貴族リリィーン様、登場
久々登場!
「別にいいんじゃね?」
「仲間が敵に捕まったんだぞ?」
リリィーンとトロイの会話。
「んえ?」
「あぁ?」
敵国のマンエンに拉致られたセイヤとチィルール姫、それにルルーチィが乗った船が海中を(?)この船の真下をすり抜けたぞ! って話しに反応したリリィーンの様子。なんとも呆気ない。
だからそれにトロイがヤキモキするのも当然である。
しかも……
「私、元々マンエン国の人ですがー?」
「ぐぬーっ」
トロイ、ブチ切れ寸前。
「なら、なんで、君は敵国であるオクエンの援助で、そんな感じなんだーっ!!」
彼女の言うことまったく至極。
なぜならリリィーンはきわどい水着姿で、ここ戦艦の艦上でビーチパラソルの陰でゆったりデッキチェアに寝ころび、そばのテーブルにはブルーハワイアンの怪しげな真っ青なジュースがあって。
そのジュースをストローごしにチュチューと啜ってみせるのだ。
「わたくし、元々はオクエンの豪商貴族のご令嬢であらせられれられられますが。なにか?」
彼女の家系、史実的にはその通りだ。
けれど、それは前戦争前の話。
しかしである。
チィルール殿下救出の手助けをしたということで、オクエン国にその権利の復活が認められたのだ。
地方ギャングの末席から、いきなり貴族(現状敵国だが)への復権が認められたのだ。(ただし、施行はチィルール殿下を無事確保した後なので、調子に乗るのは……時期尚早)
「ぬーうっ!! ……ああ、なるほどな!」
「トロイさん? あなたも、これからは心得るように?」
「くっ……」
「なにか?」
「いえ」
「ほーほっほっほっぉ! っっぐ! ゲほげっほ…… だめだコレ、練習しとかないと駄目っぽいわ。上流貴族のたしなみって、めんどくさいなー」
むせたリリーィン、相変わらず努力の方向が違う。
「……では、リリィーン様」
「うむ?」
「このことは金色蛍のアリス様にも伝えておきます」
「え……?」
金色蛍の二つ名を持つアリスはリリーィンが所属していたマフィアの頭領である。
ちなみに彼女はアリスから借り受けた最上の刀をへし折ったまま、放置してます。
「今後、リリィーン様に失礼がないよう、ちゃんと畏まるよう、確かに伝えておきます」
「あ? え? ええっ、ま、まって――」
慌てふためくリリーィン。
「腹心のローリィにもちゃんと伝えておきます。今後、あなたのことは『リリィーン様』と呼ぶように! とっ」
「そ、そんなのダメ―!!」
「ええ? なぜですかあ? あああ?」
「だ、だって……」
更に……『ごにょごにょごにょ……』
「ふぇえ? ……いや、いや……いやぁあ!」
「はーてーぇ? なぜゆえにーぃ?」
「……ヒィ」
「なーぁああにぃいいかぁあああああ!?」
歪にゆがんだ表情のトロイは、しゃがみこんだリリーィンに頭上から追い打ちをかけた。
大陸全土をほぼカバーできる耳通信が可能なエルフ(ハーファ)の情報屋トロイ、地方ギャングのしがらみなど全てお見通しであった。
「しかも、ごにょごにょごにょ……」
「ヒイ!! ……ヤ、やアめてええええええー!!」
悲鳴をあげ真っ赤な顔して泣き叫ぶリリィーン様。
「なら、今後私の言う事にちゃんと従うように!」
「ふぇ?」
「アアっ!? なんか! 文句あるかーっ!?」
「ひーっ! ……ふぁっ!! ああわああああ、はあぃいいいい」
「よーぅしぃー」
トロイに土下座したリリーィン。
調子に乗って、まーた失敗しました。
誰か助けてあげて?




