オシッコの仕方
シリアス比重が高いのでジャンル変更しました。
でもお下劣ギャグもやります
お風呂に入りなおして、オシッコを洗い流す。
こっちに来てからこんなんばっか。
(この世界って、きっとオシッコに重要な意味があるに違いない)
世界を救う為の伏線のはず。
(としたらこの世界って、まさか・・・頭おかしい?)
・・・な、わけない。
顔洗い直す。
「はぁ・・・」ため息。
散々オシッコまみれになってんだから、そのくらいの設定ほしいじゃん。
顔洗う。
(記憶も洗い流せればいいのに・・・)
泣きそうになったから、もう考えるのやめた。
「ああぁ・・・う・・・くぅうう・・・」
オレは何度も顔を洗って、そして、風呂からでた。
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『コン・コン』とオレはシスターの部屋のドアをノック。
「どうぞ」とうながされ、入室。
(う、甘ったるいニオイ)
女性独特の香りたちこめるシスターの部屋に入る。
背徳感。でも、さっきの騒ぎの事情を説明するために出頭させられてきたのだ。
「失礼します」
入室してすぐ、ドアの前でオレは事情を説明。
だって、あんまり中に入っちゃだめな気がするし。
「そうですか・・・」
シスター、怒ってないっぽい。
ネグリジェみたいな寝巻きにガウンをはおってベットわきに腰掛けている。
そして自分のベットで眠るリリィーンをナデナデしてる。
リリィーンの目元、なんか涙のあと・・・
(オレだって被害者なんだが?)
乙女心に傷をつけたのは、わかっている。でも、被害はオレのほうがデカイよ?
「この子・・・最近は寝ぼけることなかったんです」
「え・・・」
オレのせいだっていうの?
まぁ、シスターもそっちの味方だよね。
「昔はしょちゅう、それこそ毎晩、あちこちでシャアーシャアーと・・・」
「へ?」
「あるときは、男の子の部屋に入って眠ってたロイシュに頭からシャアシャアと・・・」
「ロイシュ・・・」
「隊長の名前です。可哀想にロイシュ、三日くらい塞ぎ込んだあと突然『自分は汚れてしまった、情夫になる』とか言い出して、なだめるの大変でした」
「・・・」
「またあるときは・・・」
(まだ、あんのか)
「廊下の端っこのほうに決まってシャアシャアしてたころがあって、そこにキノコが生えてきたんです。『リリィーンのキノコ』なんて名づけられて。それを先代の首領が・・・まだ当時は首領ではありませんでしたが、その子がとんでもない悪がき大将で、キノコを焼いて無理やりロイシュに食べさせたんです。そうしたら『オシッコが来る! オシッコが世界を支配する! 来るなあ!』と幻覚に襲われて数刻のあいだ泡吹いてのた打ち回っていました」
「あ、哀れ・・・」
いや、リリィーンのヤツいつか隊長に刺されるんじゃないか?
顔面に屁をこかれるくらいかわいいものだ。
「でも、本人は寝ぼけてる間のことは知らないんですよ」
「じゃあ」
「全然気づいてないんです。でも、今回は・・・」
「・・・」
つまり、リリィーンにとってみれば、オレが眠っているリリィーンを連れ出し、ズボンとパンツを脱がせてオシッコをさせられてた、ということになっていると。
そして、寝ぼけてあちこちでシャアシャアやってた真実を伝えるには少々残酷な事件がイロイロ起きているので、内緒にしておきたいということか。
わからなくもないけど、オレの立場・・・
「気づいたと思うけど、ここにはいろんな事情で来た子がいます。身内をなくして引き取り手がなく、と、いった子はまだ決心をもってしっかりしていますが、親に虐待され、保護の為連れてこられた子などは精神が不安定です。でも、かれらはまだ親が自分を迎えに来てくれると必死に信じています」
「それは・・・」
「でも、この子の場合は少し違います。この子は、実の母親にココに連れてこられ、そのまま捨てられていきました」
「はあ? でも、それは仕方なく」
「いいえ、この子の母親はとある貴族の妾になったのです。それには、この子は邪魔でしかなかった。だからです」
なんだそれ、そこまでなのか?
生きるためには、そこまでしなくちゃならないのか?
「なら、せめて仕送りとか・・・」
シスターは無言で首を横に振った。
(なんだそれ?)
貴族の妾なら自由とはいかないまでも、すこしくらいお金の融通はつくはずじゃないのか?
まさか正真正銘、リリィーンのこと邪魔者として存在を否定したのか?
