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タローの承転


 食肉業者さんたち、施設のチビッコたちに見送られながら帰っていった。

 例の儀式も行われたが、さすがは大人たち、快くみんなのことハグハグ。

 魔王襲来で怯えてた子供たちにも元気復活。

 肉は現金で買い取ってくれた。

 四十万オクエン、チビッコたちに歓待された社長、上機嫌でイロつけてくれた。

 いい人と、ご縁ができたと思う。あの人はココの味方になってくれると思った。


 成功だ。


 大猪の価格は想定外で不服だが、それより、この付近の山が恵みの宝庫だとわかったことが大収穫だ。

 社長に他に売り物になる買取リストを貰った。

 リストの載っているのは子供たちに馴染み深いものが多かった。

 肉だけでなく、キノコやイモ、薬草など。

 第三小隊の子供たちも加わり、みんな、ワイワイガヤガヤ、大激論。

 そして案の定、大儲け話へと進む。


 釘を刺さないといけない……


「あのさ、そんなにいっぺんに収穫したら、枯れるよ? 山が、森が、自然が! 今年、大儲けできても、来年からはなんもいなくなって、今以上に貧乏になるだろうね?」


 全員、沈黙、一応は分かってるようだ。

 そんで初夏と初冬、半年サイクルくらいの定期的な管理猟で、いくことに決定。

 無論、マフィア隊員の監督つき。


 その後一旦、会議終了したが、また議論勃発。

 手元の四十万オクエンの活用についてである。

 さすがに、この問題には子供たち退場。

 金色さん、シスター、ローリィさん、そして、なんかオレも、で議論。


「武装強化が必要になった。この事態だ。不埒な輩が敷地に侵入するかもしれない。わかるだろ?」

「施設の老朽化、ヒドイのよー、知ってるでしょー」

「アフィアの借入金、金額知ってるの? ニラミ効かせてるから、すぐにドーコーはないけど面子はね?」


 分かる。スゴク分かる。

 お金っていつもこうなんだよな。

 なかったら困るけど、ヘタにあっても困る。

 それこそが、まさに『お金』だ。


「でもさ、みなさん、大事なこと忘れてますよ?」


「はあ? よそ者のキサマが、なにをわかったふうなことを!」


 金色さん、怒った。

 そして、今回いつもと違うのは、シスターもローリィさん(?)も、オレを庇おうとしてくれないこと。

 それはきっと、金色さんと同じ思いだからってこと。

 でも、オレはビビッていない。だって確信があるから。


「オレは、まず、チビッコたちに――、なにか、おいしいものを食べさせてやりたい。――だって、あの大猪の肉、売っちゃたから子供たちは、もう食べれないよ? お肉――」


 みんな沈黙。視線を下に落とす。


「タロー、キサマというヤツは……くっ――」


 金色さん、こっちに視線むけたけど、見返したら、すぐそらした。


 結局、保留。

 でもとりあえず、チビッコたちのタメに何か食材を調達することが決定した。

 オレてきにはそれで十分だ。だって、それがオレの目的だったんだし。




 その後、金色さんとローリィさんの手配で、彼女たちを迎えにきた馬車の人から用意された食材を受け取った。


「とりあえず、コレで肉の代わりにしてやってくれ」

「玉子だ」


 玉子を受け取る。貧乏極まるここでは貴重な品だ。

 そしてその馬車で金色さんとローリィさんはアジトに帰っていった。

 

 その後、厨房。


「玉子か――」


 ボランティアで料理してくれてる隠居済みの料理人のオジイサンと相談。


「一個ずつは渡せネーな。ゆで卵は却下と」


 玉子は数十個あるが、全員分はない。


「スープにー混ぜればーみんなにー」とシスター。確かに。

「いいけど、そんなウマイもんじゃないぜ? もったいなくネーか?」それも確かに。

「スクランブルエッグとかはどうですか?」とオレ。

「なんだソレ?」

「あ、混ぜ焼きなんですが」

「混ぜ焼きか! 無難にいいじゃねーか。他のモンでカサ増やせるし」


 よかった、話がまとまりそう。


「この分量なら、大きい子にスプーン三杯分、小ぃせーのには一杯分はなんとか出せそうだな」

「ハあっ!? それはダメだ!!」


 オレ、立ち上がって絶叫してしまった。

 だって、それじゃ同じだ。

 オレがしたかったのはそうじゃない!


「へ? どした、ニーちゃん」

「タロー君のー案ーですよー?」


 説明したいけど、でも、理解はされないだろう。

 みんなに同じだけ平等に分けてあげたいんだ。

 でも、そうしたら、全員にスプーン一杯ずつ程度になる。

 すこしは喜んでもらえると思う。

 それでも、いいのだろうけど、誰も満足できない結果しか見えない。


 せっかく、頑張ったのに、結局『みんなを幸せにすることなんて不可能』なんだな――


「すみません。それでイケルなら、それで……」


 これも、仕方がないことのうちだ。

 オレなんてこんなもんだ。


 くそ!!


「おーい、メシ、まだかぁ?」と、チィルール登場。


 お前、ソレばっかだよな。

 食う、寝る、オシッコ、それ以外にないのか? 


「おジョーちゃん、期待しててくれよ? 今回、いいものがあるからな?」

「なにぃ! まさか、ハンバーガーか?」

「半バカがー? おジョーちゃんのことか?」

「違う。食べるんだ」

「おジョーちゃんの脳みそたべるんか?」

「ちっがーう!!」


「なんでやねん。いいかげんにしなさい」と突っ込む。


 でも、オレ、料理人とチィルールのやり取りで閃いた。 

 料理人と相談しながら、オレは計画を実行する。


「これで、まずはオーケーだ。そして、これを、コーするんだ」

「まて、これはマズイ。禁忌だ」

「あなた、知らないでしょうけど、これ、兵隊の食事よ? 子供たちにコレって――」

「ハンバーガーどこ?」


 抗議、受けたけどオレは強引に実行した。

 もう、後には引き返せない。

 でも、自信はあるんだ。

 


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