあ」
「へへ、この森いっぱい探検したからいろんなところ知ってるもん」
「すごいなぁ」
「お姉ちゃんにも、いっぱい教えてあげるからね」
「うん」
手加減をしてくれてるとも気付かないギコくん、大はしゃぎである。
『カン! カン!』金属の衝突する音。
「あーあ、もう、そんな時間かーぁ」
「続きは、また明日だね」
あの音は食事を知らせる音。
気付がつけば、辺りは夕焼け模様のダイダイ色だった。
じきに日が暮れて、真っ暗になる。
その前に戻らないと。
「つまんないなー」
「明日になったら、また遊べるよ?」
「デート?」
「うん。一緒に遊ぼうね」
「やった! またデートだ!」
元気取り戻すギコくん。
「じゃ、一緒に帰ろっか」
「うん」
手を繋いで、帰路につく二人。
夕焼けのなかのシーンだった。
とりあえず、です。
悩んだ設定は、あと、ちょっと先かな。




