ルルーチィの帰郷
新たな悲劇の幕開け
一年後……
礫岩の家という暗殺組織から足を洗ったルルーチィの冒険は熾烈を極めた。
まぁ、大概は世間知らずな彼女の処世苦労話ではあったが。
しかし、それに値する成果も十二分に達成できた。
「うふふ、チィーちゃんに出会えた。しかもオクエン国のお姫様だったなんてー! ふふふ」
ルルーチィの目的であったチィルールとの再会は願ったのだ。
しかも、彼女の正体は隣国のお姫様だった。
そこから、なんとなくな感じで事件に巻き込まれた彼女を救い、そのまま護衛役を任されたのだ。
「差別対象であるハーフビーの自分がお姫様側近の護衛役? 信じられない。でもこれは現実なんだ」
だから半ば強引に王様に謁見を申し出た。
その上で、一か八かの賭けを打ってでた。
「褒美として、私が育った孤児院の子らを救ってください」
「ならん。大儀がない」
「……孤児院とはウソです。『礫岩の家』という暗殺者養成施設です」
「なに!? あの、か? うーむ」
王が自分を拷問して里の場所を白状させ、暗殺組織の殲滅を図る、とも考えた。
でも、その王はチィーちゃんのお爺ちゃんだから信じてみた。ダメだったら逃げればいいし。
「大儀あり! 組織解散を条件に皆を救うことを約束しよう」
「ありがとうございます」
そういった経緯で、ルルーチィは今、オクエン国王の親書を手に故郷の地を訪れようとしていた。
(驚くくらい全てが順調だよ。外の世界は優しさで満ちてるんだ。早く里の仲間にも教えてあげないと。それが私の使命だんだ)
意気揚々と里を目指すルルーチィ。
忌まわしき運命から仲間を救いだす勇者の気分だった。
だから里の手前にある偽装村でも、自慢気に王様の親書を見せびらかし、みんなに向かって田舎から街に出て楽しく生きようとか訴えたり、外の世界はどれほど素晴らしいかを説明したりもした。
でも、みんなの反応はイマイチだった。
その理由はわからないルルーチィだったが、みんなが自分を排除(抹殺)しようとはせず、孫が里帰りでもしたかのようにもてなしてくれることがただただ嬉しかった。
「じゃあ、本里に行ってくるよ。みんなも楽しみに待っててねー!」
一晩休ませてもらって、その村を出発する。
村のみんなは終始、ルルーチィのことを微笑ましい感じで見守っていてくれた。
だからルルーチィも、なんの不安もなく里帰りできたのだ。
「ただいまー!!」
いくつかのトラップを越え、姿を見せない相手の攻撃をかわし、とうとう里の入り口にまで到達したルルーチィは元気よく帰省のアイサツ。でもちょっと汚れ気味かな。
「え? アイツ?」
「はあ? ルルーチィじゃん」
「なんで?」
「みんな、ただいまー!」
「ほんとだ」
「ルルーチィだ」
「生きてたんだ。へー」
ざわめく元仲間達。
警戒を解いて姿を現してくる。
「マジかよ」
「なんか懐かしいな」
「どゆこと?」
怪訝なのも無理はない。
里から追放された者が戻ってきたことは、今までで一度もない。
今回が初めての話なのだ。
「みんなにいい知らせを持ってきたよ!」
「へ?」
「いい知らせ?」
「大物の仕事(暗殺)か」
「いいじゃん」
「ち、違う! そうじゃなくて(ヤメテよね……)」
慌てるルルーチィ。でもココがどういう場所なのかをソレで思い出せた。
「そこまでだ!」
「サー!」
場に姿を現せたサー。
「ルルーチィ、話は頭領の前で聞かせてもらおう」
「サー、イエス!」
「まだ私をサーと呼ぶか?」
「そ、それは……」
「ハハ、冗談だ。お前に会えて私も少し浮かれているようだな」
「あぅ……」
「いくぞ」
「はい」
頬を赤らめたルルーチィはサーに従って頭領の下へ行く。
(浮かれている場合じゃない。ココからが本番。必ずこの交渉を通す!)
ルルーチィの決心。




