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ポポやんの次

「助けてくれーぃ」


「え! なに?」


 いつものように娯楽室で暇を持て余した彼らのところに、ポポやんが飛び込んできましたが、要領を得ません。


「まずいのだぁー」


「は?」

「なに?」

「なぜか?」


 だから、みんなも困惑します。


「ワシ、ヤバい」


「はぁ……」

「うん?」

「なぜか?」


「じつは……」


 今更、誘拐犯の黒幕を被ってしまったことを告白するポポやん。


「だから、あのね? ワシ、君らを誘拐した主犯になってるの?」


「だよねー」

「知ってるーw」

「なぜか?」


 セイヤとルルーチィは何となく察した様子でケラケラぁ。

 でもチィルールだけは『なぜか』のご様子でウヌヌヌぅ。

 たぶん、チィルールだけは状況を分かってない。


「ワシって誘拐犯!?」


「あー それなぁ」

「っな、今更?」

「なぜか?」


 ポポやんって、誘拐犯そのものなのに実は今まで自覚なしだったのです。


「だって、ワシ、姫殿下を東海賊から救出して、そっからマンエンに招待するって……」


「救出?」


 その言葉に反応するセイヤ。そしてポポやんに睨みを利かせる。

 なぜならその思考は敵対国のプロパガンダでしかないからだ。


「だって!? 姫様は東海賊に誘拐されたと?」


 これがポポやんの認識。

 でも事実は違う。

 だからセイヤが反応したのだ。


「ごめんポポやん。それって半分正解だけど半分間違ってる」

「なにぃ?」

「東海賊? そのクジラ一家にチィルールを誘拐させたのは間違いなくマンエンだ」

「は?」

「頭領の娘がマンエンで治療受ける約束だったろ?」

「うむ」

「じゃあ誰が何のためにチィルールを誘拐したの? 取引だったんだよね?」

「あ……」


 そこでようやくポポやんは全体像に気付いた。


 彼自身も姫様救出のヒーローにはなれない。こと、それはポポやんも最初から分かってはいる。馬鹿ではないもんって思ってた。

 だからこの件が終わって、表向きには評判の良い貴族の息子あたりがこの手柄を横取りすることになることは重々承知だった。

 そしてポポやんは、その貴族自身の『コノ』弱みに付け込むことで莫大な益を得れるのだ。名より多大な実である。

 未開の東の果てに正体不明の新造戦艦で向かい、クジラ一家よりチィルールを受け渡されるだけの手配だった。簡単な仕事であるが、やや危険な任務。だが、ポポやんはすでに、これ以上の汚れ仕事も十二分に請け負ってきた自負もあった。

 だからその後、目的が達成成されたなら、自身はこのことに触れず。面識のない誰かに手柄はバトンタッチ。

 そこになにか政治的な取引があるのだろうと、ポポやんも思っていた。

 けれどそれは深く考えてはいけない。それは大人の都合である。

 幸福になるモノあれば、また不幸になるモノもしかりがこの世の生業。ゆえに今回こそは自身が幸福立場になると確信してたのだ。

 だから単純にそれだけで終了のはずだった。

 酸いも甘いも嚙み分けた大人としてやり過ごすはずだった。


 けれど、である。にしては不手際が多い。

 目前のセイヤやルルーチィにしてもだ。


(まさか!? 政治的取引は成り立っていない?)


 これにようやく気付いたポポポやん。


 母国マンエンは最初のゼロからどんな手段を用いてでもチィルール殿下を確保する意思しかないようだ。

 

(やっと分かった。ワシ、最初から嵌められたんだわな。そしてどう転んでも切り捨てられる……)


 それは目的を達成しようとしまいが、である。


(ワシって愚かだなぁ……)


 故郷の家族を思いり虚空を眺める。

 それは無言の謝罪。

 と、同時に、かの人に跪く。

 そして発した。


「チィルール殿下、どうかお助けください」


「うむ。申してみよ」


 とチィルールの返答。


 これはポポやんの家族と命の賭け。

ポッポーやん!!

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