海賊達の一コマ
「いやああ!」
「逃げなきゃ!」
「あっちに……」
「こっちから来るわ!」
「そっちなら、大丈夫だ?」
「向こうから来るぞっ」
貨物客船ナカミオーサンに海賊が侵入し、乗客達は混乱する。
右に向かう者あれば、また左に向かう者あり。
「ヤレヤレ、どうにも大騒動だ……」
「それをアンタが言うか?」
騒ぎを起こした張本人、海賊の頭領ジラクィの発言に、別の海賊組織である『イルカの里』の若頭マイルミールは呆れた様子をみせる。
「この騒動の中で見付かるかねえ」
「逆にいいんじゃねーか? 静かに隠れてるヤツを探せば」
「けっこう頭いいじゃねーか。カルルのヤツはお前さんに助けられてるだろうな」
「なに言ってやがる」
彼女らはそれぞれ別の海賊だ。
訳あって今は『クジラの庭』頭領のジラクィにマイルミールが同行している。
「まーあー! マアー、アアー!!」
二人の視界に迷子と思われる幼い少年の姿。ポタポタと大粒の涙を流しながらトボトボと頼りなさげに歩いている。この騒動で母親と、はぐれてしまった様子。
「ヤレヤレ。どうした坊主」
「アアがぁーアアがぁー」
「ママとはぐれたか。見つけやすいよう、肩車してやるよ。いいか?」
うなずく少年を肩車するマイルミール。
この通路から少年がやってきたほうのホールへと向かう。
「オーイ、迷子だ。この子のママはいるかい?」
女性にしては背の高いマイルミールに肩車された少年の姿は十二分に注目を浴びた。
「クレック!」
「マァーマー!!」
再開は無事果たされた。
「ありがとうございます」と母親。
「いや、べつに大したことじゃ」
「なんでも海賊が侵入してきたとかで、みんな大混乱に。それではぐれてしまって」
「そっか……」
「あなた方もどうかご用心ください」
「え、ああ。ありがとう(俺らがその海賊なんだがなぁ)」
礼をして去っていった母子。
「貫目が足りねえなあ」
「うっせ」
バツが悪そうにしているマイルミールを茶化すジラクィ。
「だが面倒見はいいし頭も切れる。とっととお婿貰えよ」
「な、うっせーよ」
「イイルカの独り立ちを待ってると行き送れちまうぜ。カッカッカッ」
「よけーな、お世話だ!」
マイルミールの顔赤い。




