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お別れの……

海賊に見付かってしまったチィルール(姫)


「見ーつけたーぁ?」

「!!」


 不敵な笑みのジラクィがセイヤの頭越しにロッカーを覗き込み、中に隠れていたチィルールを発見した。

 眼が合ったチィルールは突然の出来事に萎縮した。


「チィーちゃん!!」


 護衛役のルルーチィがジラクィに向かって突進。


(一撃で気絶させる。そしたら人質にして、もう一人の動きを封じる)


 その思惑。だが渾身の一撃を喰らわせようとした瞬間、目の前でナニかが弾けた。


「!?」


 戸惑いで動きが止まった。警戒し防御? いや? 困惑。


 だがその正体、ジラクィが顔の前でただ手を打ち合わせただけのことだった。


「猫騙し!?」

「ネコのお譲ちゃん、おもしろいように引っ掛かったね」

「くっ!!(我ながらなんてマヌケ? でもだからなんだ? お前らヒトごとき、一撃でなあぁ――)」


 再び体勢を整え、攻撃しようとした次の瞬間――


 背後から首根っこを掴まれ、宙に浮かび上がらされてしまった。


「なあ? アア!」

「動きは素早いが、行動を読まれちゃ仕方ねーよ」


 子猫でもツマミ上げる感じで、マイルミールがルルーチィを片手でプラプラと吊り下げていた。

 暗黙の了解で連携プレイをやってのけた海賊の二人。

 ルルーチィの攻撃に合わせることもフォローも出来なかったセイヤ達素人との貫禄の差を見せ付けられた。


「くっ、ぬっ、くそ! ふくっ!」


 プラプラ揺らされるのは伊達じゃなかった。蹴りを入れようにも身体の重心が狂わされて、足はパタパタと宙に揺れるだけになった。反撃を封じ込まれている。

 やがて襟が絞まってきて息苦しそうなルルーチィ。


「分かった! もう降参だ。放してやってくれ」


 セイヤの降参合図で、ポトリと床に落とされる。


「くふっ、っ、セイヤ!」

「不意打ちも通じなかった。ハンカな相手じゃないんだろう? これ以上はケガじゃ済まない。それは――他のみんなもだ」

「……っ」


 動きが止まった。


 セイヤ達の作戦は失敗したのだ。


「話が出来るヤツがいて助かるぜ。なんせコッチは抵抗すればこの船ごと吹っ飛ばして構わねーってことで大砲まで貸してもらってるからよお」

「な!?」

「さすがにそんな寝覚めの悪ぃことしなくねーしな」

「っ、この海賊め」

「だから、しねーてっば。姫さんが大人しく着いて来てくれればな」


 ジラクィの目線先にはチィルールの姿。


「分かった。着いてゆこう」

「チィーちゃん!?」

「大丈夫だ。心配するでない」

「ダメだよ、絶対にダメ!」


 でも、そんな様子を見せられ、メンドくさそうな感じのジラクィ。後ろ頭を掻いている。


「あー、もう。そんなに心配ならネコのお譲ちゃんも一緒に来ればいいじゃん」

「え!?」

「他にも着いて着たいヤツは好きに着いてくりゃいいぜ?」

「え?」

「え……」

「んー?」


 ジラクィの提案に言葉を失う一行。

 普通なら誘拐犯のそんな誘い文句に乗るはずはないが……


「行く!」と即答のルルーチィ。

「オレもだ」とセイヤ。


「ハハハ、遊びに行くわけじゃねえんだぞ? アハハハ」と呆れるジラクィ。


「じゃあボクも……」

「いやトロイとはここでお別れしよう」

「な? ボクになにか至らないとこが――」

「いや、チョウエンで仕事があるって言ってたでしょ? ね? これ以上オレ達の巻き込むのも悪いから。ね? ね?」

「そ、そんな……ボクは君達と仲間だと思って……」

「仲間だよ。だけどね? ね?」

「ゴメン。今まで友達面してて。恥ずかしいよね」

「だからそうじゃなくて――(あー、もうメンドクサイ)」


 落ち込んで小さくなっているトロイを抱き締めるセイヤ。


「な?」

「あ?」

「オアツイねー、ひゅーひゅー」


 冷やかしの中、別れを惜しむ恋人みたいな抱擁は続く。


「セイヤ?」

「し、静かに、みんなが海賊に着いて行って海上で行方知らずになるのはマズイ。トロイはチョウエンからオクエンに捜索と救助を依頼してほしい。マンエンへの海路の封鎖も」

「な、なるほど、そういうことか。分かった任せてくれ……それと最後までちゃんと演技してくれないかい?」


 耳打ちで計画のやり取りは終わった。


「分かってくれ。愛しき君をこれ以上危険な目に巻き込むわけにはいかないんだ」

「セイヤ、待っています。あなたの帰りを何百年もずっと」

「トロイ……」

「セイヤ……愛しきあなたよ」

「……(ちょっとトロイ、なんでそんな情感たっぷりに盛り上げてんのー)」

「……」

「……(ヤバイ、なんかキスしなきゃいけない感じになってきた。ちょっとー)」


 ゆっくりと近付く唇同士。


「いかーん!」

「チィーちゃんにはまだ早い」

「ぬお? 見えん」


 二人に跳びかかろうとしたチィルールを後ろから掴んで、目を両手で塞ぐルルーチィ。


 そしてセイヤとトロイ。

 キスする寸前に、トロイがセイヤの身体をエスコートしダンスの要領で九十度ターンした。

 だからキスする瞬間はギャラリーの視界に入ることはなく、写っていたのはセイヤの後頭部だけだった。


「……」

「……」


 本当にキスしたかどうかは本人達にしか分からない。でも離れた二人の頬は赤かった。


「ドラマだねぇ。最近の若いヤツらは恥ずかしげもなくドラマチックなことしやがる。マイルミールも見習っとけよー」

「ば、ばっか。私にフルな」

  

 かくしてトロイはパーティを離脱することとなった。


 あ、それと、ドサクサで突き飛ばされ椅子と一緒に床に倒れこんでいるリリィーンも最後まで放置されていたので、結局ついでに離脱することになった。

 


どうなることやら


明日あさっては糞忙しいと思うので当分、間が開きます。

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