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児童保護施設での生活1


「こっち、コッチ」と子供たちに促されて、付近の原生林を進む。急斜面の崖をのぼり、また崖をくだり、どんどん、山奥へ。


(ヤベエ、オレ、もう方角もわからん)


 だけど、子供たち、平然と進んでいく。


「タロー、まだか? ヒィヘェ」


 チィルール、早々のギブアップ宣言。まぁいつものことなので無視だ。


「もぅ、ちょっとだよ?」

 

 五、六歳くらいの女の子が親切に教えてくれる。

 息も切らしてない。


「ありがと。頑張るね、オレ達」

 

 にっこりと、うれしそうな女の子の表情。

 リリィーンの足にしがみ付いた二番目の女の子だ。

 あのタックルは見事だった。


「ニィーちゃんたち、ダラシネーなぁ」


 そう言ったのは、リーダーの男の子。

 うしろを着いていくオレらに呆れた様子。

 十二才くらいか? 中学生手前の感じ。

 リリィーンの顔面に屁をコいた子。


「ほら、着いたぜ」


 振り向いて、先を指差す。


「へえええ。いいじゃん」


 オレはちょっとだけ感動した。

 そこには、小さく三段に弾む清流(滝?)

 流れの先は窪んでゆったりと池みたいに。

 そしてその先はサラサラ川になってる。


「涼しい」


 見た目も涼やかさもだが、じっさいに涼しいのだ。


「俺等の秘密の場所。秘密基地だからな。秘密だぞ」

「ん。分かってる。バラしたら先っちょチリチリだろ」

「分かってんじゃン」


 リーダーとちょっと男の友情。

 先っちょのチリチリに賭けて。


「腹減った」

「チィルール、あのなぁ『ぐうウウ』あっ」逆にコッチの腹が鳴った。

「タロー? きぃさぁまぁー、いぃまぁあ?」


 まさかオレがチィルールにメシネタで突っ込まれようとは、不覚!


「はは! 待ってろよ。ニィちゃんたち」


 リーダーのガキ。他の連中に――


「ミションG パタンA ハリアプ!」

「イエス、隊長マー!」


 リーダーの号令に従って一斉に動き出す子供たち。各自、原生林の中に散らばっていった。

 普通なら心配になるが、ここは彼らにとって遊び場みたいなものなのだろう大丈夫のはず。


「ま、こっち来な?」

「なに?」


 残された二人、リーダーに促されて滝の反対側へ。


「ここ、ほら、ココ」 岩と岩の隙間から水が噴出していた。

「湧き水?」


 なんで滝そばで湧き水を?

 いくらでも、そこらの水飲めばいいじゃん。

 でも、リーダー、その湧き水をすごくおいしそうに飲むから、やっぱ期待するじゃん。

 手で受け止め口に。


「ん? ゴホッ、でもうま!」

「だろ?」


 旨すぎてムせた。


(水って味があったんだな!)


 初めて知った。


「甘露、甘露」と水を飲むチィルール。


(甘露ってオマエお婆ちゃんかよ)


 でも、その甘露って響きこそ、この水にピッタリ相応しいと思った。

 ノドの乾きなんてスポーツ飲料がぶ飲みでもすぐには満たされないのに、ナニこれ、この水は数回口にふくんだだけでもうノドが潤っている。水がノドに直接染み込んでくるみたいな感覚。

 魔法の水みたいと思ったけど、現実だって大自然の中の湧き水はこんな感じなのかもしれない。


 しばらくすると、原生林に散っていた子供たちがちらほらと戻ってきはじめた。


「ほら、コレぇ」小さな両腕の中いっぱい、自慢気に見せるそれはアプリコットみたいな木の実。

「へぇ、いっぱい取ってきたねぇ。スゴイね」

 

 得意げにニッコリの女の子。


「オレはコレ」とキノコを見せる男の子。

「お、立派なキノコじゃん。スゲー(キ、キノコかぁ……大丈夫なのか?)」

「マツリタケじゃん。極上品だせ。タッシュのやつニィちゃんたちのために奮発しやがったな。そいつ鼻がいいからキノコ取るのウメーんだ」

 

 リーダーのお墨付きがでたから、食中毒とか幻覚とかの心配はなさそうか。


 どうやら子供たち食材集めしてるらしい。

 おのおのがイロイロな成果を得意気に見せてくれる。

 オレ達をもてなしてくれるようだが、やっぱりこの子達自身もパン二個での労働はキツイのだと思う。


(不憫だ。お金さえあればこの子達だって)


「みな、楽しそうよのぉ」

「チィルール」

「ワタシにも知識があれば獲物を収穫して自慢してやりたいとこなんだが。くやしいな」


 確かに楽しそうだ。不憫に思うのは失礼なのかもしれない。

 でもオレはもし可能なら、この子たちをジェットコースターに乗せたり、ソフトクリームを食べさせてやったりしたいと思ったんだ。それはやっぱりエゴなのかな。わからない。


『ホラっ、コレえ!』とハモってる二人の元気な女の子の声。

 声につられて振り向くと、そこにあったのは恐竜の顔。


「おわ! え? なにソレ、トカゲ? とヘビ?」

「エへヘ、どお?」

「スゴイでしょ」


 その二人の女の子の獲物はワニの子供みたいな大トカゲと2メートルはある大蛇。

 犬でも抱っこするかのように大トカゲを抱っこする子。

 と、大蛇のほうにいたっては女の子自身が身体を巻きつかれていて、どっちが捕獲者かわからない様子。


「どうすんの? ソレ、飼うの?」

『食べるの!』


 女の子二人顔を見合わせたあと、オレに抗議するかのように同時に声をあげた。

 

(マジ? でもそれよりも)


 大トカゲと大蛇が女の子の腕の中越しに威嚇しあってるんだけど、大丈夫なの?

 と思ったら、二人、おのおのの獲物の頭にグーパンチ! 全身脱力する獲物。二匹ともお亡くなりに?

 

(たくましい)

  

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