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承 ザツ

コメディージャンル変更したのでネッチョりいこうと思います


 原生林。

 道などないそのジャングルの中を、一人の少女が走り抜けていく。

 赤茶色のフード着きショートマントをかぶり、草色のハーフシャツとハーフパンツ姿。

 一見探検家スタイルっぽいが、両手足の篭手のせいかやたら戦闘服っぽい。


 そして、そのスピードは圧倒的、平坦な場所ですら常人には不可能な速度。

 彼女は茂みなどものともせず突き進んでゆく。

 まわりなど確かめもしないのに、茂みの幹にも引っかかったりしない。地形から雑木の形をちゃんと把握しているからだ。

 しかもデコボコの足場を踏み越えていくにも関わらず、視線の高さは常に一定。

 只者ではない。


 目の前に現れた小川をジャンプ。

 十メートル以上、跳んだかもしれない。


 「待っててね。ルルーチィがすぐ迎えにいってあげるからね、チィーちゃん」


 目的の少女の名をつぶやくと、彼女は勇気が湧いてくる

 疲れなど吹き飛ばして、手がかりの地を目指した。



------ 


 

 施設の様子。


 オシッコ騒動、あれから数日が過ぎた。

 オレ達は平凡といえる日常に埋没していた。

 基本、第三小隊と行動をともにしていた。

 一緒に作業はもちろん、勉強の授業を受けたりもした。

 こっちの勉強は、数学・社会・歴史がメインで、国語や理科、体育は見当たらなかった。たぶん、省略されたそれらは、現実で実際に体験するから教えなくてもいいだろ、ってことなのかもしれない。

 ただし、教わるほうの社会の授業は、契約書の書き方や締結方法などメチャクチャ生々しいし、歴史のほうも、政治的な地政学や宗教学などを取り入れながら暗殺うんぬんの生臭い話がわんさか出てくる。


 (子供のうちからハードな現実を直視させる方針なんだな)


 そういえば、現実でも性教育はそんな感じだったような。回数ないからリアリティは感じなかったけど。


 自由時間。

 秘密の場所は立ち寄り禁止されていた。

 マフィアから派遣された部隊が山を調査している。

 安全の確認が終わるまでは近寄れない。

 タッシュはとっくに復帰しているが、あんな事件のあとなら禁止も当然だろう。

 オヤツ禁止か、と思ったら、さすがは子供たち。近場でもなんだかんだ見つけてくる。

 食べれる雑草の茎とか、バッタとか、カブトムシの幼虫みたいのとか、ただ正直おいしくない。

 でも、みんな楽しそう。けっしてくじけない、ミジメを感じない。


 (豊かなのが、けっして幸せではないって昔の人は言ってました、か・・・)


 幸せや平和は心の持ちようしだいなのかも知れない。こんな世界をみせられたらそう感じてしまう。


 (でも、オレはなんとかしたい。この子らになにかお返ししてあげたい)


 平和なことはいいが、オレは答えを見つけられないことに焦りを感じていた。


 (だって、オレ、いつまでもここにいるわけにもいかない)




------




 早朝。

 ジプシーの集落。

 タローとチィルールが世話になったジプシーだ。

 

 ジプシーの族長がテントをでて、一番に日の出に礼。

 一族の安寧祈願。

 それは代々の慣わし。

 普段ならそれでお終いだが、今回は・・・


 「文を頂ました」


 族長の前に、いつの間にか、フードを被った妖しげな少女の姿。


 「あなたは?」

 「使者です。先日お世話になった方のお礼に馳せさんじまいりました」

 

 少女は皮袋に詰まった金貨を渡す。

 族長は困惑したが、先日の話はまことだったようだ。

 たまたま助けた少女は言った。


 『ワタシはХХХだ。助けてくれば礼は必ずする。念書を書こう、それを届けるがよい』と・・・


 「こ、このような・・・、まさか、あのお方は本当に・・・」

 「他言無用に! ・・・そしてこちらは陛下から・・・」


 少女は、印を刻まれた手紙を族長に渡す。


 「まさか本当に・・・、おおおぅぅ・・・」


 族長、金貨の詰まった袋、放り捨てて、代わりに手紙を頭上に掲げて最敬服。


 「今回の件、くれぐれも、ご内密に・・・」


 その言葉は伝わってないようだ。

 族長、感極まっている。

 でも、事情は把握されてるみたいだし大丈夫だろう。

 フードの少女はその場から姿を消した。


 そして、また戻ってきた。

 頬、真っ赤だった。


 「あのー、それで、チィーちゃんはどちらへ?」


 街のことを教えてもらった。

 そして、漂着者の連れがいることも・・・


 (漂着者・・・文にもあったけど、チィーちゃん無事でいてね)

 

 少女、再び姿を消した。



------




 施設、解体場。

 隊長と二人、肉の塩梅確認しにきた。

 基本、オレ退屈だから、なんかあったらなんでも一緒する。

 吊るされた大猪、いい感じに熟成。おいしそう。


 「うん、よくなってる」

 「ニオイだけで分かるんか?」

 「ったりめージャン」

 「うん? 本当だ。おいしそう・・・」

 

 隊長の真似して嗅いでみる。

 確かにハムのいい香りがする。

 いや、上等なハムだ。よだれ出る。

 売ったらいくら位になるんだ、コレ?


 「あああああ!!」

 「なんだ? よ!」

 「コレ、売れないのか?」

 「はあ?」


 売れるものあった!

 あとは売値しだいだ。

 

 「売ったほうがいいんじゃないか? ぎゃくに儲かるなんてあるか?」

 「いや、それより、野生肉なんて誰が買うんだ?」

 「は? オレ、ホテルでジビエ食ったぞ?」

 「ジビエ?」

 「野生肉だよ!」


 (盲点か? コレ、可能性あるんじゃないか?)


 オレは早速、シスターにも進言。


 「飼育されてない、お肉なんてー、誰か、欲しがるかしらー」

 「ともかく、ツテを! アリスさんとか、だれでもいいから!」


 予感がする。

 大ハズレか大当たりの予感。

 この世界に野生肉流通がなければお終い。あってもそこにツテなければお終いだし、売値が安くてもお終い。自分達で食ったほうがましのパターン。


 (可能性ありだ! 失敗したらお肉パーティになるだけだし)

 

 その後、オレ大奮闘。だってチャンスかもしれないし。

 金色さんとローリィさん二人を電話で説得。

 散々議論したあと。


 「失敗しても損はないのになんで反対してるの?」

 

 素朴に問いかけたら、反論できずにあっけなく降参。

 食肉業者に連絡してくれた。

 二日後、来てくれるみたい。


 (手こずらせてくれて、もおお・・・でも、これで解決じゃないよな)


 いくらの値がつくか、それ次第なんだ。

 オレのビジョンはここからなんだ。


 

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