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仲間の埋葬


 火事場の後始末は黙々と行われた。

 作業にはルルーチィも加わっている。

 運び出された黒コゲの遺体にはゴザが被せられている。

 浮き上がっているゴザは焼死体特有の「コ」の字型に変形してるせいだ。


「これは、カシールの(焼けた)匂い……こっちはミミーリ……二人は仲が良かったから隣同士に」

「ああ……」


 判別できないほど損傷した遺体はハーフビーであるルルーチィの鼻が役に立った。


(考えないように、淡々と作業を事務的に行っていくんだ)


 過去みんなが生きていた頃の記憶を思い返すと涙が止まらなくなるからだ。

 心を殺して作業を続けていく。


「こっちのチビ達は右から、カカル・ミモトール・ナナリール(こんな子供達までかっ)」


 悲しみを通り過ぎ、怒りが湧いてくる。

 作業は順調に進み、遺体は全て埋葬された。

  

「後日ちゃんとした墓標を立ててやるから待っておいとくれよ」


 手を合わせ神に祈る。

 その者に続いてみんな祈りを始めた。

 それが彼女達のお葬式である。

 しめやかな雰囲気の中、ルルーチィが口を開いた。


「一人、足りない」

「……」

「そいつが、この事件の犯人……」

「ルルーチィ!」

「そういうことでしょ?」


「おやめんさい」

「復讐してもお前さんが傷付くだけじゃ」

「傷つけ合うのは、もうやめとくれ」


「みんなの言っていることが理解できない。私、頭がオカシクなったのかなあ」

「ルルーチィ――」

「なんで庇う!!」

「そういうわけでは……」

「私、気付いてたよ。判別できる遺体は私に近づけないよう、ソソクサと埋葬してること。でも私の鼻は誤魔化されないから」


「それは……」

「あのコだって、元々はいい子じゃった」

「こうなってしまったのも、元を辿れば我々大人達がイビツな生活を強いたのが原因」

「頼むから、これ以上の哀しみは許しておくれ」


 嗚咽を漏らして泣き出す者もいた。


「理解できないよ。なんで許せるの?」

「許した訳でない。これ以上哀しみを増やしたくないだけなんじゃ」

「分からない。もういいよ」

「ルルーチィ」

「私は殺す!! 絶対に殺す!! ククリールゥゥゥウウウ!!!」


 怨念走ったその表情。覆られない決意しかない。


「あああ、なんということか」

「あの事故さえなければ……」

「あれ以来ククリールはオカシクなってしまった」

「なんでこんなことに……」


 その台詞をルルーチィは聞き逃さなかった。


「事故?」

「まさか、聞いておらぬのか?」


 動揺してお互いの顔を見合す。今更話していいものか思案しているのだ。


「もう隠す必要なんてないはず。そうでしょ?」

「隠していた訳ではないが」

「じゃあ尚更いいはず」

「……相分かった。お前さんも当事者であるしな」


 そこで全ての事実を明かされたルルーチィ。


「そっか、そういうことか……」


「分かってくれたか」

「許してやれとは言わん。だが分かってやってほしい」

「これ以上の哀しみはもう必要ないのだ」


「そうじゃないな」

「?」

「私がこの悲劇を終わらせる」

「……」

「慈悲の心をもってククリールを殺す」


 そう宣言したルルーチィの表情は少し笑んでいた。だがソレは冷酷な暗殺者の顔であった。

 

 ……この、過去に起こった出来事がルルーチィとククリールの因縁なのであった。



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