海賊来たりてフタ悶着
「なんで私がー!!」
抗議するリリィーン。
海賊に迫られた王女チィルールに代わって、駄民リリィーンが身代わりに選ばれたのだ。
「他にもいるし!」
「はあ?」
「私より他の人が姫様役に相応しいと思うし!」
「誰が?」
とセイヤ。この作戦の発案者でリリィーンの敵。
「そっちに新入りがいるじゃん」
「ルルーチィがあ? ハーフビーのネコ娘に人間のチィルールが務まるか? 頭のネコ耳はどーすんだ!?」
ルルーチィはチィルールの護衛役だが人族ではない。獣人族の血を引くハーフビーである。頭上のネコ耳は隠しようがない。
「トロイとか!」
「ハーフエルフのトロイがああああ?」
「だってーぇー」
トロイは人と妖精族エルフのハーフだ。
でも一見、人と区別つかない。線が細く色白であるという以外。というか、本物であるチンチクリのチィルールよりも姫としてイメージ的には本物らしいのではあるが――
「――ニセモノを募集してんだ! こんなチィルール以上に、本物の姫様っぽい身代わりが存在していいと思うか?」
「フッア?」(チィルール驚愕)
「……」(トロイ顔赤い)
「お前しかいないんだ」
「な!」
真剣なセイヤの訴え。
「お前なら一見して、『あー、コイツニセモノだー』ってなるじゃん?」
「ん?」
「そしたら、敵の様子が分かるし」
「んん」
「ニセモノだと分かったら殺されないし」
「んー」
「だから大丈夫」
「むむ」
ということで身代わり決定。
一方、彼らを探す海賊達は……
「臨検だ!」
と叫び、とある部屋に侵入する海賊の女性が三人。
「キャアー!」
とオッサンの甲高い悲鳴。おまけに腰にタオルを巻いただけの半裸。
「イヤーン」
「……」
「やさしくしてえ」
「くっ、スマンが生理中だから」
「あ、アタイも」
「アタシも生理」
「え……」
「じゃあな」
扉を閉めた海賊。
彼女ら班長の指示でドアノブを針金で固定した。
そして去って、しばらく……、固定されたノブがギチギチとしなる。
「あ!? 開かね! だ、誰か開けてくれー! パーティが終わってしまう。誰かー!」
中からドンドンと扉を叩くオッサンの声が響いてきた。




