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8.激しいバトルにオサーンは


 荷馬車馬が、すげー勢いで追いかけてくる。

 でも無茶だ。そいつは荷台引きずっているのだ。

 異変に気付いて、うたた寝してた荷馬車のオッサンもさすがに大慌で手綱を絞っている。

 だが荷馬車馬、これを完全に拒否。

 やはり、この世界の馬、頭おかしい!!


「オッサン、飛び降りろ! 荷馬車が次のコーナー曲れるわけねぇ!」


 それなりの速度が出ているが、コッチと違って一人で身軽な分だけチャンスはまだあるはず。曲りきれずにこのまま道路わきの崖に荷車と一緒に激突するよりマシなはずだ。

 タローはそう思って叫んだんだのだ。

 だがオッサン、ここで判断を誤る。

 荷馬車馬もろともコーナーに侵入。

 遠心力に振られて馬から外れた荷台、コースアウト! 斜面に激突して木っ端微塵!

 

「オサーン!!(まぁ、普通、死ぬわな)」


 イヤなものを見てしまった、と素直な感想。

 だが、三度起こる奇跡。

 死ぬ物狂いで手綱を放さなかったオッサン、荷馬車馬に引っ張られ、粉塵の中より推参!

 嵐の中、はためく鯉のぼりがごとく、凄い勢いで宙にハタめかされようとも命綱である手綱を放さない必死なド根性。

 

(やっぱ、命賭かってると違うわw)


 取りあえずオッサンは無事だった。

 だがまだ安心できる状況ではない。

 逆に悪化しているのだ。

 二匹の馬による峠下り最速バルトの火蓋がきって落とされたのだから。


「……」


 だが今、後方の荷馬車馬、まだ何も仕掛けてこない。

 

(お互いの力量を測りあっているのか?)


 それは正解。

 

『荷馬車馬、でかいな。パワーは圧倒的に奴が上』

『このチビ、パワー不足をテクニックで補っている――だが!』


 タローの予測どおりだった。

 二頭はお互いを牽制しているのである。

 それはまさに嵐の前の静けさ。勝負の前の探りあい。


 やがて訪れる緩やかなS字カーブ。

 この状況でなにもない、はずがない。

 ここで荷馬車馬が仕掛ける。


『おおおおおっ!!』


 荷馬車馬、緩やかな連続カーブを、強引にほとんど一直線に進んだ。

 彼のワイドトレッド(胸板広い)と、ハイグリップタイヤ(ヒズメでかい)が、左右交互に襲ってくる強力な横Gの揺り返しに耐える。

 強靭なボディで達成できた強引なテクニックである。

 実際、直線みたいなカーブだったから可能な技だった。


 だから、基本どおりCPクリッピングポイントを曲線でクリアしたタロー馬は、コーナー出口で抜かれていた。


『贅沢なモン持ってやがる』

『貧相な坊やに闘う資格はないぜ?』


 馬たちの魂の会話。それは聞こえる人にしか聞こえない会話。


 そしてコーナーを抜けて直線が現れる。

 荷馬車馬はそのポテンシャルを最大に発揮した。

 全一馬力から繰り出されるその圧倒的パワー。

 その恐ろしいまでの加速。


 ソレを肌身で感じてるのが、手綱に引っ張られ、後ろでハタめいてるオッサン。

 

『スゲーな。でもアンタの自慢のボディ、でも万能なわけじゃないぜ?』

『ククッ――期待させてくれる。見せてみろ小僧』


 バトルが盛り上がってまいりました。


「っうああああああああああああ」


 でも、その時のタローとオッサンの気持ちを考えてあげて?



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