チィルールの音頭で宴会開始
浜辺の晩餐会は開幕からして不穏な雰囲気である。
頭領の娘で、不治の病に侵されたクィールの為に命を賭けても戦うと決心していた矢先に、そのクィールは復活宣言。
皆の前に現れ、堂々とした決めポーズを連続して披露してくれた。
だが、これには海賊達も怪訝気。
もしそれが事実なら?
何のために大国オクエンを敵にまわして、その姫であるチィルールを誘拐したのかわからない。
で、である。
「では、チィルール殿下にご挨拶を……」
頭領のジラクィが次のキャストを促す。
高台に上がってきた少女。
それはチィルール本人その人だ。
よりにもよって、人質にした当事者にご挨拶などと? 全員困惑しきり。
「うむ、皆のモノ。この度はご苦労であった」
なんかそれって、人質のセリフではない。
だってそれじゃ、まるでこの晩餐がこの人の為に用意されたかのようではないか。
「ふぇ?」なぜにどうして誰か教えてくださいな海賊連中。
「今宵、空に、名月、風は……みな……う……ん……忘れた。まぁ、皆のモノ、今宵いま、同じ時、同じ気持ちを交わそうではないかー!!」
周囲から微笑の演説。だって同じ気持ち? 誘拐犯と被害者がぁ?
でも、最後に。
「カンペーイ!!」
「へ?」
「カンピャンーニ?」
「あ!」
「カンピャンーニ!!」
「カンピャンーニ!!」
「おう! カンピャンーニ!!」
チィルールの音頭で、戸惑いはありつつも、みんな一斉にグラス満杯の酒を飲み干すのだ。
「う、っまーいい!」
「ぱっはー!」
呑んだらもうどーでもいい。
旨い酒と美味い料理が目の前に並んでいるのだ。
あとは何も考えず、騒ぐしかない。
だからこそかの海賊魂。
ただの宴会が始まった。




