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避けれない戦いの前


 貨物船の周辺を飛行タイプの魔物が徘徊。様子をうかがっていた。

 形態はガーゴイル風というか悪魔的というか、ぶっちゃけ翼をもった猿型だ。


(神様! 助けてください!)


 甲板の隅で一人の若い男が神に救いを求めていた。

 本来、この場所に人はいないはずだった。事実、彼の配置もこんなところではない。

 サボっていたのだ。

 すこしのズルの対価は命になった。

 見つかったら間違いなく殺される。


(俺は要領いいから! 絶対に見つからないから! 俺みたいな逸材がこんなとこで死ぬわけないから!)


 それは無能のフラグ。

 サボってたのみんな知ってるし、いつか大失敗するよなコイツ、とか全員考えてたし、みんな知らないと思っていたのはオバカな本人のみである。

 そして今が、その証明の時である。


『キャッガ!』


 魔物に見つかったオバカ。


「ひゃあああ!」


 悲鳴を上げ、走り出し、そのままの勢いで海にダイブした。

 魔物に襲われるより海に身を投げるほうが安全と考えたのかもしれない。

 半径千キロ四方、何もないこの海域に身ひとつで漂流。

 それがどういうことかオバカには理解できない。

 溺れても目を覚ましたら何処かに漂着していて、助けてくれた異国の女性とラブロマンスをとか考えていたのかもしれない。

 ドラマの見過ぎとしかいいようがない。特撮ヒーローの真似をして高いトコから飛び降りて骨折する子供と発想が同じだ。

 そんな死亡確定したバカよりも、今は魔物達が人を認識したことが重要だ。

 様子をうかがうだけだった魔物が手当たりしだいに船や物を傷つけ、自分の力をアピールし始めた。

 

『ギャハ!』

『ギュフェエエ!』


 各々が奇声を挙げ騒ぎが拡大する。

 その異様な変化の様子は貨物室にも伝わってきた。

 新たな船員が一人、貨物室に駆け込み、先ほどからそこにいた船員に耳打ちする。


「……」

「ん、わかった」


 走りこんできた船員はまだ使命があるらしく、一言伝えたあとそのまま飛び出していった。

 よっぽどの状況なのは貨物室の皆にも伝わった。


「さて、皆さん。賢明な皆さんのことですから状況は把握して頂けていると思いますが。実は、魔物が攻撃化してしましました」


 凍てついていた空気がさらに……

 そんなコトになったら撃退するかコチラが全滅するしかの二択でしかないのだ。

 ただでさえ、行方をくらませようとした人々にとって、これは更なる絶望の追撃でしかない。

 全てを捨てて選んだ最後の希望の手段さえ、絶望に繋がってしまった。 

 もう、希望なんて誰も信じていなかった。


「よっしゃ! ついに私の出番だー! ……よな?」


 なんかチィルールがタローの様子をうかがいながら発言。


「ま、お前はともかく、もう戦うしかないってことだろ? だったら『座して死す』なんて嫌だ。そもそも、お前に散々振り回されて何回も死にそうな目にあってきたからなあ。座ってたら今度こそ死ぬの決定だもんな。いくか?」

「タロー」


「お二人とも、この私を忘れてもらっては困りますね。何のためにあなた方に付いて来たとお思いか?」とリリィーンがまたカッコつけて――


「案内係でしょ?」

「……え?」

「違うの?」

「え、違うと思うんですけど?」

「まさか、そんなーぁ」

「……」

「……」

「違うしーっ! 護衛役だしーっ!」

「えええーっ 困ったなーぁ」

「なんで困るし?」

「本当に大丈夫なんだろうな?」

「もちろんだし」

「実戦の経験あるのかい?」

「え、それはー」

「やっぱな。言っとくけど、オレはチィルールのお守りだけで精一杯だから、お前のコトまで面倒見切れんぞ?」

「ひにゃふひゃはめひょし……」

「ギャベホミカエソキコソグンガ!」


 正直に現実の状況を話したのにチィルールとリリィーン二人がかりで猛抗議うけるタロー。

 理不尽だが仕方ないのかもしれない。

 

「わーた! わかった。よし、じゃあ、お前ら、行くか……」

「おう!」

「当然!」

(コイツらどっちか死ぬんじゃねーか?)


 嫌な予感がするタローだった。



 

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