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児童保護施設での生活1.3 前編

シリアス回前編です


 みんなでお片づけ。

 と言っても全部現地調達品だから手間はない。

 燻った火炎石を川に漬けて完全消火。そのまま冷ます。

 残飯屑は土に埋めたり、川に流す。

 それはそのまま肥料や魚のエサになる。

 それでお終い。


 (遭難中のサバイバルと違ってキャンプみたいで楽しかったなあ)


 同じことやったはずなんだけど、全然ちがうもんだ。

 また冒険(遭難)することもあるかもしれないから子供たちからいろいろ教わっとくのもいいかも、なんてノンキに考えてたら、いきなり、

 

 『ピィー!』と甲高い口笛の音。


 (なに? なにが起こった!?)


 口笛を聞いたまわりの子供たちの様子が尋常ではない。

 手に持っていたものを地面に落として、口笛の鳴ったほうを見ている。

 突然の緊迫感に動揺。

 オレもドキドキしながら視線のさきを追った。


 「なんだアレ? 獣? ヤバイ!」


 口笛の主と思われる少年の前に、牙を生やした猪? 闘牛場の牛みたいに巨大な猪みたいのが少年の面前にいる。


 「リカバぁあ!! ハリ! ハリィィィ!!」リーダーの絶叫。


 全員一斉に動き出す。事態は急展開。

 だが、オレはこんなとき、なにをすればいいのか見当つかない。

 呆然と子供たちの素早い動きに見とれるのみ。


 (だがとりあえず、近くに!)と思った次の瞬間、その少年は大猪の体当たりを喰らって宙に浮かんだ。

 宙に舞った少年。腹部から真っ赤な血が糸を引いた。


 (嘘だ。さっきまでみんな楽しく・・・)


 落下する少年を仲間の子供たちが受け止めた。

 岩場への落下激突は避けれたが。


 「レスキュ! カラーレッド!」

 「ハリ!」

 「リカバ!」

 「ラ・バッガー!」

 「ファマ! チェッ!」

 「ハリ! ハリィィィ!」


 混乱している。

 

 (なんだコレ・・・)


 いやコレ、戦場だ。

 『死』が目前にゆらゆらしてる。

 『命』がゆらゆらしてる。

 オレ動けない。

 動きたいのに、足が動かない。


 (なんでオレ、じっとしてる? 足の感覚がなくなった?)


 前屈するみたいに不恰好な姿で傍の石を拾い上げ、膝に打ちつけた。

 (痛い)感覚はある。

 じゃあ心だ。

 胸に石を打ちつける。でも何も変わらない。

 (心ってココか!)石で頭をぶん殴った。

 

 「が!」


 ヤバイ、やり過ぎた。

 目がクラクラ。縦も横も分からない。


 (意識失うな・・・心もて・・・子供たちが! 仲間が!)


 かろうじて、目の前の映像を意識。

 突き飛ばされた被害者はタッシュと呼ばれたキノコの少年。

 腹部を庇ってる。そしてまわりの子が彼を運ぼうとしている。

 追撃しそうな大猪の前に立ちはだかったのは、あの魔術師マジュチュシ志望の幼女ララリー。

 大猪の向け魔法を投げつけている。

 手の中に灯った半透明の白いそれを投げつけるのだが、いかんせん所詮は幼女、標的に届かないしパンパンと弾けるだけの炎ではダメージは見込めない。かろうじて足止めになってはいるが。


 (このままじゃ、みんな殺される。いやだ! 絶対にイヤダ!)


 オレは前にでた。

 あとは自然に走り出せた。


 「うおおお!」という雄たけびがオレのものだったなんて気付かなかった。


 子供と大猪の間に立ちはだかり、手にした石を大猪に投げつけた。


 「ふざけんな! コイツらに手をだしたらブッ殺ナス!」


 ちょっとナスった。

 しかもオレ頭から顔面に血が滴ってる。戦闘前になに流血してんだか。


 「おニィちゃん、血が・・・」


 心配してくれてるララリーはホントやさしい子だなあ。


 「コロんだの?」


 うん? いや自分でぶん殴ったんだよ?


 「ララリーも逃げて!」

 「ダメだもん。 魔術師マジュチュシはみんなのために闘うの」

 「いいから、ここはオレにまかせてみんな逃げろ!」

 「ニィーちゃん、無茶すんな!」


 カッコつけたものの、確かにリーダーの言うとおり無茶なんだなあ。

 唯一の武器であった石は初手で投げつけちゃった。

 素手でこの化け物みたいのとやり合えるわけないし。

 どうしよう?


 「タローにばかり、カッコつけさせるわけにもなるまい」


 オレの前にチィルールがさっそうと登場。

 そういや、いたな、こんなヤツ。


 「おお!」とか子供たち言ってるけどコイツはチィルールなんだよ?


 みんな主役ヒーロー登場みたいに感激してる。

 チィルールも完全主人公気取り。


 「タロー! マジックエールだ! ウーんっと熱いの、一発入れてくれや! おお!?」

 「お、おぅ・・・」


 でもオレは知っている。

 コイツはチィルールだ。


 「マジックエール! この子に力を!」


 オレはチィルールの頭をポンポンした。

 魔力が活性してチィルールの身体が輝き始める。

 

 「オオ!」と子供たち。

 

 でも、チィルール振り返り、恨めしそうにオレを睨む。


 (だって、お前、背中は髪の毛で隠れてるし、頭じゃなかったらケツしかないよ?)

 (あとで覚えてろよ?)


 と言わんばかりだが、いまはそれどころでない。


 「いくぞ、鬼畜! 我が名はチィルール! その魂に恐怖と共に刻み付けるがよい!」


 カッコよく抜刀、その神のツルギを頭上に掲げ・・・ヒュンヒュンと回転しながら神のツルギは宙に舞って、どっか飛んでいった。

 『何・・・だと?』って感じで子供たちみんな驚愕してる。

 初手、投了。

 0が最高得点。

 見たかいチビッコたち、それがチィルールだ。

 オレは知ってたけど、みんなショックだろうなあ。


 だが! 大猪! なんでお前も驚いてんの? ソコはお前、喜ぶトコだよ?


 (なんでヘンに空気よんでお前まで驚愕してるかな?)


 やっぱチィルールはチィルールでしかない。

 当の本人は剣がすっぽ抜けて、右手を掲げた『はーい、センセー!』みたいなポーズ。

 どうすんだコレ?

 なんか右手、グーパーグーパー、ニギニギしてるけど、すっぽ抜けたのお前が一番よく分かってるはずだよね?

 この状況でソレはさすがにシャレになってないよ?

 ぶん殴りたい、この後頭部・・・

 

 

タイトル通り、カッコはつけさせません

次回もシリアス回? 後編・・・中編になるかもです

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