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みんなとルルーチィとの間


 そして夜になった。

 貨物客船に搭乗しているセイヤ達一行。

 そこにルルーチィも加わって……


「ええ!? チィ姫様とみんな一緒の部屋なんですか?」


 この船は客船でもあるので客間が存在する。一等室の個室もあるが狭い割りに高い。だから五、六人が雑魚寝できる中型の部屋を借りたのであるが、そのことにルルーチィは驚いた様子。てっきり姫様用の部屋が別に用意されているものだとばかり思っていたのだ。しかも男であるセイヤも一緒?


「そうだが。なぜか?」

「だってチィーちゃんはお姫様だし」

「ちゃん付けはやめーい」


「姫様ねえ。いまだ信じられん」

「それは、なぜか?」


「殿下用に今からでも個室を借りれるかなあ」

「な、なぜか?」


「じゃあ私も付き添いで一等室へ一緒に」

「なぜか……」


 そんなみんなとのやり取りに、なぜか慌て始めたチィルール。


「私をノケモノにするなー!」


 と憤慨している。まあチビ助の憤慨なんてギャグっぽいけど。


「という感じだから、同室でかまわないかな?」

「はい――(もうみんな完全に仲間なんだね。でも私は――)」


 トロイに言いくるめられた感じもするが、とくに反論する気もないルルーチィ。元々ちょっと驚いて質問してみただけだったし。


(なんだかチィーちゃんとの距離が離れた気がするよ?)


 楽しそうなチィルールをみても、これは十分よい環境であると分かってはいる。

 それでも苦しい。

 昨日辛いことがあったばかり。それは自分の責任だから誰かにどうこう愚痴るつもりもない。 

 けどそんなだから一番近くにいて欲しいという我侭な気持ちがあるのも事実だった。


「そろそろ消灯時間だ。寝床を準備しよう」

「だな」

「はーい」


「それでは私は外に……」

「ルルーチィ?」

「私は元々姫様の護衛ですよ。入り口のとこで警護します」


「そこまでしなくてもいいんじゃね? 一緒に寝ようよ」

「っ、男のあなたが言っていい台詞じゃないのでは?」

「あっ」


 セイヤのうっかり発言。でも他意はない。彼にしてもみればルルーチィもまだ子供だったし。


「ルルーチィ……」

「姫様ご安心ください。私が来たからには誰にも傷つけさせはいたしません。お仲間の皆さんも守ってみせますから」

「う……」

「では失礼します」


 退室するルルーチィ。誰も声を掛けれなかった。


「なにあの子。壁作っちゃって」

「陰口ヤメロ。リリィーンが」

「ンン!?」


「そんな急には馴染めないよね。友達の友達だからって」

「それ以外にも、なんか訳ありな感じもしたけど。なんだろ。チィルールは分かるか?」


「知らん。だが元気はないようだ。普段のアヤツはもっとはしゃいでおる」

「どうすれば元気が出ると思う?」


 それはチィルール以外、初対面のセイヤ達には分からない事。


「そうだな、なにか美味いモノを……」

「あー、うん(なんも成長しねーなコイツ)」


 チィルールの腹がグゥゥと鳴った。


「食いたい……」

(オメーの都合じゃねえから)


「それよりもな? 明日になったら……」


 そっと耳打ちする。


「ん? そんなことでよいのか?」

「いいんだよ。友達なんだろ?」

「分かった」


 そしてみんな寝床を決めて横になった途端に消灯時間になった。

 鋼鉄の壁で囲まれた部屋は真っ暗闇。

 唯一、外壁の小さな丸い窓から月光が真っ直ぐに差し込んでいた。

 

『グゥゥ』と鳴る音。


「セイヤ……」

「我慢しろ」


『プゥゥ』と鳴る音。


「リ、リリィーンさんよお……」

「な!? 違う!」


「ハハハ、セイヤのイタズラだよ。手の甲で音を鳴らしてた」

「げ、なんで分かるんだ」

「ボクは夜目が利くからね」

「セイヤめーえ」

「ま、いいじゃん。これで誰でもオナラ出来るしさ」

「……」

「全部リリィーンがしたことになるし」

「んな!」


「みな眠れぬようだな。そうだ。マクラ投げをするか!」


『しません』


 みんなの様子をドアの前で聞き耳を立ててたルルーチィ。

 口元がちょっと緩んだ。


(あの中に私は、入ることは……もう)



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