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タロー怒りのゲンコツ


「お疲れちゃーん」


 タローは貨物室に戻ってきたリリィーンを労う。


「へんな言い方」


 バカにされたと思ったリリィーンちょっと憮然。


「私にもっと力があれば……」とチィルール。

(いや、バカ魔力持ちだから追い出されたんだろが)と、やさしいタローは心の中だけで突っ込む。

「チィー様はいいんです。だって、おヒぃ――ゴッ」


 重大な失言が出そうな気配を察したタローがリリィーンの頭にチョップを喰らわせた。


「な、ぐぁ?」

「だって、チィルールはヒヒゴリラだしな? な? だろ?」

「あ、ええ、そうでした」


 睨みつけるタローのオーラを感じてリリィーンも同調する。

 チィルールがオクエン国の姫殿下なんてまわりにバレたらやっかいだ。

 実際、暗殺者に狙われたから、あわてて姿を消し、怪しい貨物船で隠密に帰国をしている最中なのだから。


「だ、誰がヒヒゴリラじゃあああ!!」

「あー、やっぱお前のヒヒゴリラ真似、上手いわー、スゴイわー」

「ぬぐわあああ!」

「わあー、うまい、うまい」とリリィーンまで煽る。

(あわ、よけーな気を使ってお前まで乗ってくんなよ!)

「きーさーまーらー」

(うわーめんどくせーどーしよーこれー)


 抱き寄せて、ホッペにチューでもしたら大人しくなるかな? とかタローが思っていたところに船の警報が鳴った。なにか起こったようだ。


 船員が慌てた様子で貨物室に飛び込んできた。


「魔物だ! 全員姿を隠せ!」


 その一言に室内の空気が凍てつく。


「なにい! 私の出番だな!」

「またお前か! いーから、姿を隠せ! 奴らは人の姿を見なけりゃ、滅多に襲ってはきやしねー!」


 確かにそうだった。魔物は人を捕食対象にしていない。というか哺乳類とかの生物は食べない。基本草食だ。それでも人を襲うのは群れのリーダーが自分の支配力を確認したり、群れの中の個体の格付けみたいなものを確定するためだとか言われている。


(なん……だと)


 その事実に驚愕するタロー。


(じゃあ、魔物を見つけるたんびに、弱いくせに斬りかかっていってたコイツ(チィルール)ってヤツァいったいなんなんだ?)


 まさにジョーカー。


「私に任せろ! 大丈夫だ。安心しろ」

「なにをだ? なんでだ!? なにする気だ?」

「倒すのだ。この私がな――フッ」

「お前、頭……いや、誰かコイツの保護者いねーのか?」


 チィルールに近づくタロー。


『ゴン!』と音がするほどチィルールの頭にゲンコツを喰らわせた。


「ヒッ!?」

「座ってろ――お前、座ってろ」静かな口調だが?

「た、タロー、なにをそんなに怒っておるのだ?」

「いいから! な? 座ってろ? ああ!?」

「??? はい……」


 涙目ながら指示に従うチィルール。だって頭が痛かったし、タローがすごく怖かったから。

 

 

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