伝説のアンチャチャチャとバトル・BYアリスちゃん
アリスちゃん、前へ!
同時に振りあがる刀が、瞬時に振り下がる。
まるで刃のマバタキだ。
シュンと空気の斬れる音。
獲物の少女は軽くかわすだろう、それは予定の範疇。
(避けた瞬間、左手拳でパンチだ。三十キロもなさげな身体などブッ飛ばしてやる!)
次手も計画済みのアリスちゃん。
だが、その時点の予測からして違った。
「な!」と反射的に半歩下がってしまった。
少女は予想以上のスピードで刃の斬撃線上の真下を一直線駆け抜けてきた。
なぜなら一歩の歩幅で最高速まで加速できる。それが少女の技の一つ。
彼女は常人一歩の歩幅を三歩のすり足で歩いている。
三歩使えば常人ですらそこそこのスピードに加速することが可能である。いわんや彼女なら。
そして余談だが、その小刻みなすり足のせいで、ピコピコと彼女のオサゲが揺れる原因でもあった。
「下がってどうすんなげ?」
少女の言い分はもっともだ。だが、自分の剣速より速く、しかも避ける動作すらなく、攻撃態勢に入られるとは思ってもいなかった。下がったのは痛恨のミスだが、それは身体が条件反射で防御体勢になったせいだ。
(先手のはずが! 悪手で、二手後手に!)
宙ぶらりになった刀を引き戻しつつ、左ヒジを接近した少女に打ち下ろす。
だが、これもかわされた。
脳天上の死角からの攻撃だが、やすやすと見透かされていた。
脇をすり抜け、通り過ぎる少女。だが攻撃はされなかった。
「そんなもんかえ?」
少女は振り返る。
反論できない。だって大失敗。普通なら死んでるところだ。
手加減されてるのは本当の様子。
頬が紅潮するアリスちゃん。
「手加減されてるか確認するために、こちらも手加減したまでのこと」と言い訳。
「さよか? キャキャキャ――」
「ならば、こちらも先に警告してやる。私の剣戟は斧を振り下ろすかのようだ、と先輩たちに散々からかわれた。だから、知っている。華奢な私の剣速などしれている。だから、あみだした。この技をな?」
アリスちゃん、右半身前方へ、刀の剣先中段構えで突き出す格好。刀を右手片手持ち。
「ほぅ? 西方洋のフェンシングスタイルかえ? 普通はレイピアを使うだも? いまいち期待できなさもれ?」
「フェンなんとかなど知らん。私があみだした技だ」
「ほーか、ますます期待できなさもし」
「警告はしたぞ? あとで悔やむなよ?」
アリスちゃんの右腕が不自然に揺らぐ。
腕だけでない、彼女最大の武器、金色に輝く魔眼もユラユラと揺らぎ始める。
魔眼の金色の輝きが、距離感や空間位置間などすべての間合いを狂わせる。
「ほほぉゥ……」
感心気な少女に、アリスちゃんの初撃!
強烈な突き撃!
「おわ!」と、少女驚愕。でも、かわされた。
「どうした? 警告はしたぞ? そして見せたぞ?」
「いや、これは中々――」
「分かったのなら手加減無用でこい!」
少女は感心する。確かに見事な技だった。
ユラユラと揺れる肘と肩から繰り出される無限軌道の突き撃。
(似たモノがあったが? うーん、たしかアレは西方洋の肉戦格闘技でジャブジャブいうフリカとかっていう技だ。それを刀でするかや? コイツ、オモシロいやつだも!)
しかも出所不明の突き撃と合わせて、あの魔眼である。フェイント効果抜群の組み合わせ。
「貴様ぁ、……おもしろーい!」
「く……(その程度でしかないのか!)」
自慢の技、それを見たものは全員驚愕し萎縮する、それがいつものはずだが?
敵少女は瞳キラキラ好奇心いっぱいの様子。曲芸扱いらしい。
化け物を相手にしてみたいと、ローリィに言ってた気がするが……
今更後悔しきりのアリスちゃんだった。




