少女の正体! それは伝説のアンチャチャチャだった!
ネタばれタイトル!!
マフィア『血染めの天秤』そのアジト地下にその部屋は存在する。
『拷問部屋』
元々はワインセラーであった場所だが、マフィアには不要なためというかワインなど貧乏マフィアの予算で購入できるものではないので、地下牢及び拷問部屋として利用されている。
コンクリート剥き出しの壁。そこに練りこまれている丈夫な金属の太いクサリ。
そのクサリに両腕を拘束され、腕を上げさせられた少女が一人。
吊るされてはいないが、しゃがむことすらままならない状態。
両の足もそれぞれ、左右にクサリで繋がれ、膝を挙げることもできない。
十才前後の子供に対しては厳重すぎる。
だが、マフィアにたった一人で殴りこみをかけ、何人もの大人たちを撃破した殺し屋の少女なら当たり前の処置なのかもしれない。
「怖いヨー。痛いのヤダヨー。エグ、エグッ――」
繋がれた少女は涙を流し、シャクリあげていた。
「助けてヨー。お兄ちゃん、助けてぇー。ヒックヒック……」
監視を命じられた青年は葛藤していた。
命令は絶対だが、それにしてもこんな幼い少女を監禁して、これからどうするというのか?
泣きじゃくって救いを求めてくる少女を見殺しにすること、それは正義なのか? 仁義? 任侠?
いや、違うはず。
青年は腰の鍵に手を伸ばす。
この子を開放して新天地に逃げ出すんだ。二人で手を取り合い、マフィアからの追っ手をやり過ごし、そしていつか、誰も知らない場所で静かで平和な日常を――などと馬鹿げたことを考えている。
そんなウブでバカな青年は、ニタリとした少女のことにすら気付かないのだ。
「待て! 貴様、どうする気だ!?」
首領アリスちゃんと副官のローリィが部屋にやってきた。
「危ないとこだったわねぇ。ロリコンは罪だわー」とローリィ。
アリスちゃん青年を突き飛ばす、そして抜刀、怯える青年を無視して、魔力を載せた斬撃を拘束されてる少女に放つ。
「ギャふ! っち! 容赦ないえのう――」
「当たり前だ。貴様のような化け物、絶えずHPは絞っておかねば、もしもの時に手がつけられん。クサリで繋いでおるだけでは不安でしかたない。男を見張りにしたのは間違いだった。次からは女を用意し、定期的に斬撃を喰らわせて、HPを削っておくことにする」
「えげつないよなし。ククク、そこの坊、惜しかったなし? もう少しでラヴラヴ逃避行だったのし。キャッキャッキャッ」
「ウソをつくな! こやつが手錠を外した瞬間、殺すつもりであったろーが!」
「どうだかや? 坊の夢を壊すなやし? キャッキャッキャッ」
青年、理解が追いつかず、しゃがみ込んだままの状態。
「おい、お前、コレをやる」
アリスちゃん銀貨袋を青年に投げつける。
「色街にいって女を知ってこい! 女は魔物だ。それはまだいい。だが幼き少女は病原体だ。近づくな! 触れるな! 話をするな! 感染するから見るのもやめろ!」
アリスちゃんの剣幕に圧倒され、部屋を出て行く青年。だが、とりあえず、しゃんとして立ち直っている少女の様子からして、やっぱり自分は騙されていたのではないかと三日後に気付いた。
「さて、これからだが?」とアリスちゃんは少女を見つめる
「いや、オネぇちゃん、助けて? ヨヨヨ……」涙目ウルウル少女。
「よゆーだな?」
「そうでもないがの? なんせ捕まることなんてまずはなきゃったからも」平然とした少女。
「そーか」
「で? どうするなし?」
「まぁ、ゴーモンかな? いま、専属のスペシャリストを要請しているところだ」
「それはヤバイな。ワシも立場上、素直に言いなりになるわけにもいかんからな。困ったの」
「なぁーに。すぐ吐くさ。というか話させてくださいとお願いしてくる。賭けてもいいが?」
「こんな田舎にそんなマゾがおるきや?」
「ああ、このへんでは魔王と呼ばれている。できれば関わりたくはなかった。貴様に同情するよ」
「マジか? 嘘をついてるようにみえんもしが?」
少女は長年の経験から嘘を見抜けることに長けていた。
そしてアリスちゃんが嘘を吐いていないこともわかった。
とすると、どんな化け物が現れることか――
「待たせたかー! 俺参上!!」
部屋に勢いよく乱入の女。先代のマフィアの首領スペーシュだ。
「お手数をお掛け致します」
「いいってコトよっ! それより獲物はどこだ? あはーん、そいつか! うひゃ、カワイー!」
なんだこのノーテンキな女は、どこが魔王たるのか? と少女は思った。
「アレ? こいつ、もしかして『アンチャチャチャ』じゃね?」
「アンチャチャチャ?」
「あれ、お前ら知らない? 伝説のアンチャチャチャ、一見幼女だけど凄腕の殺し屋っていう」
「そやつが言うには魔物の呪いで成長を止められたとか?」
「あ、じゃ、やっぱりアンチャチャチャだぜコレ。何十年も前から子供の姿っていうし。ってかじゃあ、アリスお前、アンチャチャチャ倒したの?」
「苦戦しましたが、なんとか」
「マジか? 嘘だろ。おい、そこのお前、ほんとに伝説のアンチャチャチャか?」
スペーシュ、少女に問いかけた。
「ふん! 知らぬはそんな者」
「そうかーぁ? じゃ、言ってみ?」
「なにをじゃ?」
「まーたぁ、とぼけちゃってーぇ。ホラ『暗殺者』言ってみ?」
「なんでそんな」
「言えねーよなぁ、だってアンチャチャチャだからな。うん」
「そんくらい言えるわ!」
「じゃ、暗殺者、ホラ?」
「……あ、アンシャツしゃ」
「シャツ?」
「ちが、あ、アンサツ・チャ!」
「チャ……ぷっ!」
「ぬぐわわわわああああ!!!」
少女、顔、真っ赤。
「ほらな? やっぱりアンチャチャチャだろ?」
(なんだそれは? ほのぼの系ギャグなのか?)とアリスちゃんとローリィはこの拷問部屋で頭を抱えていた。
次回は拷問です。
お楽しみに。




