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伝説のアンチャチャチャとバトル・BYアリスちゃん・決着


 『銀閃撃ギンセンゲキ

 アリスちゃん自慢の必殺攻撃。

 突き攻撃だがただの突きではない。

 手首と肘と肩をシナラせ、刀をムチのように繰り出す突き撃。

 その刃の先端は縦横無尽に空間をかき乱す。

 

「まこと見事よ、この突きは! っとお! おおっ!」


 その必殺攻撃をかわしながら目標の敵である少女は感心している。  


「右かと思えばっ! 左にスライド? して落ちてくるっ――とと! 直線的な突きの動きではなえ! 変幻自在の突き斬りかえ? なんぞ! 見事なもんよ!」


 まさにそうなのだが、敵に感心されても屈辱でしかない。しかも、かわされてるうえで。


 だが余裕な言葉とは逆に、その突き斬りを大げさにかわす少女。バランスを崩したりもしている。


「だがよな?――」


 少女の不敵な表情。そして確信を突く一言。


「なぜ? ワシは、いまだ、生きとるえ?」


 バランスを崩してよろめくことさえある、その敵少女をアリスちゃんは仕留められずにいる。


 しかし、その訳は簡単だった。


(銀閃撃は前後左右プラマイ十センチ、最大で二十センチの誤差がでる。こいつソレすら見透かして!)


 技があまりにも不特定軌道をなぞり、放った自身すらが軌道を読めない無限軌道斬撃、それが銀閃撃の長所であると同時に最大の弱点。停止した目標には、逆に命中率が下がる。

 普通なら誤差が二十センチあったところで、幅三十センチはある人体を切り刻むことに問題はない。

 だが、コンマ一秒、数ミリの違いで生死が確定することのある達人同士の真剣勝負でこれは見過ごせない弱点である。

 

(誤差五センチ、いや、三センチまで絞る必要があるな。ま、次に修行の機会があればの話だが)


 死ねば修行もクソもない。 

 勝てる見込みがドンドンなくなっていってる。

 そして隠してるアリスちゃんの手札、あと一枚。

 でも、覚悟するしかない。

 手を止め、両手で刀を握りしめ上段に構える。


「ほ? お終いかえ?」

「……」

「どうしたも?」

「……」

「ん?」


 上段に構えられた刀に魔力が注入されていく。

 銀色の輝きをまとった刀。ソレは巨大な斧に見えた。


「受けてみろ? 我が魔撃斬マゲキザン白鉄シロガネの斧』!」

「え? 受けなきゃいけないの? しょうがないなぁ――、一回だけだよ? まったく、もう、プンプンなんだから……」


 オドケる少女に情け容赦なく刃を振り下ろすアリスちゃん。


「ウッおっおおおりゃあああああ!」

「うは、スゲっ」


 巨大な魔力攻撃、それを少女は素直に感心する。


 でもその剣戟はあっけなく少女に受け止められた。

 無論、素手ではなく刀を抜いて、その刃に魔力を乗せて受け止めた。


「やっと抜いたか」

「ん? だって手で受け止めるの痛いなし」

「なら、もう一撃」

「はへ? 一回だけだと言ったなもし!?」


 再び振りかぶるアリスちゃん。

 呆れる少女。


「ドッリャアアア!!」


 魔力剣戟、再び振り下ろされる。

 少女、今度は受け止めず。

 スルリと避ける。

 だからアリスちゃんの刃は勢いを殺せず、振り下ろされたままの勢いで床に突き刺さった。

 辺りをかき乱す魔力。物理的破壊はないがアヲリで空気がツムジを巻き上げる。

 

「ヤケになったかえ? あっけなかもに……(ここまでかえ?)」


 少女は勝負の引き時を感じ、アリスちゃんに襲いかかる。


「勝負捨てて無意味となった、その両腕貰おおぞ!」 


 アリスちゃんは床に刺さった刀を抜くことすら出来ずにただ立ち尽くす……

 万策尽きた、それがアリスちゃんの様子。


(と、いうのはワナ! キャっキャっキャっ!)


 少女は気付いた。

 床に刺さっている刀の魔力が、その供給が途絶えていないことを。

 そして、その魔力が自分の背後で、床から首をもたげつつあることも。


(コイよ? 今度こそキサンの心を折ってやもう!)


