児童保護施設での生活1.3 中編 半
また変な感じに切れちゃった。すみません。
「アンタ、ヒーリング、やったことないでしょ!」
「でも、仲間をホッとませんでし!」
「そんなの私たちだって・・・」
なんかフィルルとキルール、抱き合って泣いちゃった。
この状況、無理だと分かっていても、試さなくちゃなららい場合だと思うんだけど・・・
「やります」
タッシュの腹部に手を添えるララリー。
「ダメ!」
フィルルがその手を払いのけた。
「なんで・・・」
「ダメなの・・・だって、ヒーリングって、失敗したら・・・」
フィルルの尋常でない様子にまわりも行動できなくなる。
フィルルとキルールは知っている。
ヒーリングの危険さを。
「だって死んじゃう」
「フィルル」キルールが気遣っている。
「昔、怪我した子犬拾ってきた。そのときシスターがいなかったから私がかわりに」
「あのときは、シスターが手遅れだったって埋葬したんじゃ」と他の子。
「私がヒーリング・・・試した・・・そしたら・・・」
フィルルのことをキルールが抱き寄せた。
「破裂し・・・た。死んじゃった・・・」
そのとき、外から戻ったシスターが見たのは、破裂した子犬の血しぶきを浴びたフィルルとキルールが、ショックで泣くことすらできずに茫然自失としている状況だった。
「このコはどっちにしろ間に合わなかった。だから仕方ない」
シスターは二人をたぐり寄せ抱きしめた。
「ごめんなさい。試したくて、だってシスターも私の能力褒めてくれて・・・」
だが嘘が通じるほど二人は子供ではなかった。
「うん。あなたは才能あるよ? だからコレはただの失敗。あなたの経歴の汚点になるから証拠隠滅しましょう」
「ショーコインメツ?」
「そう、なかったコトにするの。だからこの子犬サバいて内緒でオヤツにして食べちゃいましょう」
「!!」
不謹慎な提案に、シスターの腕の中で、二人は抗議のジタバタジタバタ、ベシベシ、シスターを叩く。
そして「ワンぅワンぅ」と泣き叫んだ。
後になって二人も気がついた、シスターが自分達の罪を少し引き受けてくれての発言だったのだと。
自分達以上の汚れになってくれたのだと気付いた。
「ヒーリングは絶妙な調和によってのみ発生する奇跡。テキトウに試していいものじゃない」
もう誰も反論できない。
(ヤバイ、この状況で、オレ、冴えたやりかた閃いた。でも・・・やりたくねえ)
でも、そこでリーダーの一言。
「ララリー、お前はどうしたい? お前自身が決めろ」
それは残酷すぎるだろう。
幼女になにを要求してるんだ。
やっぱリーダーとはいえ、しょせんは子供ということか。
(拒否だ、ララリー、君がそこまで責任をおう必要はない。てか、幼女に答えが出せる問題じゃねー)
「ワタシ、助けたい。タッシュ、助したい。なにもしないままコーカイ、もお、いやなの・・・」
ララリーの瞳から大粒の涙。
丸々のまんま地面に落ちた。
「わかった。命令する。ララリー、タッシュを救え。失敗したら隊長の俺の責任だ」
(お前らカッコつけ過ぎだろ!)
「しゃーねーなぁ!」
やりたくはなかったがこの流れじゃ仕方ない。
「お兄さんに任せな?」
オレはタッシュの傷口に左手を乗せた。
「ほら、ララリー、オレの手越しにヒーリングしな。オレの手がヤバくなったら止めればいい」
「バカか! なに言って・・・」
「そんァの! だめェ」
「いいから。オレの手、ララリーにやるよ。タッシュを救ってやろうぜ。フェフェフェ・・・」
「・・・」
カッコつけたつもりだけど、なんか震えた口調。
ヤバイ、みんなに見透かされたっぽい?
「わかったよ。まったく漂着者ってカッコつけばっかだな」
と言いながら、リーダーもオレの左手に手を重ねた。
「お前!」
「ララリー、コイ! やるんだ」
「でも・・・」
躊躇してる。
元々は一人で責任を背負うつもりだったのに、関係ない他人を巻き込んだ。そのことで改めて責任の重さを感じたのだろう。
「やるよ! ララリー!」
「フィルル?」
ララリーの手を引いたのはフィルルだった。
「タッシュを助けたいんだろ? 男二人にここまでさせといて、女がスタるよ!?」
「フィルル、手伝ってくれるの?」
「サポートだ。私にはまだ自信が、いや、恐怖しかない。だから、ララリーがやるんだ」
フィルルに触発されララリーも決心がついたようだ。
オレ達の手の上に自らも重ねる。
フィルルもちょっとだけ手を添えた。
いよいよ始まる。
オレ怖い、でもやるしかない。
「いいか? 後悔だけは絶対しない! どんな結果になってもだ! いいな!」
「タロー! イエス! タロー!」
オレ自身に向けた決意でもあったが、みんなもやっぱり怖いよね。
全員顔色真っ青。
チィルールの顔は・・・見れなかった。
どっか行っててほしかった。




