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児童保護施設の子供たち

ルートてきにシリアスになっちゃうよね。

そもそもギャグ作品やりたかったはずなのに・・・


 時は夕暮れ。

 大猪は解体場の倉庫。

 吊るして血抜き。

 その後、分解・・・

 肉は塩と油脂を塗って天井から吊り下げる。

 内臓肉モツは葉っぱに包んで冷蔵庫へと。

 骨は洗ってアミ干しに。

 子供たち手馴れた手つきで進行。

 オレ、見てるだけ。あとチィルールも。なにもできないし、もう、くたくたです。


 「よぅーっし! 完了だぁ、みんな、おつかれさん」


 リーダーの発声で作業終了。

 みんなフウゥって吐息だしてる。

 でも、リーダーが一番頑張ってたんだよな。


 「みなさーん、おつかれさまー」シスターの登場。

 「サー! イエス!」

 「お風呂ー、準備できてるわー、夕食前にぃ、どうぞー」

 「サー! イエス! サー!」


 同じ返答でもみんな嬉しそうな口調。

 それと、シスターにはオマケが付いてた。

 シスターの足元にまとわり着いてるチビッコたち。

 こっちに来たとき会えなかった、年少組の子たちだ。

 

 (第一小隊の子たちだったな)


 十才未満の子が入るグループらしい。

 でもララリーのように素質のある子は、実行部隊の第三小隊に転属されるみたいだ。

 普段はお勉強や体育、お掃除や調理の手伝いなどやってるそうだ。

 コッチに来たときは授業中で様子をチラッと眺めただけだった。

 ちなみに第二小隊は高学年十歳以上の子たち、彼らは日中は街の学校へ行ってるそうだ。

 だからまだ会っていない。


 「タローさん、申し訳ないんだけどー」

 「なんですかシスター、そんな神妙な・・・」

 「この子たちの相手ー、というかー、ハグとかー、ダッコとかー、して欲しいんですー」

 「え? そんなの、べつに構いませんよ?」


 そんなことわざわざお願いされなくてもねえ?

 シスターの足元でこちらを覗いながらモジモジしてるチビッコたち。

 第三小隊に会ったときのリアクションとぜんぜん違うじゃん。

 実に可愛らしいい。


 「いいよ? おいで!」


 腰を屈めて手を開いたら、チビッコたち「わー」っと一斉に群がってきた。


 (なんだよこの子たち。かわいいなあ)


 適当にハグ、ダッコ。

 ナデナデしてやる。

 

 「きゃあ!」

 「きあゃー、きゃ!」

 「キァー・・・」


 女の子はもちろん男の子も「きゃぁきゃぁ」大はしゃぎ。


 (っははは! なんて愛らしい・・・ん?)


 「きぃいぃぃ!」

 「ひゃあああ!」

 「ぎゃぎゃああ!」


 様子がおかしい。

 はしゃぎ過ぎ?

 奇声をあげる子がチラホラ。


 「大丈夫、順番にね?」


 けれど、なんかヘンだ。

 いったんオレに抱きつた子、離れない。

 後ろからもしがみ付かれてオンブ状態。

 両手にもしがみ付かれた。


 (なんだコレ? マズくないか?)


 揉みくちゃにされるのは恐怖だ。

 不安を感じる。

 しかも、オレに近づけなかった子同士が奇声を挙げながら、突き飛ばしあいのケンカを始めた。


 「お前ー! どけよー! コロスぞー!」

 「キーぃ! ぎゃガッ! アアア!」 

 「おめー! ジャマ、なんだぅよおおお!」

 「てめーっ、なんで、いんだよ!」

 「死ねよ! どっか行けよ! 消えろよーっ!」

 「あああああああああああ・・・」

 

 (待て、これ、おかしいだろ!)


 カワイイ子たちの愛に溢れてたはずの空間が、イキナリ阿鼻叫喚、殺伐とした修羅場に変化した。

 暴れまくるチビッコたち。

 

 (異常だ。これ、なにがどうして、どうなった?)


 オレの理解を超えている。


 「はーい、みなさーんー、タローお兄さんー、困ってますよー、静かにしましょうねー」


 シスターが呑気な口調で注意するが、騒ぎが収まる気配はない。


 (また、いきなりブチ切れるんだろな・・・)


 と思ってたら、なにか第三小隊のリーダーに指先でジェスチャー。

 リーダーも肯き、配下たちへハンドジェスチャー。

 隊員達はみな肯き、実行する。


 「お前ら、離れろ」

 「き、ぎゃああ・・・」

 「なんも、心配ねーって」

 「はひゃ、はやひゃ・・・」

 「みんなを、ちゃんと、ハグしてくれるって」

 「ひゃ、はひゃ、ひゃ、いや、っややっや」

 「大丈夫だって、ニーちゃん、ソコいる。みんなをいい子いい子してくれるさ」


 「慌てなくても、消えないよ、大丈夫じゃん」


 「待ってて、くれてるんだよ? だから、コッチも待ってみよう?」

 

 「進んでもいいけど、止まってみて? だって、そんなに離れてないよ?」


 「必要だよ? だからこそ、ワザワザ言う必要もないんだよ? 信じてるからね?」

 

 第三小隊の子供たちが自分より小さい子を抱きしめ、落ち着かせている。


 (・・・)


 オレには表現のしようがない光景。

 でも第三小隊の指導の下、オレの前に並ばされるチビッコたち。

 順番に一人ずつハグ。

 第三小隊の子が十数える間限定、でだ。

 なにが起きているのかも分からず、オレも作業的にハグを続ける。

 でもチビッコたち、みんな必死にしがみ付いてくる。

 まるで自分をオレに染み込ませようとするかのように。

 そして十数えられたら、無理やり剥がされる。

 でもなにかをやり遂げた感じで満足そう。

 でも、オレ、すごい怖い。


 (なんだコレ・・・誰か・・・助けて・・・)


 「ごめんなさいねえー」


 シスターが列に割って入ってオレをハグした。

 チビッコたちと違って柔らかく温かい、大きくてそれは優しい。


 「え・・・」

 「この子たち、親に虐待されたり捨てられたりして、そのせいで誰よりも自分への愛を確認したがるの。だからお願い、信じてあげて・・・」


 (そういうことかよ)


 合点いったけど、オレ、泣くかもよ?

 気合入れなおしてハグハグだ、と思ったら、目の前にチィルールの背中。

 「よっしゃ、コーイ」みたいな感じで両腕をカポーンカポーンと開き閉じ。


 「どけよ!」

 「ちゃんと並べよ!」

 「ズルイことすんな!」


 チビッコたちチィルールを全否定どころか、同列扱い。

 チィルール、脇に外れた。

 

 そしてガクッリ・・・


 オレ、初めて見た。

 リアル「orz」


 

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