表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/303

痴情のモツレ


 金色蛍さんとローリィさんとお別れ。

 そしてシスター・ユーニィに案内される施設、敷地建物。

 それなりに立派な教会とは別に、裏手にある児童施設の建物はちょっとアレだ。


 (まんま田舎の学校だな)


 教会の影に隠されてるような質素な建物。それが児童施設。

 木造二階建ての校舎、それが一番しっくりくる表現。

 でも校舎前に校庭はない。あるべき校庭の場所は緑に覆われた畑だった。


 「みなさーん!」ユーニィが誰もいない畑に呼びかける。

 「……」


 (誰もいないな)


 このシスターだがローリィさんっぽいというか、いやリリィーンっぽい感じでノホホンと平和な感じの人だ。天然とか言うか、シスターだしそんな感じなんだろうな。


 「あれぇ? みなさーん?」

 「……」反応ないし・・・

 「みなさーん?」

 「……」いや、いないから。

 「あの、シスター? どっか他の場所へいるんじゃ・・・」


 「ゴルゥラァア! 返事せんのか? 貴様ラッアア!」突然ブチキレたシスター・ユーニィ。


 (ギョゥワアア!)オレ、マジびびる。小便でそう。でも・・・


 「サー! イエス! サー!」


 と言いながら畑の新緑の中から子供達がニョキニョキと立ち上がり姿を現す。


 (金色蛍さん! 虐待あるでしょ? マジであるでしょコレ!)


 ネイティブな差別は、するほうもされるほうも誰も気付かないって聞いたことがある。


 そして整列させられた子供達。


 「みなさんに新しいお友達を紹介します」

 「サー! イエス! サー!」 


 一生懸命声を張り上げる子供達に、オレはなんていうか・・・いと、あわれ。


 「チィルールさんと、タローくんです。みなさん仲良くしてくださいね」

 「サー! イエス! サー!」 

 

 「よろしく頼む」とチィルール。

 「みんなヨロシクね?」とオレ。

 「・・・イェ・・・ス?」


 なんか子供たちドヨメイテいる、というか完全にコッチを値踏み?


 「こら、お前ら、客人に失礼だろ?」


 と言ったのは、リリィーン。

 さすが施設OBの先輩。初めて頼りに! 


 「あ! リリィーンだ」

 「リリィーンだ」

 「うわぁ、リリィーン!」

 「リリィーン!」


 子供達、リリィーンに向かってダッシュ。

 我先にと、飛びついた。


 (あんなヘボでも子供達からしたら、やっぱいいお姉ちゃんなんだな)


 「ルート・ロック!」五、六歳くらいの男の子がリリィーンの足首にしがみ付いて叫んだ。

 「バック・アップ!」同い年くらいの女の子がその男の子の上からさらにしがみ付く。

 「センター・アタック!」他の子が、足元の子をどうにかしようとしているリリィーンに体当たり。

 「ドン」と突き飛ばされたリリィーンは仰向けに倒れる。

 「オール・ファイア!」リーダーと思しきガキ大将の男の子の号令の元、子供達、一斉にリリィーンに襲い掛かる。

 ガキどもリリィーンを取り囲み、いっせいにガブリと噛み付いた。


 「ひゃあああ!」リリィーンの悲鳴。

 

 しかもそれだけではない。

 リーダーの男の子、リリィーンの顔面に馬乗り、『プウゥ・・・』と屁をこいた。

 愛されてるのか? これ・・・


 (なんとも言いいようが・・・うわあ・・・)


 でもヒドイとしか言いようがない。


 「こら! お前ら、やりす・・・アレ?」


 ちょっと怒鳴ったらみんな一目散に逃げ出した。

 あげく離れたとこからみんなでアカンベーとかしてる。

 昭和の子供っぽい。かわいい。


 「リリィーン、大丈夫?」

 「み、見るなー! コッチ、見るなー!」


 うつ伏せになり、「およよーん」って感じで泣いてるっぽいけど。

 うーん? まぁでも君への評価って、今でも前からそのまんまだよ?


 「大丈夫。いつものリリィーンじゃないか」

 「ぐぬぬぬぅぅぅ」

 「ほら、元気をだして?」

 「ひゃあ!」


 お尻ポンポンしてやったら悲鳴あげやがった。


 「あ、タロー貴様、コゥラあああ!」

 「イテ!」


 チィルールのヤツ、オレの尻、蹴りやがった。


 「女の尻とみれば見境なしに『なでなでポンポンなでポンポン』と、貴様それでも男か! お仕置きしてやる。尻を出せ!」

 「はぁ?」

 「お尻、ペンペンだ!」

 「女が男の尻触るのはアリなんか!」

 「シツケのなっていない男にはお尻ペンペンか、先っちょをロウソクの火で炙るかのどっちかだ!」

 「先っちょ? ってなに言って・・・」


 オレは驚愕した。だってその台詞を聞いた施設の子供たち(男に限る)が一斉に内股になり股間を隠した。


 (アホか?・・・)

 

 「尻を出せえ!」

 

 オレのズボンにしがみ付くチィルール。脱がしにかかってくる。


 「やめろヘンタイ!」

 「ヘンタイは貴様だ!」


 「いいザマだ! もっとヤレ! 争い合うがよい。あはははは・・・」


 リリィーン、お前、この状況どう見えてるの?


 「はぁあーい、みなさん、コレがテレビとかでよくある痴情のモツレです。よーく覚えておいて下さい。みなさんはこーゆー大人になったらダメですよーぉ? いいですね!」

 「サぁ、イぇ、サー・・・」


 (シスター! なに変なコト言ってんの? 子供達、誤解するでしょ? ヤバイ、この施設イロイロやばい)


 そしてオレ達三人の醜態が子供達にどう記憶されたかは知るよしもなかった。 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