児童保護施設での生活1.3 後編
エピソードようやく結末です
タッシュは意識を取り戻した。もう安心だ。
シスターにオレとリーダーの手をヒールしてもらった。
事情を聞いたシスターには怒られた。
『あなた達がタッシュに傷ついて欲しくないのと同様、タッシュもあなた達に傷ついて欲しくはないはずです!』って、まぁ、正論です。
でも実際、危なかったっぽいのでもう二度とやりたくはないです。
「あれ? チィルールは?」
どこにも見当たらない。
どうりで静かなはず。
「オネーちゃんなら、剣さがすって」
なるほど。
世界を救う神の剣とかいってたもんな。
扱うのがへっぽこ剣士のあいつじゃ、世界の足元をすくわれそうだけど。
(ちょっと探してくるか。アイツ一人だと迷子になりかねないからな)
さほどの間もなくチィルールはみつかった。
川端の平たい岩の上で膝をかかえて座り込んでいる。
「おーィ、どーした? 剣見つかったか?」
「タロー! 無事か? ・・・よかった」
動揺した様子だったが、オレの左手を確認して安堵するチィルール。
「まぁ、なんとかな」
「くっ、お前は・・・なぜ、そうなのだ?」
「ぃ? オレ、なんかした?」
チィルール、なんか怒ってる?
オレには覚えがない。ダメなパターンだコレ。
小さく丸まってソッポ向くチィルール。
「今日出会ったばかりの子供のために、なぜそこまで出来る? わたしは途中で見ていられなくなったよ」
「それは・・・」
なぜ? といわれても、子供が死にかけてたらなぁ。
たぶん、チィルールはまだ子供だから、無条件で子供を助けようという気持ちは理解できない?
(でも、チィルールとはいえ、こんなことも考えたりするんだなあ)
そっちのほうが新鮮だが、オレとしても適切な言葉はみあたらないし、どうなんだろう。
「世界には『わたし』がいなければ、などと思いあがって、でもいったい『わたし』はなにをやっているのだか」
(また、なんか変なこと言ってる)
マンガとかアニメとか見過ぎるとこうなっちゃうよね。あとゲームとか。
(なんか落ち込んでるってことか。でもさ)
「チィルール? でも、君が倒したんだよ? あの化け物を」
「化け物? あんなのただの豚だ」
「でも、みんなのピンチだったしスゴかったなぁ」
丸まっていた背筋がピクッって反応。
「ん? まぁ、あの状況なら、わたしの出番だしな」
「おぅ、まさにヒーローだった」
「あれしきのことで、なにを言うか。タローは修羅場というものを知らぬようだな」
なんか立ち上げって向こうの空に胸張ってる。
「チ、チィルールの、おかげ、かな、幸い修羅場なんて経験なかったよ?(ん? 幻覚かな? 記憶が混濁するよ? あれれ?)」
「そうだな。やっぱお前にはわたしがいないとな」
まあ、元気でたならなによりです。
「剣、探しにいこう」
「ああ」
差し出したオレの手を掴むチィルール。
でも、しばらく歩いて二人ともすぐ手を離した。
(なんで手を繋ぐ?)
気まずい雰囲気で剣を探した。
しばらくしてそれは見つかる。
「あ、あれだろ?」
オレは指差す。
剣は大きな岩の上に突き刺さっていた。
ピカピカを光を放って自分の位置を知らせているよう。
「おう、よーし」
岩にあがって剣を抜こうとするチィルールだが「ふぬぬ」と言ってるだけで抜けない。
「オレが代わるから」
スポっと引っこ抜く。
(しかし、見事に突き刺さってたな)
バターに刺したナイフみたいに食い込んでた。
名剣というだけのことはあるということか。
「しかしこの剣軽いなあ」
「軽い?」
「うん、木刀みてえ」
「そ、そうか?」
こんだけ軽くないとチィルールには扱えないだろうな、てか扱えてないけど。
剣を返す。
「じゃ、戻るか」
「・・・」
「チィルール? もどろ?」
「あ、うん」
施設の子たちと合流。
タッシュはシスターに連れられて先に戻ったとのこと。
意識も混濁なく戻ってるそうで大丈夫のこと。
「これ、持って帰るの?」
「ああ、ウマイぜ?」
(た、食べるんだ・・・)
「タッシュの敵討ちだ」
(タッシュ死んでないよね)
チィルールが倒した大猪を網で覆って運ぼうとしている。
こっちはなにかと逞しい。
「手伝おう」
百キロ以上はあるこれを子供だけで運ぶのは大変だろう。
「せーの!」みんなで運ぶ。
やっぱ重い。でも誰も弱音吐かないでやんの。
途中何度も転びながら施設へとたどり着いた。
「ニーちゃんたちのおかげで今回は楽勝だったな」
肩で息してるリーダー、それと同様のみんなもウンウンと同調している。
これが現実でテレビ番組とかだったら感動シーンなのかもしれないが、コッチではなにげない日常の一コマでしかなかった。
異世界のほうが現実よりリアルってどうなのよ。
(あー、水飲みてー)
次のお下劣ギャグネタまでもうちょっと掛かるかな。
早めに辿り着きたいです