 少女、その策略に気付かないフリ。

 そのまま突っ込む。

 

(ワナに掛かった風にして、直前、キサンの脇をすり抜けもう。そして、唖然としたキサンの背後から両足か? それとも予告どおり両腕を、HPごと斬り捨てるか? どっちがショックかえ?)


 勝利を確信した化け物が、弱者の浅知恵をせせら笑いながら、それを簡単にいなそうとした。

 だが? それこそが油断。

 慢心ゆえの隙。

 後から何とでも言える後悔のしくじり。

 そしてそれこそが、アリスちゃんの狙い。

 気付いたときには手遅れだ。


「ヌ、な! へはっ!?」


 少女、この勝負で初めての驚愕の悲鳴?

 だって、右脇(アリスちゃんの左脇)をすり抜けようとしたら、それが失敗だった。

 セオリーどおりだったら利き手外側をすり抜けるはずだった。だって刀をもってる利き手外側は自由空間だ。けど、今回、アリスちゃんが魔眼で反対側を封鎖しようとしたから、反射的に封鎖しようとした方に向かった。だって屈辱を味合わせたかったから。

 そしてそれは、ワナだった。

 しかし、そんなワナ、普通ならどうでもいいことだ。

 というか、普通なら、このワナは成立しない。

 成立しないワナだからこそ引っかかってしまったのだ。

 まさか、ワナのなかに仕掛けた張本人が侵入してくるなど考えられない。


「いらっしゃいませ?」


 アリスちゃん自分が放った魔撃の射程内に自ら侵入。 


「き! キサン!」


 アリスちゃんは左脇をす抜けようとした少女をガッチリと小脇に抱きしめた。

 アリスちゃん、先手の先手を打った。

 小脇に抱えられた少女は宙にもがき、なにもしようがない。まさにただの子供。

 

「貴様ーッ!」

「勝負だ!!」


 見上げるほどの魔撃が二人に襲いかかる。

 頭上から真っ二つにされるアリスちゃん。

 そして抱えられた少女は尻から真っ二つ。


「ギャアッ!」

「ゲフォオッ!!」


 魔撃が二人を貫通する。

 魔撃ゆえに物理的破壊は軽微。

 だがHP的には大ダメージ。

 しかも魔撃に真っ二つされるなど、二人ともクリティカル大ダメージだ。


「こ、この……」

「ああ?」


 少女最後の力を振りしぼる。


(せめて、一撃――)


 宙ぶらりんになっている右手の刀に力を込めるが、それは叶わなかった。

 床に落下する刀。


(結局、コヤツに、一撃も? ……仕方なしきゃ)


 最後に一言。


「ほめて、やらりゃ、イモ、武者……」


 そして、気を失った少女。


「あ? 知るか……クソがき」


 アリスちゃん、少女を床に叩きつける。


「く、お……」


 気が遠くなる。

 揺らぐ身体。

 だが、まだ果たさねばならないことがあるのだ。


「アリスちゃん!! ナニこれ? どうなったらこんな!!」


 と、騒ぎに気付いたローリィが遅ればせながら参上した。


「ああ、化けモン、倒した」

「え? この子?」

「あ? 化けモンだ。厳重に――かんきん……」


 よろけるアリスちゃん。


「しっかり! アリスちゃん!!」

「来るな! 触るな!! まだなんだ!」


 駈け寄るローリィを拒絶のアリスちゃん。 

 そして、アリスちゃんはカタカタと震える右手の刀をなんとか鞘に納めようとする。

 でも、震える切っ先は鞘に添えた左手を傷つけるのみ。

 辛抱たまらず、左手は刃を鷲掴みして、刃を鞘へ誘う。

 左手は血を吹いた。


「よし!」


 刃が鞘に収められた感触を確認してアリスちゃんは立ったまま気絶した。


 この勝負はダブルノックダウンなどといった相打ちなどでは決してない。

 

 床に倒れ、刀を投げ出した敗者と、仁王立ちで刃を鞘に収めた勝者。


 勝敗は明白だ。


 マフィア『血染めの天秤』が首領ドン、金色蛍のアリス(ちゃん)、よく頑張った。

  

バトル編、書き終わりました。

でも、どうなんだろか。

普段はオシッコ・ジャージャーばっかり書いてるから不安です

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