信じられない。
「わたしがシスターになって初めての子でしたし、事情も見ていましたから、つい甘やかしすぎてしまいました。それでは駄目だと突き放しもしたのですが逆効果で・・・」
「そ・・・」
なにか言いかけても、言葉がみつからない。事情が重過ぎてなにも言えない。気遣えない。
「あなたにもこの子を守ってあげる側についてほしいのです」
「それは、はい、です」
「明日、何も言わずに、謝ってくれないかしら?」
「ウ、・・・はい」
「ありがとう。あなた大人なのね」
完全に子供扱い。でもこの流れで嫌です、とか言えるほどオレも子供じゃないのも確かなのだ。
(まぁ、リリィーンみたいなバカ! はオレもかわいいと思うし、べつにいいですけど)
巧みにハメられた感じ。
「お話は以上でいいですよね?」
「えぇ。遅くなってしまったわね? ここで寝てく?」
(まーたぁ・・・)
ふざけて「お言葉に甘えまして」なんて言ったら怒るでしょ?
そのパターンもありかもだけど、さんざん子供扱いされたしなあ・・・
「いえ、オレ、紳士ですので」
「そっかー、ざんねーんー」
「失礼します」
付き合いきれない。
オレは部屋を出た。
(リリィーンの、バカのリリィーン! に謝罪かぁ・・・ちくしょう)
でも約束させられてしまった。
(シスターには逆らわないほうが、身のためかな)
あの人、オレより何枚も上手っぽい。さすが大人か?
(今日は疲れた。もぅ寝る。なにも考えたくない)
イロイロなことがありすぎだ。
せめて明日になる前に眠りたい。
大部屋に戻った。
でも、オレのスペースはもうない。
みんな寝相グチャグチャ掻き乱れてる。
(ふふっ・・・まぁ、良しだ)
適当に子供たち押しのけ、スペースを確保。
時間が時間だし、誰も起きない。
(どーにもコーにも、カッコつかないよな、オレ)
疲れてたから、すぐ眠れた。
夢なんてみないほどぐっすり眠り、そして朝はやってくる。
『ブリ・ブリ』小鳥のさえずり。
(朝・・・)
まだ早朝、睡眠時間は短かった。でも、眠気はない。
(量より質の睡眠か・・・)
そんな話を聞いたことがある。
カーテンの隙間から朝日が差し込んできてるが、子供たちはまだスヤスヤ気持ちよさそうに寝てる。
(さて、リリィーンになんて謝る?)
元々の責任はないはずだから、謝罪の言葉なんて思い浮かない。
しかも、状況にのっとって、謝罪するとなると、オレの台詞は・・・
『ゴメーン! オレ、リリィーンの放尿姿が見たくて、つぃ、やっちゃたー。ゴメンネー』
って、ことになるじゃねーか!
あほか、ばかか、へんたいだ。
(シスターはオレになんて巨大な十字架背負わせるつもりなんだ!)
冷静に考えるとヤバイ! 想像以上にやばいことになってる。
(どーすんだコレ・・・)
と、思いながら呆然と廊下を歩いてたら、遭遇した。
「リリィーン!?」
「ひっ!」
いきなりの遭遇で向こうも驚いてる。シスターの部屋から抜け出して自分の部屋に帰る途中だったか?
(謝罪、言葉、どうする!?)
なんか言わないと!
「あ、あのな! オレ、べつに、オシッコ好きじゃないし!」
「そ、そんなん、好きなヤツいないし!」
「え? いるらしいぞ? オタクとかは好きって・・・」
「ひ!」
「違う! オレじゃねー」
「へんたい!」
「あー、もぅ。わかった。オレが悪かったって!」
「そーだ! このへんたい!」
こんなん収拾つくか!
そもそも謝って済む問題じゃねー!
(もお! 知るかー!)
「お! お前ら、早起きさんダナ」
チィルール登場。
めずらしく早起き。
そして呑気な声かけでした。
相変わらず空気読めないのな。
「しかし、お前ら。小便の仕方なんとかならんか?」
「あ!」
「ひ!」
デリケートな話題にストレートアタック。さすがだわ。
「いいかリリィーン、小便は股をグイッと開き、正面に向かってジョジョジョとするものだ。海老ぞって遠くに飛ばすものではない。そんなの自慢にもならんぞ? おお?」
リリィーン、顔赤面、何も言い返せない。
さすがチィルールだ。
オレ、噴出しそう。
「タローもだ。なぜに貴様は小便を顔面にかぶる? 男の事情ゆえ、詳しくは分からんが、貴様の槍は曲り過ぎなのではないか? だれぞ、腕の立つ刀鍛冶に打ち直してもらったほうがよくないか?」
(お、おまえー!)
だが言い返せない。
事情は話せない。
「まったく、騒ぎになって、結局、お前らの小便始末したのワタシだぞ?」
「ご、ごめん」
「すみませんです」
「ワタシに小便始末させるなど、なっとらんな、未熟者め!・・・ほら?」
「え?」
「はい?」
「だから、この、未熟者めー! ・・・ホレ・・・」
「ん?」
「?」
「お前ら空気読めなさすぎ! ここは『精進します』ダロお!」
「なんで?」
「へぇえ?」
「カーっ、だから『小便始末』と『精進します』・・・」
「お、おぅ・・・」
「あ、あああ、あぁ・・・」
チィルール、お前、天才か?
この場、なんとなく、なんともなくなったよ?




