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受け渡し前(お好み焼き、美味し)


 成された血盟……

 誘拐されたセイヤ一行(チィルール姫)と海賊軍団。

 

「昼過ぎに来るそうだ。気が効いてるねー(引き渡しが日中? なんだそりゃ)」


 海賊頭領ジラクィはワザとらしくほほ笑む。

 人目に付く日中に引き渡しとは? 疑問も残る。腹立たしいが、それだけナメられているということかもしれない。


 受けたセイヤも神妙な面持ち。


「大丈夫ですか?」

「心配ないねー」

「俺らよか、あなた方のことです」

「打ち合わせしたはずだぜ?」

「そうですけど」


 これから、誘拐した連中と誘拐された連中の茶番が始まる。

 この事態を巻き起こした黒幕を嵌めるためにである。

 逆襲だ。


「これ、美味いぞ」


 だが、当のチィルール。(誘拐された張本人の姫様)のんきなものである。


 実は今、昼食中。


 小麦粉と卵をぐちゃ混ぜにした生地の中に海産物を投入して、大きな鉄板上で平たくして焼く。

 現実では『お好み焼き (シーフード)』と呼ばれる料理だ。


「お好みソースがないから、甘味醤油と胡椒とトロトロ油脂(?)の組み合わせ? 斬新だけどいいかも……って醤油!?」

「どした?」

「これ、醤油使ってません?」

「ショーユ?」

「香ばしくてしょっぱい感じの」

「魚醤じゃねーか?」

「魚醤? いや、ナムプラーにしては濃い感じだけど……」

「ナムプラー? そりゃそうだ。ナムプラーは上澄みのキレイどころを掬った上等品だ。魚醤は下にあるモロミって言われる魚の残骸に大豆を混ぜて、さらに発酵させたモンから取れるシロモンだ。それが分かるなんて通だなお前さん」

「や、やったー! 醤油ゲットだぜ」


 この異世界で牛丼を作ろうと企むセイヤには朗報だった。

 肉はあった玉ねぎっぽいのも。

 けれど、醤油だけは手に入らなかったのだ。近いものはあったが上品すぎる、というか薄すぎでどうにもならなかった。

 これも確かに魚が原材料なので磯臭さはあるが、現実でも牡蠣だのアゴ出汁だのといった海産物混ぜ物醤油はいくらでもあったのだ。今更なのである。


「よっしゃー!! やってやるぜー!!」

「あ、ああ、おい、あんま興奮すんな。お前らは人質役な?」

「そうだ。俺はまだ納得してはならん」

「お、おう……」

「紅ショウガ、もしくは、たくあん? 知りませんか?」

「べびしょ? 悪ぃ、分からん」

「あと七味をご存じですか?」

「いや、あのスマン」

「そうですか……」

「スマン……」


 なんかへんな感じ。


「お頭、マンエンの連中来ましたぜ?」

「もうかい。で、船影は!?」

「それがどこにも……」

「か! 役立たずどもが!」

「やつら小型ボートで来たらしいです」

「だから母船で乗り付けてくるわきゃねーだろが!」

「ですが、その、やはり……申し訳ありません」

「なら引き渡しのボートだきゃ、絶対に見失うなよ? 後手になっちまうが仕方ねーか」

「イエッサー!」


 セイヤ達人質の引き渡しが始まるのだ。


「チィルール、準備だ」

「まだ、食っておる」

「そんな状況じゃねーよ。俺達は人質なんだから」

「あ、あのぅ……なにか食事を包むもの頂けないかと……」


 ルルーチィが申し訳なさそうに申し出る。さすがはチィルール第一の臣下。


「カハハハハ! 姫さん大丈夫さ。すぐに取り戻してやっから! オヤツも用意させておくし、夕飯にはまた鍋を作ってやんさ!」

「おおーう! 楽しみである。では行くか!」


 どうやら納得した模様。

次回、予想外の展開に

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