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児童保護施設での生活1.3 中編 全


 「ヤリまし」

 

 ララリーが魔力発動する。

 重ねた手に淡い光。

 靄みたいな魔法の力が伝わってくる。


 「・・・っ」


 オレはその感覚に慌てて手を引きそうになった。

 だって手の中にミミズが這いずるような感触。

 悪寒。

 でも、リーダーは平然と耐えてるし、言いだしっぺのオレが抜けるはけにはいかない、よね?


 「ダメ! 治すんじゃない。治ってもらうんだ。」

 「はい!」

 「細胞一つ一つにお願いするんだ。生きてください、って!」

 「生きて・・・」

 「そう、ヒーラーが主役になっちゃいけない。見返りはない、献身なんだ」


 フィルルの言いつけがきいたせいか、手のひらの悪寒が和らいだ。

 今はジンジンした感じ。

 

 「治って? 生きて? タッシュ」

 「ヒーラーはあくまで献身、カッコつけちゃだめ・・・」


 オレの手、なんか熱くなった?

 魔法が変化している。

 

 (この子、凄いな。きっといい魔術師になるに違いない)


 ララリーには才能ある。

 と思ってたら、それにオレも反応。

 

 (マジックエールが、またかってに・・・)


 オレはマジックエール発動用に、ララリーの背に右手を添えていた。

 だが、実際に発動したのは、タッシュに添えた左手だった。


 (なんだよコレ、全然思いどおりにならないし)


 だが、奇跡だから思い通りにならなくて当然なのか?


 タッシュに沿えた薬草シートがスゴイ勢いで泡になった。


 「なにコレ?」

 「マジックエールが、かってに・・・」

 「これ効いてるってこと?」

 「いや、ヘンだ。上にきてる。タッシュにじゃない!」

 「まさか、おニーちゃん達の手が傷ついてるってこと?」

 「それって失敗・・・」

 「いや、違う!」


 リーダーの一声で混乱しかけた場が収まる。


 「薬草の成分が光になってる」


 確かにそうだった。

 泡が光の粒になって、ララリーの手にまとわりついている。


 「ララリー? お膳立ては整ったんじゃね?」

 「ぅん・・・」

 「ゴー、だ。キメろ。タッシュを救え!」

 「マー! イエス! マー!」

 「慎重に、ヒールは力じゃない、癒しの祈り」

 「イエス、フィルル」


 再念じ。

 

 「おっ・・・」

 「コレ、違う。効いてる」


 さきほどまでと変わって見た目も緑色に発光、だが感触からして違う。

 スゥーっとなにか染み込んでくる。


 「イケるな」


 オレたち二人は自然と手を引いてタッシュにヒールの力を直接充てた。

 緑色のキレイな輝きがタッシュを包む。 

 後は見てるだけ、大丈夫と確信できる。


 全身を覆った緑色の繭がパァッと弾けて収束。

 ララリー、力尽きてフィルルに支えられる。


 「やったのか?」

 「タッシュ、大丈夫なの?」

 「顔色は・・・悪くない! これ、いいんじゃ?」

 

 土色だったタッシュの顔色に血の気が戻っている。

 HP復帰か?


 「どうやら峠は越したって感じか」


 オレ、安堵して地面にへたり込む。


 「なんじゃ、これぇ」


 落ち着いてみると、オレの左手、青アザまみれに、真っ赤な内出血まみれで、赤・青・紫・色みどろ。

 

 (やっぱ、けっこうマズかったっぽいんだ)


 間接もつき指したみたいな鈍い感触。あとで痛みそう。

 リーダーの手も似たような感じで、視線があってへへへと苦笑い。


 『ドーン』いきなり衝撃音。しかもすぐ隣で! なにか落ちてきた。

 

 「な! え? シスター」


 砂煙舞うなかにいるのは着地姿勢のシスター。

 なにこの人、空から降ってきたの?


 「タッシュ!」


 あわてて駆け寄り、ヒールをかける。


 (どういうこと? 傷が治りかけてる。フィルル?)


 だがフィルルはシスターの視線に首を振る。


 「ララリーです。シスター」

 「ララリーが?」


 怪訝なシスター。

 だが今は事情より、タッシュのヒールに専念する。


 「シスター、オレにも手伝わしてください。失礼します」


 ヒール中のシスターの手のひらにオレも手を重ねる。

 実はさっきちょっと気付いた感じがある。

 ヒールは緑色。

 漠然としてたけど、魔力には色がある。

 赤・青・黄の三原色。

 でもそれが何を意味するか分からなかったから全部活性させてたけど、緑は癒し。

 なら話は早い。

 青と黄色を活性化させれば、緑のヒールが活性する、ダロ?


 (実験っぽくなったけど、タッシュは大丈夫っぽいし、ヒーラーのシスターもいるし)


 「マジックエール、キセキを起こせ」


 オレは青と黄をちょいっといじってみる。

 輝くマジックエールの奇跡。

 シスターの手が鮮やかに輝く。


 「いや! きゃぁ!」


 シスターは驚いて、手を離した。

 って大人の女の人の悲鳴ってカワイイ、興奮する・・・じゃない。

 で、それより失敗した?

 

 「すみません、マズかったですか?」

 「いえー、驚いただけですー。魔法入れられたの初めてでしたしー・・・」


 シスターは改めてタッシュに手を添えた。

 頬が紅らんでいる。


 (なにこの子・・・聞いてはいたけど、これほどのモノなの?)


 シスターの手が緑色の光に包まれている。

 

 (コレは、もはや治癒じゃない。蘇生レベルのキセキ・・・)


 「タローくん、もおー、いいからー」

 「え、はい」

 「大丈夫ー、タッシュー、平気だからー」

 

 シスターの発言で、まわりのみんなも安心した様子。


 でもシスターだけは・・・


 (タロー、この子、危険すぎる)


 

返答しないから、悪口でいいから、なんか言って・・・くだ

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