運命の死闘2
ルルーチィとククリールのバトル第二ラウンドはすでに開始されている。
「ヒュッ!」
「っ!」
正面から見合ってカンカンキンキンとツマラナイ平凡なつばぜり合い。
とはいえ、これは見世物ではない。
当人同士には本気の殺し合いだった。
「ちっ(残量MPに差がついた。ククリールはあの技を使ってくるな)」
「くっ(MP差を補う為に体力勝負の持久戦に? 分が悪いが、それでも隙さえ見つけれるなら!)」
お互いの思惑がこの状態を招いた。
「アッ!?」
ケリだと見せかけたククリールその足は正面突きから下方へ軌道を変えると、地面の小石を蹴り上げルルーチィの鼻先に命中させた。さすがに目を瞑るようなことはしなかったが、視界がぼやけたはずだ。
その隙を逃すつもりはない。一気に間合いを詰め、渾身の力で斬りつける。
かわせる間合いではないので斬りつけを短剣で受け止めるルルーチィ。
もうMPを使う訳にはいかない。
そして同様の攻撃が反対側からもう一撃。それも短剣で受け止めるよりない。
先程、組み合っていた状況と同じになった。が、それはククリールが仕込んだ展開。偶然によるものではない。
「ッウ(今度はあの技がくる。間違いない)」
「クク(読まれているのは分かっている。だが、かわしようがないから、どうしようもないだろ?)」
先程は頭突き合戦になったが今度は違うだろう。今回はルルーチィよりもククリールの魔力に余力がある。魔力消耗の激しい技が利用できるのだ。
ククリールの背後から糸のように細い魔力で繋がれた宙に浮かぶ短剣があった。彼女はこれを自在に操れる。魔力消耗が大きいことを除けば三回目の攻撃が可能な必殺技だった。
その短剣が身体を迂回し、目標であるルルーチィの眉間に向かって真っ直ぐに飛んだ。
「!(キタッ、これは魔力壁で受け止める)」
そこまではよかった。
「このこう着状態だと、どっちが先にMP切れになるか分からないよね? だったらこうはどお?」
ククリールは目前でルルーチィを狙っている短剣を自らの額でグイグイ押し込んできた。
「あ!(物理動作でMP節約かよクッソ)」
「くく、このまま脳ミソまで押し込んでやる(さあ意識をそこに向けてなさい。本命の奥の手はこんなんじゃないから)」
彼女の奥の手、それはもう一本の短剣。
それが背中から魔力糸で宙に浮かび上がる。
(消耗の激しい技を重複して使うなんて思わないでしょう? リスクが高いし操作も難しい。でも修練してそれなりに使えるようになった。私は昔の私とは違うのよルルーチィ)
試合勝負と違い実戦ならばリスクが大きくても、それが絶対の必殺技なら使うべきなのだ。ギャラリーに見られて研究されることもないし、使われた者も存在しなくなるのだから。
(ここまでね。殺人処女のアンタは弱かったわ)
徒競走のゴール前で、失速しながらゴールで停止するつもりみたいなルルーチィの攻撃と、最高速を維持したままゴールを突き抜けようとするククリールの攻撃にはやはり差があった。
新たな短剣が頭上に浮かび上がり、ルルーチィの脳天を狙って急降下する。
それに気付いているのかいないのか。反応はなかった。
(さようならルルーチィ。私の元妹よ)
ガグブッと脳天の頭蓋をカチ割り脳髄へと突き刺さるはずの短剣、だったが……『キキンッ!』という音とともに弾かれた。
「な!?」
驚愕のククリール。
「実は私、ククリールの技のファンでね。ずっと修練してたんだよ。そう、昔からね」
攻撃を弾いたのはルルーチィが魔力糸を使って操る短剣だ。でも、糸が細く今にも切れそうで、短剣もフラフラと不安定。
「貴様!」
「それにククリールに、この技を複数使えれば最強だね、って言ったの私だし」
「な!?(確かに子供の頃のあの時、でも私はキキレールの台詞だと思い違いしてた?)」
「行け! 私の短剣!」
ルルーチィの第三の短剣がククリールを襲う。
「クッソ!!」
ツタナイ動きは修練不足によるものか。
その予測不能の軌道に戸惑いながら複数の魔法壁を展開して防御する。
「チッィ(マズイ、このままだと私の残MPほうが先に)ならば、私のほうが先に仕留めれば!」
業を煮やし、第四の短剣に魔力注入、ルルーチィに向かわせる。
命中直前。
『ギキンッ!』
だがそれも、なぜか? ナニかに弾かれた。
「言ったじゃん。私が『複数使えたら最強だね』って」
「あっ!!」
ルルーチィの背後から第四の短剣、いやそれどころか第五、第六の短剣が現れた。
「あの頃の私じゃないんだよ、ククリール……」
「ル、ルルーチィ、貴様あああああ!!」
戦いは続く。
絶望的な決着に向かって……




