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ポポやん


 一行が拉致され数日が過ぎた。

 狭い潜水艦の中では何もやることがない。というかなにもできない。


「退屈だな」

「キーチェスをしようぞ」

「いえ、オセロのほうがよいかと」


 誘拐された彼らは潜水艦内にあるリビング室で暇を持て余していた。

 ここは一応、船内作業クルーの娯楽室だった。でも、クルー達、二十四時間就業らしくて滅多に人は来なかった。どうも人員不足らしい。

 ゆえに誘拐された被害者であるセイヤ、チィルールとルルーチィの専用遊び場になってしまっていた。


「キーチェスはチィルールに勝てないし、オセロはルルーチィが弱すぎて面白くないし」

「ふふむ!」

「ぬぬぬー!」


 セイヤの発言。と彼女らのリアクション。

 キーチェスとはコッチの世界のチェスなのだが、セイヤはルールが覚えきれずにチィルールに全敗しているのだ。

 かわってチィルールにとっては、滅多に勝てないキーチェスで勝てる唯一の相手がセイヤであって楽しくて仕方ないのだ。

 一方、ルルーチィはセイヤに教えられたオセロという単純なボードゲームに勝てないせいでヤキモキしてる状態。

 しかしである。

 コツさえ掴めればセイヤもルルーチィも相手に楽勝できるだろう。

 けれど、敵に拉致られている今、ゲームのことだけに思考をわり割くべきではない。

 彼らの思考半分は今後のことについて利用されている。

 遊んでいる状況を見せることは敵側の油断も誘えるかもしれない。

 というか今はそうするしかないのだ。


「おやおや、お気楽なご様子で」


 皮肉めかしたことを言いながら、セイヤ達を連れ去った本人のご登場。黒フードを被っていた男だ。


「これからどうなるか想像もできませんようで」


 不遜な態度。

 絶対的有利な状況で三人を見下しているのだ。


「あー、ポポやん。一緒にやる?」

「そやつ、弱すぎてツマランぞよ」

「ポポやんって、今までどうやって生きてこれたの?」


 その三人に気安く呼ばれてるポポやん。


「誰がポポやんじゃ! 私の名前は「ポポポッポ・ポーヤーゥン」だっ!!」


「ポポやん、でしょ? 何度も聞いたしー」

「くどいぞよ」

「これだから年寄りは……」


「誰が年寄りかぁああ!」


 ポポやん、うな垂れて、肩が上下している。まさか泣いてるの?


「で? 一緒に遊びたいの?」

「仕方ないのぅ」

「ほら、席に座り?」


 ポポやん、黙ったまま素直に席に座りました。


「俺だって、俺だってぇええ……」


「うん、そだね」

「貴様、苦労しとるよな」

「私、お茶入れてくるね」


 ポポやんは政府の役人であって船員じゃないから、この艦内では役立たず。

 だから何処にいても邪魔者扱い。

 結局、居場所はここか棚状の狭いベットスペースしかなかった。

 自然と人質であるセイヤ達と時間を共にするよかなかったのだ。


「ポポやん、また、この世界の昔話を聞かせてよ?」

「セイヤ、貴様だけよの俺のこと……ぅうぅぅぅ」

「いいよぅ。俺は転移者だから、ポポやんの話、楽しいよ?」

「ぅぅぅうううぅううう」


「私は、あの伝説の翼竜の話が好きだが」

「チィーちゃん、それより私は星の巨人のほうが」

「そうか?」

「だよ?」


「よりも! それってポポやんのおかげでしょ?」


 言い争いになりかけた二人をセイヤが止めた。そのうえで……


「あ、ありがとう。ありがとう」

「俺達、ポポやんのこと好きだからね」

「ぅああうううう……」


 感涙のぽぽやん。


(懐柔完了)


(なぜか? セイヤが悪い顔を?)


(セイヤ、侮れぬヤツ)


 狭い船内で繰り広げられた敵同士のドラマ。



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